〔コラム〕 手話の種類

 

現在、日本で行われている手話は、日本語対応手話、中間型手話、日本手話の3つに分けられます。

 

(1)日本語対応手話(同時法的手話)

日本語対応手話については本文の説明にあるとおりです。日本語対応手話はもともとは栃木県立聾学校で昭和43年に同時法的手話として考えられたものです。それまで日本の聾学校では口話法教育が中心で、手話は聾学校の中では罪悪視されていました。しかし、聾学校の生徒の学力の遅滞に真剣に取り組んだ栃木聾学校では、聴覚障害の子どもたちに日本語の力をつけるために、日本語と同時に使える手話を開発しました。

 

(2)日本手話(伝統的手話)

同時法的手話が開発されたとき、それまで聾者が使っていた手話を区別するために伝統的手話と名付けました。伝統的手話はろうあ者が昔から使ってきた手話で、日本語との対応や口話と一緒に使うことを考えていません。手の位置や動きの方向、全身の表現などをたくみに使うので、見ていて直感的に理解できるのですが、話しことば置き換えるのは難しいことがあります。

最近は、聴覚障害者の独自の文化、アイディンティティを主張する立場から、また同時法的手話の対極として伝統的手話が規定されたという歴史的経緯から、伝統的手話という用語を嫌って日本手話と言うようになっています。

 

(3)中間型手話

現在、現実にいちばん多く使われていると思われるのが、中間型手話です。中間型手話では、日本語の話し言葉と同じ順序で手話を並べます。ただし、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞の活用はありません。助詞を表す手話がいくつかありますが、それ以外の助詞は省略するか、特に必要なときには指文字で表します。手の位置や動きの方向で日本語の助詞が表す意味を代行することもあります。

手話の単語の意味をそれに応じた日本語の意味を基本にしますが、一部手話の単語の写像性によって、対応する日本語とは違った意味で使われることもあります。

一般には中間型手話は同時方的手話と伝統的手話との折衷として生まれたと考えられていますが、現実には日本語と伝統的手話との折衷として生まれたものです。健常者が聴覚障害者から手話を習っていく過程で、日本社会では文化的に優位な立場にある健常者の日本語の表現に聴覚障害者の手話が合わせられていったものです。