▼Demand act.2 |
「じゃあ、今度は私の番ね。マニキュアの中からマイクロチップを取り出す方法を教えるわ」 「何かに塗ってみれば良いんだろう?」 「リード線の付け方は分かるかしら」 「何か特別な方法でも?」 「お姉さんが教えて上げるから、貴方は座って」 わざわざ声音を作ってそんな台詞を吐くと、リツコは加持をソファに座らせた。 ジャケットを脱がしてシャツの袖をまくり上げる。 「マニキュアの基材は接着剤だから、乾いた後で繋ごうとすると接触不良を起こす可能性が有るの。小さな物だから、無理に端子を露出させようとして力を加えるとパッケージが痛むわ」 「それは少々厄介だな。除光液でも用意すれば良いのかな?」 「もっと簡単な方法が有るから教えて上げる。手を出して」 「ん? こうかい?」 「逆よ、爪を出して」 「マニキュアを塗られるのは初めてだ」 「指を動かさないで。ムラが出来るとチップを見失うわ」 小さなテーブルに広げられた加持の手に、リツコがマニキュアを塗っていく。 他人の手にマニキュアを塗った経験など無いが、普段の化粧と何も変わらない。手早く、マイカの入った紫紺の塗料を塗り広げる。 「男の人の爪って、随分大きいのね」 「そうかい? こんなもんだろう」 「こんな風に比べて見た事無いから、知らないわ」 加持が広げた指の間に、リツコは自分の指先を並べてみた。 常にキーボードを扱うリツコは、長く爪を伸ばして飾る事が出来ない。 少女のような小さな爪と、大柄な加持のそれとでは、長さで五割、幅で倍は違う。 「おやおや、トップクラスの科学者とは思えないな」 「世の中は分からない事、知らない事だらけよ」 「だから知りたい?」 「そうかもね……もっと、いろんな人と付き合ってみれば良かった」 言葉を交わす間も、リツコは細い筆を広い爪に走らせ続ける。 「此処からは時間が無いわ。乾き始めると厄介なの」 ベッドサイドからスタンドを持って来て、テーブルに広げられたままの加持の手を照らす。 眼鏡を掛けて目を凝らし、煌めくマイカとマイクロチップとを見分ける。 「チップは全部で幾つあるんだい?」 「二十ちょっとね。一つには入りきらなかったから、二種類混じってる」 「えらく念入りなんだな。リードは何が良い?」 「それも此処に入ってるわ」 リツコはマニキュアの壜を包んでいたリボンを取り出すと、その端から金糸を数本抜いて見せた。 「気付かなかった。ただのリボンにしか見えない」 「本物の金繊維よ。これとこれを繋いでみるわ」 眼鏡ケースからピンセットと精密ドライバーを取り出したリツコは、乾き始めたマニキュアの中に交じったマイクロチップに、金繊維を刺していく。 加持の右手の薬指と左手の親指に、目を凝らさなければ見えない細さのリード線が繋がれた。 「コートを塗れば完成。乾けば多分剥れないと思うけど、何かに着けたら今度は取れなくなるわよ」 透明なトップコートをリードの上から塗り、マニキュアの中にマイクロチップとアンテナが埋め込まれた。 よほど近付いて見ても、傍目には単なるマニキュアにしか見えない。 「なあリッちゃん、ちょっと待ってくれ。この状態じゃあ何も出来んよ」 「今ごろ気付いたの? 間抜けなスパイさんね」 そう言って笑うリツコに、加持はようやくその企みに気付いた。 手錠を掛けられ、縄で縛られたのなら抜け出す手立ては幾つもある。 けれど今、加持の指先は傾ければ流れてしまいそうな生乾きのマニキュアと共に、貴重なデータを収めたマイクロチップを載せていた。 これがベッドのシーツにでも着いてしまえば、再利用は難しくなる。 そして残りのチップを収めた小壜は、蓋が開けられた状態でリツコの手の中に有った。 彼女がその気になれば、毛足の長い絨毯にぶちまけられて終わりだ。 絨毯ごと剥がして持ち帰ったとしても、ゴミと混じっては見分けるのが困難だろう。 |
