1.基本的事実
2.PC空冷の簡易モデル
2.1 CPUコアからヒートシンク表面までの熱伝導の評価
2.2 ヒートシンク表面からケース外部までの対流による熱移送の評価
2.3 システム全体の評価と一応の結論
(雑考)
温度による空気密度の変化の影響
ヒートシンクからの熱放射の評価
ヒートシンク以外の部分からの熱伝導の寄与分の評価
PCケース表面からの放熱
冷却ファンの風速と、空気境界層の厚さの見積もり
流れのパターン(層流、乱流)とレイノルズ数
平板並行流(層流)の境界層厚み
温度境界層とプラントル数
平板平行流伝熱における熱伝達率
ヌセルト数
ヒートシンクのフィン間における空気流パターンの仮説
板状フィンの温度分布パターンの考察
板状一次元フィンの理論解析
ヒートシンク素材の比熱の影響
CPUはシリコンベースの半導体であるから、その動作温度は通常常温の範囲であり、高クロック高発熱のものでも最大95℃程度であるので、高クロックCPUを搭載したパソコンでは、CPUの冷却の問題はきわめて重要になっている。
特に自作パソコンにより定格外の高クロック動作を行うマニア、いわゆるオーバークロッカーの間では、巨大ヒートシンク+強力なファンによる強制空冷に始まって、水冷、ヒートパイプ、ペルチエ素子などの熱ポンプの利用、果ては、ドライアイスや液体窒素(!)を利用して瞬間的な高クロック動作を図るものまでも出現している。
一般の自作ユーザにとっても、高クロック高発熱CPUの冷却は重要な関心事項であるが、冷却の問題は一見直感的な理解が容易なようでありながら、複雑な要素を含んでおり、あやしげな冷却パーツの氾濫を招いているようにも思われる。
以下では、ヒートシンク+ファンによる強制空冷のPCを対象に、簡単な冷却の理論モデルを構築し、PCの自作の際の参考となるような考察をしてみたい。
なお、著者は自作1台目の初心者であり、熱理論の専門家でもないので、以下の議論は基本的には高校生レベルのもので、素人による推論の域を出るものではなく、誤りの可能性も大いにある上に、実験などによる裏付けのない全くの机上の空論であるので、誤りのでご指摘、実験結果の報告などいただければ幸いである。
高校物理レベルの話であるが、熱エネルギー移動のパターンは基本的に次の3種類に分けられる。
(1)熱伝導
直に接触する、あるいはひとつながりの物質の内部を熱エネルギーが、隣接分子、原子、電子間での振動の伝達により伝わるもの
(固体に限らないが、被加熱物質がその場を移動せずに、特定の温度分布を保つと仮定した場合の、熱エネルギー移動の寄与分)
(2)対流
熱せられた流体物質が、その周囲との温度差による浮力、あるいは外部からの強制的な流れにより、その場から移動することによって、熱エネルギーを運び去る形式の、熱エネルギー移動
(3)放射
物質表面からの電磁波(主に赤外線)の放射による、熱エネルギー移動
(周囲の環境からの放射の吸収分、あるいは自己の放射の照り返しも含めたエネルギー収支を考えないと正確な評価にはならないことに注意、魔法瓶のガラスの内側が銀メッキされているのはこれを防ぐ為)
なお、冷媒の蒸発、凝結による潜熱の発生を利用した冷凍システム(空調(クーラー)、冷蔵庫などが代表的、ヒートパイプとよばれる自然対流で駆動されるものもある)については、理論的に複雑な上、PCの冷却システムとしては一般的ではないのでここでは扱わない。
通常のPCで現在ポピュラーな、ヒートシンク+ファンによるCPUの強制空冷による冷却システムの場合は、ごく単純化すれば以下の様な熱エネルギー移動経路パターンがあると推定される
(a)CPUコアからヒートシンク表面まで:ほぼ熱伝導のみ
(b)ヒートシンク表面からケース外部まで:対流(CPUファンおよびケースファンによる強制対流)が主体か?
