『テーマ館』 第19回テーマ「ワールドカップ」
「悪・ド・カップ」 by しのす
世界中の悪(ワル)を集めて世界一のワルを選ぼうという大会が日本で行われた。
それまでにもこっそりと行われていたらいのだが、今回は「第1回悪・ド・カップ」
と命名し本格的に行われることになった。しかし当然、秘密裏ではあるが。
我こそはというワルが壇上で自分の悪事三昧を訴える。
それを審査員(マフィアやヤクザ等そうそうたるメンバーがそろった)が審査する
のだ。ただ主催者が誰なのか、はっきりとはしていなかった。
「エントリーナンバー14ギリシア出身キゴス」
顔に大きな傷のある男が壇上に現れた。
「俺はキゴスだ。観光客が来るとうまくだまして、家に泊め、朝起きたら身包みは
ぐんだ」審査員があくびをした。キゴスは慌てて「で、裸で海に蹴り込む。そうさ
なあ、20人は海の藻くずさ」
審査員からぱらぱらと拍手が起こった。ギゴスは壇をおりた。
「やはりさっきのフランスの肉屋でしょう。なんたって人肉を売ったという」ある
審査員が隣りの審査員に話し掛けた。
「いや、中国の超でしょう。30人の女性を結婚詐欺でだましたんですから」
「やっぱギニアのムル・スムでしょう。大統領になって国民から富をしぼりとった
んですから」
「最後のエントリーです。日本出身の大高」
ほっそりとした少年が壇上に立った。少年は遠い目をしていた。
「僕はひどい奴です。実は・・・」
少年の話を聞いて、審査員たちはどよめいた。
「なに×××を×××」「信じられない。××××を××××と・・・」
「うっ」ある審査員は口を押さえて会場を去った。
「こいつこそはワルの中のワルだ・・・」
VIPルームではポマードをたっぷりと頭につけ、オールバックの小男がその様子
を見ていた。「あいつだ。すぐにつかまえろ。そして思う存分活躍させろ」
「あの少年が犯行を重ねていくと世間は騒然となりますが」
「それが狙いだ。不景気の今、国民の不満はたまりにたまっている。その不満の先
を我々に向けないように残虐な殺人を起こさせる。そうすれば国民はその事件に熱
狂するだろう」
「しょせん国民なんてそんなものですか」
「しょせん人間は自分の身に降りかからなければ、他人の不幸に熱狂する。残忍な
連続殺人は国民とマスコミを満足させるだろう。我々の失政はその陰に隠される」
「そのための悪・ド・カップでしたか。さすが、アイディアマンですね、総理」
(これは100%フィクションです)
(投稿日:05月19日(火)23時44分02秒)