『テーマ館』 第22回テーマ「振り向けば」



 「振り返れば奴がいる。」   by 2M


              俺は奴に出会った。
              平凡な日曜の、
              平凡な街の中、
              俺は奴に出会った。

              ひょっとしたら、
              奴はもう一人の俺かもしれない。

              あるいは・・・

      その1。

      日曜の昼下がり・・・
      俺はただ街を歩いていただけだった・・・
      別に目的なんかなくて、ぶら〜んと散歩してた。
      すると、後ろから俺の肩を トントン と
      俺の右肩を叩く人がいて、ふと振り返ると、
      俺の頬になにかがあたった。
      そこには、見知らぬ男が人差し指を俺の頬にさして
      不適な笑みを浮かべて、何かつぶやいた。

              「ひっかかったな・・・」

      男はそう確かにつぶやいて一目散に走り去った。
      「誰?あいつ・・・」
      その場にポツンと残された俺はただボーゼンと
      男の後ろ姿を見ることしかできなかった。

      その2。

      次の週。
      俺は先週のあの不可解な出来事を考えながら、
      また、街の中を散歩をしていた。
      「あいつはいったい誰だったんだろ。」
      俺の頬をつついた男の事を思い出そうとしたが、
      不思議なことに男の顔や声を思い出すことは
      どうしてもできなかった。
      そのこともあって、しばらく他の事は考える
      余裕がなかった。
      ふと気が付くと、俺は先週あの男を出会った場所に
      来ていた。無意識のうちに、また奴に逢えることを
      期待していたのかもしれない。
      すると、先週と同じ様に誰かが俺の右肩を
      トントンと叩いた。
      俺は今度はひっかからない様に
      反対側の左から後ろを向うとした。
      しかし、そこには頬に人差し指のあたる感覚が・・・
      そこには、あの男が指をさして俺を微笑んでいた。
      「ひっかかったな・・・」
      男はまたもや捨てぜりふをはいて、一目散に走り去った。
      「だから、お前は誰なんだ!」
      俺は何か無償にくやしい思いをしながら男の後ろ姿を見つめた。

      その3。

      奴に出会って、俺の頭の中には一つの事しか無かった。
      「誰なんだ・・・」
      しかし、考えれば考えるだけ、奴の声、姿がわからなくなる。
      ただ、不可思議なあの行動だけが、リアルに蘇る。
      「誰なんだ・・・」
      その疑問を断ち切るために、もう一度あの場所へ向かった。

              振り返れば奴がいる。

      そう信じて、あの場所へ向かった。
      しかし、その日奴に逢うことはできなかった。
      次の日も、次の日も・・・
      「奴は一体、誰なんだ・・・」
      その思いだけが、強く残り
      やがて俺は・・・
                                              The End...

(投稿日:09月26日(土)23時10分34秒)