LEOデブリの衝突確率(未定稿)
2007/2/12
中国のASAT実験に触発(?)されて、地球低軌道(LEO)デブリの衝突確率を概算してみた。
(計算間違いがあれば、ご容赦を)
1.素朴な見積もり
(デブリフラックスの面積率速度)
例えば進行方向断面積が1m^2のデブリが、周期1.5時間の略円軌道に100km四方にわたり1000個あるとして、その時間あたりフラックス(掃く面積)は、重複を無視できる低フラックスの範囲で、
1m^2x1000/1.5時間=666.7m^2/時間(おお、悪魔の数字じゃ!)
1年にすれば上記の約、24x365.25倍で、
666.7x24x365.25=5844292.2m^2/年≒5.8km^2/年
これが100km四方に占める割合は、
5.8/100^2=0.00058 ・・・(1)
(軌道交差確率?)
ターゲットはデブリの散らばる100km四方に常に存在するわけではないので、
例えばデブリの軌道が極軌道で、ターゲットの軌道が傾斜角0°でこれも円軌道とすれば、
ターゲットがそこにいる確率は、周期1.5時間=90分の軌道半径が約6700kmであることより、
100/(2x3.14x6700)=0.002377 ・・・(2)
ただしこれは、ターゲットの軌道が必ずデブリの存在範囲を横切るとした場合の最大値で、
更に完全に軌道半径が一致するなら、両者の軌道は2点で交差するはずだから、この2倍となる。
(1)と(2)を掛け合わせれば、上記ターゲットが1年間に1000個のデブリのどれかと衝突する確率は、およそ
0.00058x0.002377=1.378x10^-6
ざっと100万分の1、宝くじの1等より低いに違いない。
とりあえずは一安心だが、上記のロジックはまだ穴がある。
2.見積もりの改良
一つ目の大穴は、(1)の導出で単純にデブリの掃く面積を衝突確率の基礎とした点で、これはターゲットの軌道横方向断面積がゼロの場合に相当する。
例えばISS(国際宇宙ステーション)のように大きなターゲットであれば、その大きさに応じて衝突確率は増すはずで、
およそデブリの有効面積に相当する半径に、ターゲットのそれを足したものが、全体としての衝突断面積の半径に相当すると考えられる。
ターゲットの有効面積を例えば、およそ400m^2程度と見積もれば、円周率を無視して有効半径は約20m、
デブリのそれが同様に0.5m程度だから、20.5^2=420.25m^2
これを(1)にかけると、
0.00058x420.25=0.243745 ・・・(1a)
かなり大きな値になり心配になるが、さらに追い討ちをかければ、
二つ目の穴は、(2)の導出でターゲットとデブリの軌道が直交することを仮定した点で、
これは交差確率(?)最小の場合のはずである。
今回のASAT実験で中国が狙った衛星は、この点を配慮(?)したのかもしれない。
いずれにせよターゲットとデブリの軌道交差角が0に近づくほど、(2)の確率は増大するはずで、
最悪軌道が完全に一致して周回方向が反対ならば、1周毎に2回、衝突の危険があることになる。
軌道交差角をθとすれば、デブリの存在範囲を横切るターゲットの軌道部分の長さは、
θが90°に近ければ、1/sinθ=cosecθに比例し、(2)の値も同様のはずである。
θ=0の場合は、デブリ、ターゲット共に同じ半径の円軌道なら、常にターゲットはデブリの存在範囲にいることになり、(2)の値は1となる(!)
