第48回テーマ館「腕時計」



おてんば魂
 投稿日 2003年2月27日(木)14時57分 投稿者 ゆきね   


どうやらあたしという魂が入っていた肉体は今日亡くなってしまったようね。
これから命の神様のところで次は何に生まれかお告げを受けるの。
やっぱさぁ、今の時代だったら人間が一番よね。なんだかんだいって幸せだモノ。
虫や植物なんかは勘弁してほしいわね。下手したら生まれてすぐにまたここに
こなきゃいけないし。
最低でも魚までかな。それなら何とか我慢するわ。ふふふ、楽しみ!


「命の神様。私は来世何として生きればいいの。」
「お主は来世、時計として生まれるがよい。」
「時計!?」
「そうじゃ、時を刻む者としてうまれるのじゃ。」
「はぁ。冗談じゃないわよ。なんであたしが時計なの。生き物以下じゃない!
 あんな毎日こつこつこつこつ言ってるだけの人生なんて楽しいわけないじゃないの。
 私のお金持ちの人間になって貧乏人を扱き使う夢はどうしてくれるのよ。」
「これも定めじゃ。」
「何が定めよ。このボケナス神〜。は〜げ。く〜そ。か〜す。」
「次の者。」
「あ〜シカトしたな。い〜けないんだ。神様が人のいうこと無視して。人のいうことはちゃんと
聞きなさいってお母さんから言われなかったの。」
「・・・」
「いい!よく聞きなさいよ!あたしが時計になったら気分によって動いたり止まったり
しちゃうからね。
 それに絶対時間どうりに鐘鳴らしてやらないんだから!」


くやし〜。最後まであのじじいシカトしやがって。
あとで全部毛抜いてやるんだから。
あ!あれは。
「お〜い。」
「やあ。」
「どうしたの。暗い雰囲気醸し出して。」
「実は私の来世がハエだって言うのよ。」
「ハエ!?ん〜確かに嫌よね。
 同じ昆虫でもカブトムシやちょうちょだったらよかったのにね。」
「はぁ〜。どうしよ。」
「でもあたしよいいわよ。あたしなんか時計よ。
 物よ!物!生きてるもんじゃないのよ。」
「時計。素敵じゃない。」
「え〜どうして。」
「だって、かわいいキャラクターの絵を描いてもらったり、かっこいいデザインされたり、
 時にはダイヤモンドで飾られたりもするのよ。それにくらべて私は・・・。」
「ああ、そうかそういう考えかともあるか。ダイヤモンドねぇ〜。
 悪くないかな。う〜ん。ありがと!なんか元気が出てきたわ。じゃぁね!」
「あ!ちょっと。私も元気付けてよ。ねぇ。」


そうよね。あたしは金の文字盤にダイヤモンドやエメラルドで装飾された
最高級腕時計として生まれ変わるのね。
一般庶民からは神様的存在で崇められ、そして田村正和みたいな渋いおじ様の左腕で恋を
するんだわ。
おじ様は毎日私を眺めキスをする。早く来世の門の扉へ行きましょう。
スイートラブの始まりね。あああ〜。


さて、このおてんば魂は本当に最高級腕時計に生まれ変わったのでしょうか。
時計といっても普通の掛け時計から最近ちょっと童謡でブレークした柱時計。
鳩時計や昔の日時計、水時計。腹時計なんてものまでいろいろありますけど。
腕時計でも100円の物も最近はありますよね。

もしよかったら彼女を探してみてください。
えらくせっかちな時計を見つけたら、おてんば魂が入ってるかもしれませんよ。

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