目的
重力場中を自由落下した物体が、床などに衝突したときに受ける、衝撃力を、適当な仮定の下に見積もってみる。
事例1(非弾性衝突)
重力場(重力加速度 g)中を、高さhの場所から、t 秒間自由落下して床に到達した物体が、
自身ないし床の変形で長さ x だけへこんで、衝突後 s 秒間で静止したとして、
(減速加速度 a はこの間一定とする)
落下距離 h、減速(変形)距離 x と時間 t, s、加速度g, aに関して、
1/2 gt2
= h
1/2 as2
= x
より
(g/a)(t/s)2 =
h/x
...(1)
一方、t秒かけて到達した床到達時の速度が、s秒で0になるから、
gt=as
t/s=a/g
...(2)
(2)を(1)に代入すれば、
a/g=h/x
結局、
衝突物体に働く加速度と重力加速度の比(a/g)は、h/xに等しい、
つまり、衝撃力を重力加速度の単位Gで表したものは、落下距離と、衝突後の変形距離の比に等しい
ことが判る。
例えば、1mの高さから落ちた物体が、床ないし自分自身の変形で1mmへこんで止まったとしても、
1m/1mm=1000G
という、自分自身の重さの1000倍もの衝撃力が瞬間的にではあるが働くことになる。
(このときの落下時間は、0.5秒弱、衝撃力の働く時間はその1/1000の0.5ミリ秒弱)
静止までの変形距離 x が1cmあったとしても(1cmもへこむ床というのは相当柔らかい気がするが)、それでも100Gかかることになる。
(もちろん床だけでなく、落下する物体自身も変形するので、厳密にはそれらの和が
x となる。
瞬間的であまり気付かないものの、衝突の瞬間には、物体や床は堅いようでも案外変形しているということであろう。
(野球のバットがボールを捉えた瞬間の高速度写真を見たことがある方は、御納得頂けると思う。)
更に、落下物体の大きさを考慮すれば、床と物体の最初の接触地点は、物体の重心から落下速度方向に延ばした直線上にはないことがほとんどであるから、
床と物体の接触後、物体には回転モーメントが作用して物体はころがるので、衝撃力(減加速度 a)は上記の例よりも緩和されることが期待される。)
事例2(床の弾性を考慮)
重力場中を高さhから自由落下してきた質量mの物体が、バネ定数kの床に衝突したときの変位xと減加速度aを求める。
(但し、衝突後は重力加速度gは無視できると仮定し、バネ定数kも不変とする)
回答
床に衝突直前の物体の落下速度vは
mgh=1/2mv2
より
v=sqrt(2gh)
....(3)
衝突後の物体の運動方程式は
d2x
ma = m---- = - kx
dt2
一般解は、
x(t)=C1exp(jsqrt(k/m)t)+C2exp(-jsqrt(k/m)t)
衝突の瞬間をt=0として、変位xを床の静止面を原点に下方に正ととれば、
条件 x|t=0 = 0
を満たす変位xの特殊解は、Aを最大変位量として、
x(t)=Asin(sqrt(k/m)t) ....(4)
速度vは、
v(t)=x '(t)=Asqrt(k/m)cos(sqrt(k/m)t)
最大変位量Aは、衝突の瞬間(t=0)における速度の初期条件
v|t=0=sqrt(2gh)
より、
Asqrt(k/m)=sqrt(2gh)
従って、
A=sqrt(2mgh/k)
....(5)
減加速度aは、a=- (k/m)x(t)より、
a(t)= - (k/m)Asin(sqrt(k/m)t)
= - (k/m)sqrt(2mgh/k)sin(sqrt(k/m)t)
= - sqrt(2gkh/m)sin(sqrt(k/m)t)
....(6)
減加速度aが最大となるのは、
sin(sqrt(k/m)t)=1となるとき、
即ちsqrt(k/m)t=π/2のときで、
t|amax=π/{2sqrt(k/m)}
このとき最大減加速度は
amax= - sqrt(2gkh/m)
最大減加速度amaxと重力加速度gの比を、落下距離hと最大変位Aの比と比較してみる。
amax/g=sqrt(2kh/mg)
h/A=h/sqrt(2mgh/k)=sqrt(kh/2mg)
従って、amax/g=2h/A
問題1の減加速度一定の近似のときと比較すると、係数2が掛かっているが
加速度の比が、落下距離hと最大変位Aの比に比例することは同じであることがわかる
適当な仮定を置いて議論を精密化してみると、
一般に物体の質量mは物体の大きさ(球なら半径R)の3乗と密度ρに比例し
m=(4/3)πρR^3
一方床のバネ定数kは、およそ物体と床の接触面積Sに比例すると考えられるから、
接触面積Sが物体の断面積の程度であるとして、
k∝S∝R^2
ゆえにバネ定数kと質量mの比k/mは
k/m ∝ 1/(ρR)
従って、
h/A=sqrt(kh/2mg) ∝ sqrt(h/(2gρR))