聴覚障害児の「発音・発語」学習

著:板橋 安人  A4判 472頁

第1章 序論−「発音・発語」学習を理解するために−
第2章 聴覚障害児の授業の実践スケッチ
第3章 問題の提出
第4章 児童・生徒の発話
第5章 児童・生徒の発音技能
第6章 「発音・発語」の学習者に学ぶ
第7章 発話の明瞭度を巡って
第8章 日本語と向き合う
第9章 発話の明瞭度を高めるために
付録 聴覚障害児の「発音・発語」学習関連の読書案内


本書は、聴覚障害児の「発音・発語」学習の授業の担当者が心得ておくべき音声を発することと、音声を聞くことの意味を確認こと(第1章)から論を起こす。そこから、事実を適切に認識することの重要性と、聾学校が抱える問題点を掘り起こしていく(第2章)。

総説から各論へという通常の専門書とは異なった切り込み方によって、学生・教員・研究者を問わず、読者を「発音・発語」学習の世界へといざなう。第3章は、本書で考察する課題を提出し、第4章と第5章では、学習者の発話における発音の傾向や特徴を抽出し、正しい発音に近づけるための手法を具体的に記述した。第6章では担当者が学習者自身から発音のことを学ぶ姿勢の重要性を述べた。第7章は、発話の明瞭性を規定する要因を多角的に検討した。

本書の全体を通して、発話の明瞭度をいたずらに求めるのではなく、学習者の日本語を育て、日本語の使い手になり、日本語を未来に受け継いでいく思いが「発音・発語」学習の底流にあることを主張した。そのためには、担当者が日本語にしっかりと向き合う姿勢が重要であることを指摘した(第8章)。第9章で述べる指導事例をはじめ、本書の随所に散りばめられた資料や知見から「発音・発語」学習の授業のためのヒントを読者は汲み取ることができるであろう。読者の便宜を考え、第1章末と付録には読書案内も付した。


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