(c)その他、例えばヒートシンク表面からの放射やマザーボード、ケースなどの経路による熱伝導など
なお、ヒートシンク表面からケース外部までの空気流の経路には、流れの駆動源としてCPUファン、ケースファン、電源ファンがあるほか、流れに対する抵抗要素および熱の発生源として、CPUのほか各種拡張ボード、HDD、CD−ROMなどの周辺機器など多数の要素が存在するが、CPUチップの温度のみに着目し、ケース内部から、等温熱浴としての外気までのトータルの熱移動、収支を問題にするのであれば上図のように単純化できる。
以下に各経路について大まかな評価を試みる
ヒートシンクなどの熱伝導による熱エネルギーの移動量は、素材の基本物性(熱伝導率、κ)と形状により定まる熱抵抗(の逆数、単位ワット/℃)と、発熱端、放熱端の温度差の積で決まる。
ヒートシンクの素材に用いられる物質の基本物性(熱伝導率)は以下の通り(出典:理科年表2000年版)
物質 熱伝導率(単位:W/m/℃、於いて0℃)
アルミニウム 236
銅 403
銀 428
鉄 83.5
(空気 2.41x10^-2)
長さの単位を実際のヒートシンクの大きさのオーダに近いcmにすれば、上記の値は1/100となり、仮に1cmの立方体のヒートシンク(?)があるとして、CPU側の1面(CPUチップのダイサイズは、ほぼ1cm^2)と対向面(放熱面)の間で10℃の温度差を許容すれば(他の面からの熱の移動がないとして)、上記の値の1/10が放熱可能なCPU電力値となる。
(例えば、アルミで24W、銅で40W、鉄では8W)
逆にCPUの消費電力が(温度に無関係で)一定とすれば、CPUのダイ表面温度とヒートシンクの表面温度の差は、(同一形状のヒートシンクの場合)上記熱伝導率の逆数に比例することとなり、
例えば40Wの時、銅で10℃、アルミで17℃、鉄では48℃にもなる。
ヒートシンク表面(放熱面)の温度が、外気温に等しいと仮定すれば、同じ外気温の時ヒートシンクの素材によるこの差はそのまま、CPUチップの温度の違いになる。
定量化すれば、
ヒートシンクの放散電力Whsは、定常状態では(他の部分からの熱移送を無視すれば)CPU消費電力Wcpuに等しく、
ヒートシンク表面温度をThs、CPUコアの温度をTcor、ヒートシンク素材の熱伝導率をkhs、ヒートシンクの大きさ、形状で決まる係数をChs(単位m)として、
Whs = Wcpu = Chs・khs・(Tcor−Ths) (1)
2.2 ヒートシンク表面からケース外部までの対流による熱移送の評価
モデルを単純化するため、PCケース内での発熱はCPUによるものが全てとし、かつこの熱はファンによる強制空冷で排出される空気により全て運び去られるものとする。
ファンによる強制対流でPCのケースから運び去られる熱量は、ケース流入空気量(=排出空気量=風量)とその流入−排出空気間の温度差の積で決まり、CPUを含めたケース内での全消費電力が一定値ならば、風量を増せば排出空気の温度は下がることとなる。
排出空気の温度は、ヒートシンク表面の空気通路を一種の理想的な熱交換機とみなせば、ヒートシンク表面温度にほぼ等しいと考えられるから、結局風量を増せばCPUも冷えるという常識的な結論が支持される。
定量化すれば、
ケース排出熱量 Qcas(単位ワット)は、定常状態では(他の部分からの熱移送を無視すれば)これもCPU消費電力Wcpuに等しく、
空気の流量(風量)をF、流入空気温度をTin、排出空気温度をTout、空気の比熱をBairとして、
Qcas = Wcpu = Bair・F・(Tout−Tin) (2)
具体的な数値を入れて検討してみる。
冷却ファンの風量は8cm角、12V駆動(0.1〜0.2A)のものであれば、0.6〜1.0m^3/分程度の最大風量があるようである(山洋電気ホームページ参照)
典型的PCタワーケースのサイズを、50x50x20(cm)とすれば、容積は0.05m^3であり、空気抵抗などによる風量の損失を見込んで風量を0.3m^3/分(=5リットル/秒)としても、1分間に6回、10秒に1回の割でPCケース内の空気は換気されることになる。
空気の平均分子量は28.8、気体定数が22.4リットル/モル(於いて0℃)であるので、空気の温度上昇による密度変化を無視すれば、
5リットル/秒 = 5/22.4x28.8 = 6.4g/秒
空気の比熱(定圧比熱)は、ほぼ1.0J/K・g、なので、ケース排出空気の温度上昇(Tout−Tin)を10℃とすれば、ヒートシンクが理想的な熱交換器として機能しているならば、5リットル/秒の換気で、ほぼ64ワットの電力を放散できることになる。
先述のようにヒートシンク表面の空気通路を一種の理想的熱交換機とみなせば、排出空気の温度Toutはヒートシンク表面温度Thsにほぼ等しいから、
結局上記式(1)、式(2)より
Bair・F・(Ths−Tin) = Chs・khs・(Tcor−Ths)
Bair・F (Tcor−Ths)
−−−−− = −−−−−−
Chs・khs (Ths−Tin)
上式の左辺分母は、ヒートシンクの性能に対応し、左辺分子はファンの性能を表現するから、結局
