『テーマ館』 第17回テーマ「3つのお願い」



 「「願い事」の意味」   by すぎ


       暗く、狭い部屋。
       ろうそくの明かりだけが、その闇に押しつぶされそうに、
      弱く輝いている。
       部屋の中心には、アンバランスな模様の魔法陣。
       そして、それを取り巻くように、3人の青年が座っている。
      「・・・・・・ついに、・・・・・やったな」
       重い沈黙を裂くように、一人が言った。
      「・・・ああ、66回目にして、ついに成功だ」
       別の一人が言う。
       彼らの目の前には、部屋の闇よりもさらに昏(くら)い闇が、わだかまっていた。
       彼らは、悪魔召喚を、実現させたのである。

      「一つの魂と引き換えに、3つだけ、願い事を叶えてやろう」
       それまで黙っていた闇が、ゆっくりと声を発した。
       それを待っていたかのように、青年のうちの一人が言った。
      「俺達の魂を、1/3ずつやる。
       それで文句はないだろう?」
      「うむ・・・。こちらは、何も問題ない。
       では、願い事を言え」

       薄暗い明かりの中で、青年達は、お互いの表情を確かめ合い、頷いた。
      「じゃあ、まず俺からだ。
       俺を、世界の王にしてくれ!」
      「つぎは、僕だ。
       僕は、超能力者になりたい」
      「俺に、全ての財産をくれ」

      「・・・分かった。全て叶えよう」
       魔法陣の上にあった闇は、徐々に薄くなり、完全に消えた。

      「おい、お前、『すべての財産』なんて、ちっぽけな願い事だなぁ。
       そんなもの、世界の王の俺様が、根こそぎ没収してやる」
      「いやいや、僕の超能力で、盗んであげるよ」
       高揚したような、しかし、妙に落ち着いたような、変な気分になっていた
      彼らは、座り込んだままの状態で、願いが叶った後のことを、話し合っていた。
       しかし、『全ての財産』を願った青年だけは、何故か、何も語ろうとは
      しなかった。

       翌日。
       長い赤絨毯の両脇に、幾千もの兵士を従え、高い階段の上にそびえ立つ玉座
      に座っているのは、『世界の王』・・・ではなかった。
       彼は、『超能力者』と共に、赤絨毯の両脇に(玉座に一番近いところではあ
      るが)、立っていた。
       玉座に座るものは、そう、『全ての財産』を手に入れた、彼だった。

       彼は、全ての財産を手に入れたのだ。

       金も、銀も、ダイアも、土地も、海も、・・・人も、地球も、宇宙も、時間も。


(投稿者:04月07日(火)20時06分52秒)