第48回テーマ館「腕時計」



妄想的腕時計
 投稿日 2003年2月27日(木)01時14分 投稿者 はなぶさ  


私の腕に巻きつけてある時計は普通、腕時計というらしい。誰から見ても
腕時計というものらしいが、私からすると私を監視するために時の悪魔が
取り付けたものでしかない。

そんなものは着けないで会社に行こうとすると妻が、忘れ物よ、とそれを
差し出す。それを受け取ると、私は腕に装着しなければならないような、
そんな気分に支配され、そして装着することで時の悪魔の支配下に入ること
になってしまう。妻は悪魔の手先か。

私の眼は常に針を確認し、自分のやるべき役割を遂行しようという気にさせ
る。私はもはや虜になってしまっている。魂が時という悪魔に縛られたら、
もう私は自分の価値ではなく、時から伝達されてくる時の焦りによって、
全ての行動派決定されてしまう。

会社から帰ると、すぐに腕からそいつを外す。解放されるひと時を楽しむ。
次の朝に囚われるまで、私は時の旅人となる。やつはもう私を見張っていは
いない。

次の日、私は遅刻ぎりぎりで出勤するという状態に陥る。時の悪魔が私に
罰を与えているのか、時は私の頭を支配する。会社に着くまで、腕時計を
何度もみるはめになる。本当に悪魔のしわざだ。


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