「言ったでしょ、今度は私が教えて上げるって」 呟いて微笑むリツコの容貌は、心底楽しんでいる風情だった。 それはやはり、猫科の笑みだった。 美人にだけ許される冷笑であり、余裕がもたらす憎々しい程の艶だ。 「リッちゃんにそう言われると、ゾクゾクするね」 嘘でも世辞でも無く、薄ら寒い程の色香。 「慣れてないんでしょ、分るわ。リードされるとどうして良いのか分からない?」 リツコの声が低く響く。 言われる通り、慣れていなかった。どうしても身体が硬くなる。 「力を抜けば良いのよ。ただ、任せて」 半分袖を捲ったワイシャツはそのままに、ベルトとズボンが緩められる。 成す術も無く露にされた下半身。黒いボクサータイプのショーツをずらされ、まだ硬くなってないモノを握られて、加持が呻く。 冷たい手、細い指先。まだ酔いの残る熱い肌に、絡む指の感触だけが生々しい。 「別に焦る事は無いさ……せめてバスルームに行かないかい?」 「ふふ、肌を合わせる前にシャワーを浴びるのって、嫌いなのよ」 「どうして?」 「汗の匂いだって人それぞれ特有のモノだわ。わざわざ流して石鹸とコロンで隠してしまうなんて、嫌よ」 「ふーむ……案外、ワイルドなんだな」 加持はソファに背を預けて、天上を見詰めて手を捧げるように持ち上げる。 手を置いていた机をずらし、足の間にリツコが膝を付いた。 濃い紅が引かれた唇が、加持のモノに触れる。 冷たい指先に触れていたソレが、不意に熱く濡れた感触に包まれて、ピクリと震えた。 「ダメだな、落ち着かない。触るのは好きなんだが、触られるのはどうもね」 「諦めなさい。今夜、貴方の身体は私のモノよ」 下から響いてくる声音に、背筋が震える。 加持のモノを半分口にしたままリツコは囁くのだ。 「っ……あぁ……」 加持は目を閉じ、溜息と共に声を漏らした。 リツコの口の中は、ひどく熱い。 目を輝かせ、頬を高潮させ、酔いに任せて加持を貪るリツコ。 科学者としての好奇心なのか、熟れた女の好色さなのか。 ゆっくりと硬さを増しつつあるモノをしごき上げ、妖艶な笑みを浮かべた口元に運び、唇で包んで舌で舐め上げる。 全てが、焦らすようなテンポ。 付き合った男の数が少ない等と嘆く割に、あらゆる仕草が洗練され、そして、計算され尽くしていた。 |
「想い出すわね……私の女を、最初に散らせたのが貴方よ」 うっとり呟くリツコの瞳は、熱く潤んでいた。 唾液が溢れて肌を濡らす。 加持のモノが硬さを増して直立すると、添えていた手を離して自ら服を脱ぎ始める。 やや地味な、濃いブルーのスーツ。それを脱ぎ捨てて白いブラウス姿になると、豊満な胸が目に付く。 「覚えてる? 貴方、酷かったわ」 「何がだい」 目を瞑ったまま、呻くように応える加持。 貪欲に、獣のようにヒトの身体を貪る事には慣れきっているが、支配されるように自身の身体を弄ばれるのは、新鮮な驚きに満ちていた。 「初めての時はちゃんと優しかったのに、その後は、まるでモノ扱い」 「リッちゃんの身体が、そうして欲しがっていたのさ」 「違うわ、貴方がそうさせたのよ。思えば、酷い男よね」 セックス・フレンド。 大学時代の二人を一言で表すなら、そうなる。 ミサトと加持が男女の関係を終わらせた後も、リツコと加持とミサトの三人はいつも行動を共にした。 そして、加持とミサトの関係が切れた分、リツコと加持は近付いていった。 けれどそれは、情念に溺れるような、燃えるような恋愛とは違っていた。 ドライに、ただ楽しむ為にと、お互い嘘を吐いて身体を重ねた。 「楽しかった?」 「勿論さ。リッちゃんは、違ってたのかい?」 「どうかしら……ミサトみたいに、本能でセックスを愉しめる程、器用じゃなかったのかも知れないわ」 「不器用だったから、カタチから入った?」 「そうね……多分そう。みんなが夢中になるオトコとオンナの関係がどんなものか、知りたかったの」 加持のモノを咥えて囁く間に、リツコは全裸になった。 記憶にあるそれより、多少ボリュームと丸みを増した裸体。 ブラを外すと、はちきれんばかりの乳房が揺れた。 「でも、サンプルにするには貴方は少し、特殊だったのかもね」 「それはリッちゃんも同じだろう。まるで実験だった」 「どうすれば夢中になれるのか確かめたかったのよ。けど、男と女はロジックじゃないって事が分かっただけ」 リツコの背中に、加持が掌を滑らせる。 白く滑らかな肌が温かい。 しかし自分の爪は、相変わらず冷たく感じられた。 まだマニキュアが乾いていない証拠だ。 だから、掌で軽く触れる事しか出来無い。 リツコの肌は、何処に触れても柔らかい。女の肌だ。 「それ、司令にもするの?」 「もちろんよ」 唾液に塗れたモノを、リツコは両の乳房で挟んだ。 