『テーマ館』 第22回テーマ「振り向けば」



 「謳うことができるまで」   by なぎぃ


      もう夢を追いかけるのは私だけになっており
      後ろに何人の人がいるのかは私には知る由もなく
      遠ざかるまわりくどい出口に向かっている
      それは走っているのだろうか、歩いているのだろうか
      進んでいるのだろうか、後退しているのだろうか
      私には分かるはずもなく
      ただ夢という名の出口目指して向かっているだけ
      いつまでそれが続くかは私には分からず
      ただ耳が痛くなるような夜は私を嘲笑い
      私は少なからず恐怖心を覚えた
      声をかけるものはいない 私はただ向かうだけ


            どこからか祭りの音が聞こえる
               母は娘の髪を結ぶ 娘は待ちきれないように身悶えする
                  ……神輿が見えた。

      私はただ向かうだけ
      今見えた母や娘の顔を思い浮かべ
      そして目には涙を浮かべて
      出口はまだ遠くにある 私は少しだけ足を止める
      何回振り向いただろう そのたびに私はやるせない絶望を覚えた
      何の到達感もないその風景



      空虚。 


(投稿日:09月13日(日)10時36分02秒)