逆に安全サイドに働く三つ目の穴は、軌道の形状因子(いわゆるケプラー要素の、軌道長半径a、離芯率e)などで、いままでの考察ではこれらをaは等しく、e=0としていたが、現実にはこれらは大きく相違、あるいはeは非ゼロのはずで、これは(2)の値を大きく下げるはずである。
軌道傾斜角以外の軌道面要素(昇降点赤経)、方向因子(近地点引数)なども当然影響するはずであるが、詳細はより深い考察が必要なようで残念ながら自分の範囲を超える。
3.一般化
不充分ながら、上記1.2.で行った、デブリフラックスの面積率速度に軌道交差確率を掛ける方針で、上限としての衝突確率の見積もりの一般化を試みる。
(前提)
衝突断面積の有効半径がRd(m)のデブリがN個,軌道周期T(時間)の円軌道上で、有効直径D(km)の軌道断面積に渡って一様に分散して存在すると仮定する。
同様にターゲットの衝突断面積の有効半径をRt(m)として、デブリと同じ軌道周期T(時間)の円軌道で、軌道傾斜角のみが異なる軌道にあるとして、その交差角をθとおく。
(なお、ターゲットの衝突断面積は、デブリとの軌道交差角θの方向から見たものであることに注意)
(デブリフラックスの面積率速度)
ターゲットの衝突断面積も考慮したデブリフラックスの面積率速度s’は、(1)〜(1a)の計算を一般化して、
s’=Nπ(Rd+Rt)^2/(TD^2)x10^-6
年あたりの面積率速度S' に換算すれば、24x365.25=8766倍して、
S' =Nπ(Rd+Rt)^2/(TD^2)x8.766x10^-3 ・・・(1b)
(軌道交差確率)
周期T(時間)の地球周回円軌道の軌道半径Lは、L=3√(GMT^2/(4π^2))
Tの単位が時間、Lがkmだから、
地心重力定数GM=3.986x10^14x3600^2x10^-9/(4π^2)
=5.166x10^12/39.478=1.308x10^11
より、
L=3√(1.308x10^11xT^2)=5.076x10^3xT^(2/3) (2a)
軌道交差確率σは、ターゲットの円軌道を前提とすれば、その軌道全長に占める交差部分の長さの割合として、
軌道の2箇所で交差することも考慮すれば、
σ=2D cosecθ/(2πL)=Dcosecθ/(πL)
Lに式(2a)を代入して、
σ=6.27x10^-5xDcosecθT^(-2/3) 但し、θ≧arcsin(D/(πL))の時
=1 但し、θ<arcsin(D/(πL))の時 (2a)
式(1b)、(2a)より、年あたりの衝突確率Pは、
P=S'σ=5.497x10^-7xNπ(Rd+Rt)^2/(TD^2)x DcosecθT^(-2/3)
=5.497x10^-7x cosecθxNπ(Rd+Rt)^2/(DT^(5/3))
但し、θ≧arcsin(D/(πL)) (3-1)
=8.766x10^-3xNπ(Rd+Rt)^2/(D^2T) 但し、θ<arcsin(D/(πL)) (3-2)
4.考察
まず上記の計算は、前提として単純化のため円軌道を仮定し、デブリの軌道とターゲットの軌道が必ず交差する場合(両者の軌道半径が等しい)に限った特殊なワーストケースの議論である事に留意すべきである。
(デブリの存在範囲を限定して考える前提であるから、交差しなければ衝突確率は厳密に0になってしまい、議論の意味が無い)
地球近傍の低軌道(LEO)に限ったとしても、宇宙空間のこっち側よりは向こう側のほうがはるかに広いのは自明であるから、通常は軌道が交差する確率は低く、交差しない限り衝突確率はゼロのはずである。
ただ、デブリの存在範囲は軌道断面積Dkm平方などと限定できるのは特殊な理想的な場合(例えばデブリ発生直後のような)のみであって、時間と共にその分布範囲は広がるものであって、そもそも小さなデブリも入れれば、どこら辺にあるのかも定かではないところに、問題の本質はあると思われる。
このように議論のために理想化された特殊な場合の、ワーストケースとしての計算ではあるが、上記式(3-1)、(3-2)から読み取れることを考えてみる。
式(3-1)、(3-2)はそれぞれ、デブリの軌道とターゲットの軌道が部分的に交差する場合(3-1)と、ターゲットの軌道がデブリの存在範囲に完全に含まれる場合(3-2)にあたるものと、解釈される。
もちろん後者の、
ターゲットの軌道がデブリの存在範囲に完全に含まれる場合(3-2)の方が圧倒的に衝突確率は高く、その係数だけを見ても最大1万倍近く危険ということになる。
つまり、軌道交差角θの影響が大きい(θが小さいときが危険)、というのが一点、
次にどちらの場合にも共通するのは、衝突確率が、
(1)デブリの数N、ターゲットとデブリの衝突断面積の和(Rd+Rt)^2(正確な言い方ではないが)に比例し、
(2)デブリの存在半径Dと軌道周期Tの冪に反比例する、
ということである。
月並みだが、ターゲット、デブリが大きいほど衝突確率は高く、デブリの密度(N/D^2)が低く、高軌道ほど衝突確率は低くなる、ということ。
DとTの冪の指数は両者で異なるが、軌道交差角θの関数cosecθが両者の境界でその違いをキャンセルする値となっているはずである。
P.S.
上記のように、余りはっきりした結論ではなかったのでお蔵入りしてたが、某掲示板での書き込みに触発されて、とりあえずアップしてみた(2007/12)
はやぶさのような探査機だと人工惑星ということになるので地球公転軌道近傍として、軌道周期Tが「時間」のオーダの地球周回の人工衛星よりもおよそ1万倍、デブリの分布範囲を例えば目の子で100万km四方(10^12km^2)、デブリの個数をこれも適当に100万個、
デブリの大きさははやぶさに比べて無視できる大きさとして、はやぶさの衝突断面積を大きめに見積もって100m^2として、
上の式(3-2)に代入すると、Pは1/100億くらいかな?