CPUコアとヒートシンク表面間の温度差と、外気とヒートシンク表面間の温度差の比は、ヒートシンクの性能とファンの性能の比に反比例する(逆比)といえる。
また上記2式から、Thsを消去すれば、
Wcpu Wcpu
−−−−− + −−−−− = Tcor − Tin
Chs・khs Bair・F
結局、Tcorを下げるには、ヒートシンクの性能とファンの性能をバランスよく上げるのが効率がよいという結論になる。
また、(このような面倒くさい議論をするまでもなく直感的に明かなことであるが)、ヒートシンク+ファンによる強制空冷のシステムでは、制御可能なのは外気温ToutとCPUコアの温度Tcorの差であって、温度検出によるファンの回転数制御などをしない限り、外気温が上がればその分だけCPUコアの温度も上昇することになる。(温度による空気密度の変化による影響は除く)
例えば、外気温0℃の真冬にコア温度が30℃だったとすれば、外気温30℃の真夏にはコア温度は60℃に達する。
(雑考)
ファンの風量(1秒間に送られる空気の体積)が、空気の温度によらず一定と仮定すれば、ファンの送る空気の質量は温度と共に低減するので、温度(絶対温度K)が上昇するのに反比例して空冷の効率(同一風量、同一温度上昇で放散可能な電力)は低下することになる。
上記の例に寄れば、0℃において、5リットル/秒の風量は、6.4g/秒の空気質量になるが、
例えば30℃になると、
6.4/{273x(273+30)} = 5.76g/秒
となり、5リットル/秒の風量とケース排出空気の温度上昇(Tout−Tin=10℃)が不変ならば、冷却効率は57.6ワットに落ちる。
実際にはCPUの電力消費が温度に寄らずほぼ一定と考えられるので、気温の上昇による実効風量の減少は排出空気の温度上昇の増大で補われ、
この例では、
10x6.4/5.76 = 11.1℃
即ち、外気温0℃のとき、排気温度10℃で放散されていた64ワットの電力が、
外気温30℃になると、排気温度41.1℃で放出されることになる。
(理想熱交換機の仮定が成立するならば、この外気温30℃における排気温度41.1℃は、そのままその時のヒートシンクの表面温度であり、41.1−10=31.1℃の温度上昇は、そのまま(外気温0℃の時に対する)CPUコアの温度上昇分になる。
なお、厳密には空気密度が変化すれば、ファンの羽根がうける空気抵抗も変化するので、(積極的な回転数制御がなされていないとすれば)一定のパワーで駆動されるファンの回転数が変化し風量も変化する可能性があり、これは冷却効率の低下を補う方向に働く。
熱放射は、シュテファン・ボルツマンの法則で評価され、理想的な黒体の熱放射(黒体放射)はその面積と表面温度T(ケルビン)の4乗に比例し、
比例定数(シュテファン・ボルツマン定数)は、5.67x10^-12 W・cm^-2・deg^-4
例えば
T=310K(37℃) として、0.052W/cm^2
ヒートシンクの実効的な全表面積を仮に100cm^2(並行平板フィンの対向面は外部への熱放射には寄与しない)としても5Wほどで、
ケース内の他の部分からの照り返しによる放射収支を考えれば、支配的な要因ではないと推論される
ヒートシンク以外の部分からの熱伝導経路は、ソケット型CPUの場合、CPUパッケージ(プラスチックないしセラミック)、CPUソケット(プラスチック)を経てマザーボードへと熱伝導する経路が想定される。
プラスチックないしセラミックともヒートシンクの素材(銅またはアルミ)に比べて1/10〜1/100の熱伝導率であり、ピン、配線パターンなどの金属部による熱伝導を考慮したとしても、あまり大きな影響はなさそうである
PCケースの素材が鉄であれ、アルミであれ、その表面積の大きさと薄さからして、ケース自身の熱抵抗は小さいものと考えられるが、PCケースに熱を伝える空気が非常に熱抵抗が大きいため、PCケース素材の違いによる熱伝導の変化はあまり大きなものではない。
例えば、50x50x20(cm)、厚さ1mmのアルミケースの場合、その熱伝導率は
ケースの表面積=50x50x2(左右側板)+50x20x4(上下前後) = 9000cm^2 = 0.9m^2
ケースの熱伝導率 = 236x0.9÷0.001 = 212.4x1000 = 212.4 KW/℃
これに接する空気層は、ファンによる流れがあるとしても、ケース内面のアルミ板近傍においては、空気の粘性による境界層(流れが固体表面に於いて自身の粘性により澱むことにより、流速が実質的に0となる層)が存在し、仮にその厚さを1cmと仮定すれば、形状ファクタはケースの熱伝導率の計算の10倍で、それに加え空気自身の熱伝導率の分だけ異なることになり、
ケース内面に接する空気層の熱伝導率 = 2.41x10^-2x0.9÷0.01 = 2.17W/℃
結局、ケース内空気(境界層)−>ケース板−>外気の経路の熱抵抗は、上記2数値の逆数の和となり、実質的に空気境界層の熱抵抗に等しい。
(つまり、ケースの熱抵抗はもともと小さなものであるが、ケース内空気境界層の熱抵抗が大きいため支配的な要因ではなく、ましてケースの素材の変更は、熱抵抗に関してはほとんど影響がない。)
