「晴れ間」　　　by 彩緒


　    そこには、山があって、僕は見た
      さらに上を向いて、上は空
      体を仰け反らせ、空を見た

      ああ、あれは、斑雲（まだらぐも）
      もうすぐ雨が、くるかな？
      雨の兆し、早く帰ろう

      でも、頭の向こうは、晴れてる、晴れてる
      じゃあ、大丈夫かな？
      もっと、晴れてるの、見たいな……

      ころん

      あいた。のけぞりすぎた
      ちゃんと、振り向いて、見れば、よかったんだ

      ぽつぽつと、雨が、降ってきた
      やっぱり、雨が、降ってきた

      ……そうだ、帰ろう、帰らなくちゃ

      雨粒を、手に、感じて、もう一度、上を、見た
      山が、暗くなっていく
      雨に、濡れてゆく、山

      空を、見上げた
      斑雲は、重く湿った、雨雲へ
      でも、あっち、頭の奥の方、向こうは、はれてる
      晴れに向かって、体を、まげる

      そうだなぁ
      自分っていつも、そんな風に生きてきたなあ
      周りが四面楚歌なのに、絶対抜け道があるって
      楽観的で偏屈に生活していると、
      ほら……

      ころん

      あいた、無理がたたって、転ぶ
      だから、ちゃんと、晴れは、見えているんだから
      きちんと振り向いて、見れば、いいのに、ねぇ？

      体を、起こす。
      そして、振り向けば、ちゃんと、見える。
      綺麗な、晴れ間が。


(投稿日：10月21日(水)08時16分59秒)