第38回テーマ館「(僕の)街」



街の色 華丸縛り [2001/05/31 16:56:23]


日暮れどきに街を散歩した。

『キャー!!』

『ぐわぁぁあああ〜〜〜!!!』

ありきたりな奇声がひっきりなしに鳴っている。
慣れっこな僕は、右ななめ前方をゆっくり見やった。

そこには竹林が生えている、きれいだなぁ―――
と、普通の人ならそれだけの感想だろう。
だが僕はこの街に住んで15年も経つ。
竹の間をじーっと観察すると、
そこには、奇声マシーンのボタンを押してニヤついてる老人が
三人ほどいるんだよね。
近所迷惑も考えずにさ。
彼らの性質の悪いとこは、竹林からは笹の爽やかな音しか
聞こえないってとこだ。
電柱のてっぺんのスピーカーに電波を飛ばして、こそこそこそこそ。
陰気な奴らだよ、まったく。

『助けてくれーーー!!!』

児童館に吊り下げられたボロっちいスピーカーからも、
割れた悲鳴が聞こえてくる。

「たすけてくれぇ〜!」

小学生がブランコにまたがりながら、満面の笑顔で真似している。

・・・僕も小さい頃に、同じように叫んだ記憶があるな。
そう言えばずーっとだよな、この夕暮れどきの悲鳴は。
街のみんなも何にも言わないし。

・・・あぁ、そうか。

それがこの街の色なんだな、きっと。
自慢はできないけど。

『殺されるぅぅぅーーー』

心に残るよな。
実は結構気に入ってたりもする。
おかしな話しだけど、
聞いてて安心するんだよなぁ。

紅く染まった夕空を背景に―――、

「うぉぉぉぉぉーーーー!!!」

と、僕も力いっぱい叫んでみた。
この街の一員として。

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