ケース内の空気全体が排出空気と同じ温度であるとするのは、かなり過大な見積もりであろうが、仮にそれを仮定し、ケース内空気温度を外気温+10℃としてもPCケース自身を通じた熱移送量は、20W程度となる。
上記のように種々の仮定をおいているため、この20Wという見積もりの大きさの信頼性は高くないが、結論としてケース自身の素材の影響はほとんどないものの、ケース自体からの熱伝導による放熱はPC全体の放熱に於いてある程度の意味を持つ大きさであると言えるのかもしれない。
(少なくともケースファンを持たないシステムでは、かなりの寄与が予想される)
冷却ファンの風量を5リットル/秒、有効開口面積を8センチファンで、(4^2−2^2)・3.14=37.7cm^2とすれば、冷却ファンの風速は、
(5・10^-3)/(37.7・10^-4)=1.33m/秒
の程度となる。
ヒートシンクの冷却フィン表面やケース内面に生じる空気境界層の厚さは、対流による伝熱の効率を支配する要素であり、正確にはナビエ・ストークス方程式の特殊型である境界層方程式と呼ばれるものを解く必要があるが、そのためには空気などの流体の粘性の定義を明確にする必要がある。
即ち、空気等の流体のの粘性μとは、流れを駆動する力(単位面積あたりの力なので圧力の次元をもつ)、駆動圧をPとしたときに、流れの中に速度勾配∂V/∂zを生じる原因となるものであって、
∂V
P = μ−−
∂z
と定義される。
例えば空気の粘性は、 μ=1.83x10^-5 Pascal・秒(於気温:25℃)である。
駆動圧 P=1mmAq=0.1g/cm^2=9.8N/m^2(Pascal)
とすれば、境界面の速度勾配 ∂V/∂z=P/μ=5.35x10^5 m/秒/m
風速を上記1.33m/秒として、境界層のおおよその厚さ∂z=1.33÷(5.35x10^5)=2.48x10^-6 m = 2.5μ
これは、CPU冷却ファン直下のヒートシンク表面の空気境界層の厚さの見積もりの一例となろう。
現実には、境界層の厚さは流れの下流に向かって増大し、下流では乱流に遷移するので、上記の数値はヒートシンク表面の平滑度に応じて異なるものの、境界層の厚さの下限を与えるものと予想される。
空気や水のような粘性のある流体の流れのパターンは、レイノルズ数と呼ばれる無次元数によって、類別される。
レイノルズ数Reは、流体の密度をρ、流速をV、考慮する長さの単位をL、流体の粘性をμとしたとき、
Re=ρVL/μ
あるいは、動粘性係数ν=μ/ρを用いれば、 Re=VL/ν と定義される。
例えば、円柱周りの二次元流れのパターンは、Re=0.1の近傍までは、乱れのない層流であるが、Reが5を越えるあたりから、定常的な渦が2つ円柱後方に発生し始め、Reが40の程度になるとこの渦が交互に周期的に流れ去る、いわゆるカルマン渦となり、Reが1000を越えるあたりからは、不規則に激しく変動して定常的、規則的な流れの構造が見られない乱流の状態となる。
ピン型のフィンを持つPCのCPUヒートシンクにおける空気流のレイノルズ数を見積もってみると、
空気密度ρ=1.28kg/m^3、ファンの排出空気流速V=1.33m/秒、ヒートシンクのピン型フィンの直径をL=2mm、
空気の粘性 μ=1.83x10^-5 Pascal・秒 として、
Re=1.28x1.33x0.002/1.83x10^-5 = 1.86x10^2
およそ200の程度のレイノルズ数であり、層流と乱流の中間的な領域の流れであり、mmオーダの微細なカルマン渦の様な流れが発生していることが予想される。
平板フィンを有するヒートシンクのフィン上の気流を平板並行流として考えると、平板上流先端から流れの下流方向に次第に厚みを増す層流境界層が発達し、
局所レイノルズ数 Rex=ρVL/μ (Lは平板上流端から流れの方向に図った距離)
が臨界レイノルズ数Rex,cr(3x10^5程度)を越えるあたりからは、乱流に遷移する。
上記と同じ数値を使用すれば、局所レイノルズ数は、
ヒートシンク先端から1mmの点で、93、1cmの点で930、10cmで9300であり、いずれも層流の範囲であることが判る。
・平板平行流(層流)の境界層厚み
平らな板(半無限平面)に並行な流れが生じる層流境界層内での流速は、平板に垂直方向に測った距離に応じて、0から入射流速まで連続的に変化するが、一般的に入射流速の99%となる距離として境界層の厚みは定義される。
前述の境界層方程式を解くと、平板先端から流れ方向に距離xの点における境界層の厚みδは、並行流の平板先端における入射流速をVとして、およそ
δ=5.0sqrt(νx/V) (ν:動粘性係数=μ/ρ、単位はm^2/秒)
のオーダで表されることが判る。
つまり、層流境界層の厚みは、境界層先端から測った流れ方向の距離xの平方根に比例して厚くなり、入射流速Vの平方根に反比例する。
例えば、空気密度ρ=1.28kg/m^3、空気の粘性 μ=1.83x10^-5 Pascal・秒 から 動粘性係数ν=1.43x10^-5として、
V=1.33m/秒の並行流に於いて、
x=1mmの点における境界層の厚みは、5.0xsqrt(1.43x10^-5x0.001/1.33)=5x1.03x10^-4(m)=0.5mm
