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たかね・きゃらさんによる手話入門の新書版は,これで5冊目になります。『手話で伝えたい』シリーズは,「まんがキャンパス物語」が大学生,「オフィス編」が職業人としての「愛ちゃん」を主人公としていたのに対し,1冊日の『手でともだち』(平成7年刊)と,そのPart2である本書では,著者と同名の「きゃら」という小学6年生の女の子が主人公です。1冊目と同様にイラストも作者によるもので,Part1のほのぼのとしたムードが引き継がれています。 著者にはこの他には,手話学習のカリキュラムをやさしい入門書の形にした『手話で話そう』があります。 本書は手話入門の本というよりも,聴覚に障害をもった女の子の成長物語として深く心に届く内容をもっています。聞こえないと分かった頃から,聾学校の幼稚部で過ごした頃の,学校や家庭での思い出。私たちにはおなじみの物語も一般の読者には珍しく思えるかもしれません。 そして小学4年生で「ふつう」の小学校へ転校してからの様々な出来事は,読みながら「さもありなん」とひとっひとっ領いてしまうほどのことばかり。著者の実体験なしには描けない内容です。聾学校とは違う小学校の生活はきゃらにとって刺激に満ちていますが,連絡が確認されないことからくる置いてけぼり,理由のわからない先生の叱責,自分(きゃら)抜きで自分のことを話し合ってるクラス討議,発音の通じなさから英語だと思われる誤解等々,聞こえる人は気がつきにくい情報障害の具体例が,相手を責めるのではなく,淡々と描かれています。 親友やボーイフレンドとの気持ちの交流を支えにそれらの出来事を乗り越えていく物語の展開が,読者をほっとさせてはくれますが,現実の小学校がこのような友だちの見っかる場所であればと願わずにいられません。 後半では,小学校の生活だけでなく,思春期に向かっての家庭でのコミュニケーションの問題,聾学校に戻りたい日もある心の揺れ,障害をもっ先輩の進路選択に学ぶ「自立」への道のり,新しい情報機器やバリアフリーの社会への期待なども扱われています。 話題に関連して随所に配置されているコラムは,聴覚障害教育や今日の聴覚障害者が向き合う問題を理解する上で大変適切なもので,表現が簡潔で正確であることにも感心しました。 一つ一つのエピソードで,登場人物の会話に手話がつけられ,自然に手話単語の習得を助ける構成になっています。私たちのような学校関係者が,自分の言いたいことに何とか手話をつけてみようと思うときに使いたい表現が数多く使われていて,索引も整っており,実用的な価値も十分あります。 「学校の手話サークルに最適の手話入門」 というキャッチフレーズもうなずけます。 著者は「きゃら」とほぼ同じ道のりを歩ん だのち,県立高校から筑波大学に入り,大学院に進んで博士号を取得され,現在は障害者用コンピューター・ソフトの開発などの仕事をされています。作者の優しい人柄と聡明さが絵の底からにじみ出てくるような,ひと味違った手話の本です。多くの方に読んでもらいたいと思います。 |
『聴覚障害』誌 7月号掲載 |
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廣済堂出版 定価838円 |
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