x=1cmでは約3倍の1.5mm
x=10cmでは、5mm
の程度となる。
従って、フィン間隔が数mmの並行板状フィンを有するヒートシンクの基部あたりでは、両側のフィンの境界層が干渉することが予想され、空気流の流速は幾分低下していることが想像される。
なお、一般に冷却の為には層流的な流れよりも、被加熱流体を効率よく混合し熱を拡散する乱流的な流れのほうが好ましいとされる。
従って、ピン型フィンでも、平板フィンでもその表面に微細な凹凸を設ければ、乱流型の境界層の生成を促すことが出来て、熱伝達率を上げられるのではないかと予想される。
強制空冷のような流れが外力で駆動されるシステムにおいては、温度変化による流体の物性値(粘性係数など)の変化があまり大きくない限り、
流体の流れの場が先に決まり、これに応じて温度分布が定まる。
板状フィンにおいては、上記のような速度境界層を有する平板並行流が存在するが、フィンの温度を場所によらず一定値とした場合、
流体内の温度分布も速度境界層に似た構造の、温度境界層を構成している。
そして、温度境界層と速度境界層の厚みの比は、動粘性係数νと温度伝導率(α=κ/ρc)の比で定義される、プラントル数(Prandtl
Number)
Pr=ν/α
に応じて定まる。
空気などの気体では、プラントル数Pr≒1(300Kの空気で0.7)であり、温度境界層と速度境界層の厚みはほぼ等しい。
これに対し、油、グリセリンなどは粘性係数が大きく、温度伝導率が小さいため、Pr>>1(高プラントル数)であり、速度境界層よりも温度境界層の厚みが薄くなる。
(速度境界層の底の部分だけが熱くなってる感じ)
逆に、液体金属などにおいては、相対的に粘性係数が小さく、温度伝導率が大きいため、Pr<<1(低プラントル数)であり、温度境界層の厚みが速度境界層よりも厚くなる。
(温度境界層が、速度境界層を越えて発達し、定常流れ部分まで熱が及んでいる感じ)
ちなみに、水のプラントル数は常温(20℃)で約7であり、空気のほぼ10倍となる。
熱伝達率(heat tranfer coefficient、通常αと標記)とは、流体と固体の間における熱伝達に関して定められる係数であって、
固体表面の温度をTw、流体の固体表面から充分離れた点における温度をT∞としたときに、固体表面から放散される熱流速密度(面密度)をqとして、
q=α(Tw−T∞) (単位:ワット/m^2/℃)
と定義される。
固体の熱伝導率(κ、単位W/m/℃)が、体積要素に関して定義されるのに対して、面密度で定義されるため、長さの次元が異なることに注意する
表面が一定温度に保たれた平板の、先端から流れの方向に測った距離xの点における局所熱伝達率αxは、温度分布から定まる伝熱面境界における温度勾配を基に決めることができ、
Pr>0.6の範囲では、
αx = 0.332Pr^(1/3)κsqrt(V/νx)
長さlの平板の平均熱伝達率αmは、上記局所熱伝達率αxをx=0〜lの範囲で積分して、
αm = 2αx=l = 0.664Pr^(1/3)κsqrt(V/νl) (W/m^2/℃)
つまり、温度一定の板状フィンを平行に流れる流体で冷却する場合の平均熱伝達率は、主に
流体の熱伝導率κに比例し、入射流速Vの平方根に比例し、フィンの長さlの平方根に反比例する、と言える。
例えば、空気の動粘性係数ν=1.43x10^-5(m^2/秒)、熱伝導度κ=0.0241(W/m/℃)、プラントル数Pr=0.7、入射流速u=1.33m/秒として、
フィン長10cmのヒートシンク(等温)を想定すると
αm = 0.664x(0.7)^(1/3)x0.0241xsqrt(1.33/(1.43x10^-5)/0.1)
= 0.664x0.888x0.0241x0.9644x1000=13.7 (W/m^2/℃)
フィン長を5cmとすれば、上記の√2倍となり、19.4(W/m^2/℃)
フィン長を3.5cmとすれば、上記の7割り増しとなり、23.15(W/m^2/℃)
現実には、フィンの素材は有限の熱伝導率であるため、温度勾配が存在し基部から先端に向かい温度低下があるので、冷媒の流れ方向とも関係するが、
局所熱伝達率、平均熱伝達率とも、上記の見積とは違いがあると考えられる。
試しに逆に、排出空気温度をフィンの表面温度と等しいと仮定し、CPUの発生電力、流入−排出空気の温度差と、ヒートシンクのフィン有効面積から熱伝達率αを見積もれば、
CPU発熱を50W、
フィン有効面積をほぼ、0.1m^2(フィンの大きさを0.07x0.035(m)、フィンの枚数20(有効面数はx2)を仮定)、
空気の温度上昇を20℃として、
α=50/0.1x(1/20)=25(W/m^2/℃)
結果的に、割と良い見積りとなっているようである。
固体と流体の境界面における熱伝達率(heat tranfer coefficient、α)を、流体の熱伝導度(κ)と伝熱境界の特徴的サイズ(例えばフィンの長さL)で無次元化したものを、
ヌセルト数(Nusselt Number、Nu)とよび、この定義から
Nu=αL/κ
レイノルズ数と同様に、伝熱面の流れに沿った点(伝熱面先端からの距離x)における、局所ヌセルト数も定義され、
Nux=αx/κ
このヌセルト数を用いると、熱伝達率と、プラントル数、レイノルズ数の間には単純な関係式が成り立ち、
例えば、流れ方向の長さLの等温平板(層流)全体における平均ヌセルト数Numは
Num=0.664Pr^(1/3)Re^(1/2)
と表される。
上記の形式の関係式は、種々の熱伝達条件においても、その係数、プラントル数、レイノルズ数のべき指数を変えて成立し、
例えば、等温平板平行流(乱流)の場合は、局所ヌセルト数に関して、
Nux=0.0296Pr^(2/3)Rex^(4/5)
平行板状のフィンを有するヒートシンクの上部(フィン末端側)に、回転型ファンを軸流の吹きつけ方向(上から下)に取り付けた場合の、平行板状フィンの間における空気流のパターンを想像してみる。
平行板状フィンの間隔(厚み)方向の流れは無視できるとして、流れはいわゆる2次元流となる。
また、回転型ファンの軸対称性からファンの軸に対応する板状フィンの右半面と左半面の流れのパターンは対称となると予想される。
(ファンの回転による流れの捻れによる影響は無視できると仮定)
これらの仮定から想像される最も単純な流れのパターンは、ファンから吹き出して上から降下してきた空気流が、並行板状フィンの間を通り抜けて、フィンの基部で左右に分かれて吹き抜けるパターン(板状フィンの右半面で、L字型となるもの、下図(1))であろう。
回転型ファンの軸に近い部分の風速は、周辺部のファン直下の部分の風速よりも小さいと推定されるので、周辺部のファン直下の空気流の動圧が、軸部のそれにうち勝てば、上記L字パターンに加えて、軸部直下に(右半面で)時計回り方向の反流を伴うパターンも予想され、この場合は軸上に上昇流が発生することになる。(下図(2))
なお、実際のヒートシンクでは、並行板状だけでなく、棒状、トルネード状など種々の形のフィンを持ったヒートシンクがあり、また並行板状のものであってもヒートシンク取り付け金具などの関係から、板状フィンの中央部は切り込みがあるものもり、気流のパターンはもっと複雑になるものと予想される。
フィンの素材の熱伝導率が無限大でない限り、板状フィンの面上には温度分布が存在し、その温度分布のパターン(等温線の形状)は、無風時のパターンを基準にして、空気流のパターンに応じて、その上流部分では冷たい気流により冷却され、フィンの表面温度は低下し、下流部分では上流部で熱せられた気流が通過することにより、フィン表面温度が(無風時に比べ)やや上昇することから、温度分布パターンは下流方向に変形され吹き流された形状となるものと推定される。
例えば正方形のフィンにおいて、下方から加熱され、左右と上面で冷却される時、無風状態では上に凸の放物線状の等温度線パターンとなるが、単純なL字型の空気流パターンで冷却されるときは、凸の放物線形状がつぶれ、風速が大きくなれば左右にはみ出た形状となるものと考えられる。
また、仮にL字型+上昇反流の流れパターンの場合に、上昇反流が強ければ、等温度パターンは全体としてはつぶれるものの、中心軸部においては部分的に上方に飛び出るパターンとなることもあるものと予想される。(一種の熱溜まり?)
ヒートシンクの様に、熱伝導と熱対流が関係する場合の温度分布を評価するのに、ビオー数と呼ばれる無次元パラメータが用いられる。
熱伝導体の熱伝導率をk(W/mK),熱伝導体のサイズをl(m)、対流による熱伝達効率をα(W/m^2K)とすれば、ビオー数Biは、
Bi=αl/k
対流による熱伝達率αを見積もれば、50WのCPU発熱が、0.1m^2(フィンの大きさを0.07x0.035(m)、フィンの枚数20(有効面数はx2)を仮定)の有効表面積を持つヒートシンクによって、20℃の空気の温度上昇に伝達されているとして、
α=50/0.1x(1/20)=25(W/m^2K)
熱伝導体の熱伝導率kは、アルミヒートシンクとして、k=236
問題とするサイズはフィンの大きさにとれば、0.035m
ビオー数Bi=25x0.035/236=0.0037
一般にビオー数Biが1より小さければ、熱伝導より熱対流の方が支配的であり、Biが1より充分小さければ熱伝導体内部の温度分布はほとんど一様と見なせる。
(但し、この計算ではフィンの先端のみから放熱し、側面は断熱された様な状態を想定することになり、通常の使用状態とは異なるので、あまり意味はない計算と考えられる。
板状フィンの側面から一定の熱伝達率で放熱する場合のフィンの温度分布については、下記の板状一次元フィンの理論解析を参照)
フィン素材が均質(熱伝導率k=一定)、フィンの断面形状も一定で、フィン表面からの熱伝達率αも至る所で等しい、半無限長のフィンが、等温の冷媒(流体)に囲まれて、原点Y軸上のベースプレートから、X軸方向に延びていると仮定する。
(無限長一次元フィン)
理論的解析結果によれば、フィンの基部から先端方向への温度変化は、
パラメータm=sqrt(αC/kS)
ここで、α:熱伝達率(W/m^2K)、C:フィン断面の周長、S:フィン断面積、k:フィン素材の熱伝導率
として、周囲の流体との温度差をθとすれば
θ=θ0 exp(−mx) θ0:基部における周囲の流体との温度差、x:フィンの基部(ベースプレート)からフィン先端方向への距離
となる。
例えば厚み1mm,幅7cm、長さ3.5cmのアルミフィンを想定すれば、熱伝達率α=25(W/m^2K)として、
m=sqrt(25x(0.001x2+0.07x2)/(236x0.001x0.07))=sqrt(214.9)=14.66
フィンの先端では、x=0.035(m)として
exp(−mx)=0.598
となり、フィン基部で仮に周囲流体と10℃の温度差があった場合、3.5cm先のフィン先端では6度弱の温度上昇になり、4℃程度の温度差がフィン表面にあることになる。
(物理的には、この温度勾配が熱エネルギーをフィン基部から先端方向へ移送する駆動源となっているとも解される)
上記は無限長フィンの場合であったが、有限長フィンの場合は、先端のフィン断面が断熱か、放熱に寄与するかにより先端での温度分布は多少異なるものの、大まかには上記と同様に指数関数的な温度勾配が存在する。
従って、フィンの長さは長ければよいと言うものではなく、
あまり長いフィンは先端のほうのフィン表面温度が周囲の流体と同じになってしまい、放熱に寄与しないため、長さほどには有効に機能しない。(フィン効率が低下する)
また、あまりに細い(板状ならば薄い)フィン(上記パラメータmが大きい)も、長さの割に根元のほうでフィンの表面温度がすぐに低下してしまい、フィンの長さを有効に生かすことが出来ない。
もちろん、逆にフィンが短すぎても、厚みが厚すぎても伝熱面積を稼げないから、たとえフィン効率が良くても放熱能力は低くなってしまう。
結論として、フィンのアスペクト比A(縦横比、フィンの長さと太さないし厚みの比)には、適切な値の範囲が存在し、
例えば幅に対し厚みtが充分小さい板状フィンで、θ/θ0=1/2、すなわちフィンの先端での温度上昇がフィン基部のそれの半分という条件では、
パラメータm=sqrt(αC/kS) は、m=sqrt(2α/(kt))と近似され、
A=L/t=log2・sqrt(k/(2αt))
すなわち、フィンの素材と熱伝達率が与えられたときフィン効率の点で最適な板状フィンのアスペクト比は、一定の値ではなく板の厚みtの平方根に反比例し、
tが小さくなるほど、すなわち薄いほど、厚みtの平方根に反比例してアスペクト比を大きくする方が、フィン効率を保てるという結論になる。
また、フィンの全長Lは厚みtとアスペクト比Aの積であるから、結局フィン効率を一定に保つ場合には、フィン長Lを厚みtの平方根に比例して定めればよいことになる。
試しに上記と同じ条件(熱伝導率k=236W/mK)、熱伝達率α=25(W/m^2K))で、いくつかの板状フィン厚みtに対して上記アスペクト比Aとフィン長Lを計算してみると、
| 厚みt(mm) | 0.05 | 0.125 | 0.25 | 0.5 | 1 | 2 | 4 | 8 |
| アスペクト比A | 213.0 | 134.7 | 95.2 | 67.3 | 47.6 | 33.7 | 23.8 | 16.8 |
| フィン長L(mm) | 10.6 | 16.8 | 23.8 | 33.7 | 47.6 | 67.3 | 95.2 | 134.7 |
次にこのような長さの板状フィンを、複数枚有するヒートシンクの放熱性能を評価する。
ヒートシンクのベースプレートの単位面積あたりの板状フィンの全面積SAは、フィンの幅をw、フィンの間隔をフィンの厚みtと同じとすれば、
単位長さあたり1/(2t)枚のフィンがあり、1枚の板状フィンは表裏2面を有するから
SA=2xLxwx1/(2t)/w = L/t = A
となり、上記で求めたアスペクト比Aに等しいことが判る。
フィン基部のフィンが生えていないベースプレート表面からの放熱を無視すれば、このヒートシンクのベースプレート単位面積あたりの放熱量Qは、
熱伝達率をα、ベースプレート表面温度(=フィン基部の温度)と冷媒の温度差をθ0、フィン効率をηとして、
Q=αAηθ0
θ/θ0=1/2としたので、η=1/2÷log2=0.7213となり、上記の例えばt=1mmのときA=47.6を代入すれば、α=25であるから、
Q=25x47.6x0.7213xθ0=858θ0
θ0=10℃とすれば、Q=8580W/m^2
ヒートシンクのベースプレートのサイズを7cmx7cmとすれば、7x7=49cm^2=1/200m^2より、Q=42W
を得る。
(もともとのαの見積もりに、η=1.0としたときのCPU放熱量を50Wで計算してるので、同様な値が得られるのは当然といえば当然の結果かもしれない)
以上の考察をまとめると、熱伝達率αがフィンのいたるところで等しいとして、強制空冷板状フィンの性能(ベースプレート単位面積あたりの放熱量Q)向上のためには、
アスペクト比の条件に従いながら板状フィンの厚みを薄く、間隔を密にして、フィンの有効伝熱面積(SA)を確保すればよいということになる。
同様のことは、ピン型のフィンであっても成り立つはずであり、たとえて言うならば理想の究極のフィン形状とは、
ピンフィンであれば産毛が密集した毛皮のようなものになり、板状フィンであれば辞書の紙ないしアルミ箔のような薄っぺらい板を等間隔に密集配置したものとなる。
(上記の表におけるフィン長Lをみれば判るように、このときヒートシンク全体の大きさは小さく出来るはずである)
もちろんこの結論は、熱伝達率αがフィンのいたるところで等しく、かつフィンを細密化しても一定に保てるという前提における理想的なものであり、現実にはこれは困難である。
すなわち熱伝達率αを維持するにはそこに充分な空気流量を確保する必要があるが、密集したフィンの間隙は大きな空気抵抗を持つため、ファンに要求される性能(駆動圧)は非常に大きくなる。
また製造上(細密フィンの製造、固定をどうするか)あるいは運用上(おそらく埃が詰まる)の問題もでてくると想像される。
しかしながら、これらの問題がクリアされるならば、フィン構造の微細化によるヒートシンクの放熱性能の向上の余地はいまだ残されているとも言える。
比熱(定圧モル熱容量、Cpm/J・K^-1・mol^-1)は、固体金属の場合、単位モルあたりではほぼ同程度の値(24〜26)をとるので、単位質量あたり、単位体積あたりの熱容量は、質量数、密度に応じ決まる
ヒートシンク素材の比熱は、温度分布が時間的に変化する場合は意味をもつが、定常的な温度分布の場合は無関係と考えられる
(Superπ100万桁のような、瞬間芸(1〜2分)程度の場合に、銅製ピラミッドバッファが意味を持つ理由は多分これ)
例えば、100gの銅製ヒートバッファが50WのCPUの発熱を1分間受け止めたとして、他に熱の移動がなければ、
50x60/(25・(100/63.5))=76.2℃
同じ重さのアルミ製ヒートバッファであれば、
50x60/(25・(100/27))=32.4℃
アルミニウムの方が原子量が小さい分、質量あたりの熱容量が大きく(2倍以上)、温度上昇は少ないことがわかる。
(但し、アルミニウムの密度(2.7)は銅(8.9)の1/3以下であるから、同じ重さのヒートバッファであれば、アルミ製のヒートバッファは銅製のそれの3倍以上の体積となる)
・主な物質の熱伝導率
(単位:W/m/K、グリス類の出典は「四万十川五十歩百歩」氏のホームページ)
アルミニウム 236
銅 403
銀 428
鉄 83.5
空気 0.0241
珪素(シリコン)
168
石英ガラス(SiO2)
1.4
アルミナ(Al2O3) 21
アクリル 0.17−0.25
ゴム 0.1−0.2
ポリエチレン 0.2−0.3
水 0.6
油 0.13
エチルアルコール 0.19−0.15
シリコングリス(信越 化学 G765)
2.9
シリコングリス(たかちん印サーマルコンパウンド
TSC-1) 2.6
シリコングリス(HotStuff SSグリス)
1.05
シリコングリス(サンハヤト SCH-30) 0.84
およそ、アルミの熱伝導率は銅の約6割、
シリコングリスの熱伝導率は(性能の良い物でも)アルミの1/100、
空気の熱伝導率はグリスの1/100(アルミの1万分の1)
粘性係数μの定義は、流体の駆動圧をP、速度勾配を∂V/∂zとして、
∂V
P = μ−−
∂z
空気の粘性係数は μ=1.83x10^-5 Pascal・秒(於気温:25℃、大気圧:762mmHg)
例えば駆動圧 P=1mmAq=0.1g/cm^2=9.8N/m^2(Pascal)とすれば、
境界面の速度勾配 ∂V/∂z=P/μ=5.35x10^5 m/秒/m
風速を上記1.33m/秒として、
∂z=1.33÷(5.35x10^5)=2.48x10^-6 m = 2.5μ
この値は、おそらく境界層先端の厚みの見積りになる。
常温常圧におけるいくつかの流体の粘性係数を cP という単位で表すと、
水:1.0、濃硫酸:27、グリセリン:1500、空気:0.018 。
粘性係数の単位は、 g/cm.s (cgs単位系)で、poise
(ポアズ)という。
poise は単に P と書かれることもあり、cP
とは centi-poise = 1/100 poise
また、fの単位が応力(圧力)であることから、SI単位系では、Pa.s
(パスカル・秒)。1 poise = 0.1 Pa.s
粘性のある流体の流れを議論するときには、上記の(静的)粘性係数μよりも、μを流体の密度ρで割った、
動粘性係数 ν=μ/ρ (単位:m^2/秒)が重要である。
身近な流体である、空気と水の場合、静粘性係数μは上記のように水の方が大きい(0.018:1、約50倍)が、
水の密度が空気の900倍近くあるため、動粘性係数は、空気の方が大きくなる。(常温で約15倍)
空気の密度:ρ=1.185×10^-3[g/cm^3](気温:25℃)
レイノルズ数Reは、 Re=VL/ν であるから、同じ速度と長さのスケールであれば、空気の流れの方が低レイノルズ数になる。
あるいは、水の流れで空気と同じレイノルズ数の流れを実現するには、水流の速度(流速)または長さスケールの一方またはその積を空気の場合の15分の1程度にすれば、シミュレートできることになる。
CPUクーラをファン毎水槽に浸け、ファンを15分の1位の回転数(3000回転/分のファンなら、200回転/分=3回転/秒)で回せば、ヒートシンクのフィン近傍における気流のパターンを再現できるかもしれない。