下から支えるように零れる乳房を持ち上げて、しごき上げると、挟まれた加持の先端が口に届く。 それほど、リツコの胸は大きく、柔らかい。 「ああ、それヤバイな。そのままイキそうだ」 「二度や三度で役に立たない程ヤワじゃ無いでしょ?」 「多分ね」 記憶にあるどんな肌より、今のリツコの肌は、ねっとりと絡み付くような質感だ。それが一分の隙も無く、加持のモノを包んでいる。 「ミサトはしないの?」 「それかい? 何度か試した事は有る……けど、思った程じゃないんで止めた」 「私のは?」 「ヤバイよ、マジでさ。何が違うんだろうな」 じっくり観察すれば、理由が分かった。 見た限りでは、リツコとミサトの胸に大した差は無い。服のサイズや下着の寸法も同じようなものだ。 けれど、その張りとカタチは大きく違っていた。 ミサトの胸は、鍛えられた大胸筋が支えていて、突端はやや外を向き全体に張りが有る。ブラを付けていても外していても、さして差が無いと言えるぐらいだ。 また軍人として今も基礎的なトレーニングを欠かさないミサトの肌は、大人の女としては脂肪が少なく生硬だった。 一方でリツコの肌は、そうした鍛錬とは無縁だ。 魅力的に見えるラインを維持する為に、暇が有れば水泳やフィットネスで汗を流しはするが、筋力の増強を目的にしたハードなトレーニングとは訳が違う。 年齢相応に丸みを帯びた肌はしっとりと柔らかく、また大きく張った胸の底を支える固い筋肉も細い。 だから両の掌で寄せて持ち上げれば、その谷間はぴったりと閉じて密着する。 その柔らかな肌の隙間に加持の固く張ったモノを収め、ゆっくりと上下に擦りながら時に先端に唇で触れる。 「マジでイキそうだよ」 太腿の内や尻の間に挟んだとしても、これほどではない。 加持の息遣いが荒くなると、リツコは両の胸で挟んだまま先端をしっかりと口に収めた。 「ああ……」 ねっとりと先端の裏側に張り付いた舌が、ひどく熱く感じられる。 口腔の中にはまだ、酒に煽られた体温が残っている。 「それでも良いわ」 口と胸を同時に動かすリツコ。 同期して上下したかと思えば、また別々に蠢き出す。 熱くざらつく舌の感触も、時に柔らかく、時に固く、口の中で自在に蠢く。 変幻自在なそのリズムは、並のセックスよりもよほど刺激が強かった。 張った亀頭の裏側の最も敏感な所に吸い付くように、また擦り上げるように絡み付く。 「口の中で、良いのかい?」 もちろんよ、と、深く咥えてさすがに声にならないが、表情でそう告げるリツコ。 たっぷりマスカラの乗った重い睫毛が、ゆっくりと閉じてその瞬間を待ちうけた。 「うっ…あぁ……」 眉根を寄せ、大きく口を開くその容貌。赤らんだ頬に、どぎつく光る唇の紅。 硬く立ち上がったモノが、更に大きく張り詰めたように感じる。 迸る予感に加持は身体を硬直させながら、加持の手はリツコの頭を掴んでいた。 腰が震え、背筋が椅子から離れる。 止める事の出来ない衝動が股間から背筋へ立ち昇り、身体の震えが背を反らせて口に含まれたモノを喉の奥底まで突き上げる。 恐らく苦しい筈だが、リツコは抗う事無く深く深く加持のそれを咥え込んだ。 「んっ……つっ……くうっ」 迸る直前の、熱く痺れるような、最も強い快感の波がやってくる。 一瞬でも長くそれを味わう為に、加持は股間に力を込めて吹き上がる衝動を押さえ込みにかかる。 耐えて耐えて、はち切れるように噴き出す瞬間が予感された。 リツコは胸を支えていた手を離し、右手でぎゅっと加持のそれを掴んで根元からしごき上げた。 「うあっ」 迸り、流れ出す。 リツコの熱い口の中、その喉の奥底めがけて噴き出す。 ビクンビクンと弾けるように震えるそれを、リツコは搾り取るように何度も何度も強くしごいた。 その刺激に、再び身体の底から熱い流れが溢れ出す。 何度震えたか分からないが、射精の瞬間をこれほど長々と味わう事は稀だった。 吸い上げるように、絞り尽くすように、唇をすぼめたままそれを離さないリツコ。 「ああ……ああ……良かったよ」 溜息と共に呟いて、加持の背が再びソファに戻る。 だらりと投げ出される四肢。 しかしリツコの口はまだ、加持のそれを解放しない。 力の抜けた足からズボンとパンツと靴下を剥ぎ取り、ワイシャツのボタンを手探りで外しにかかる。 「リッちゃん、もう離してくれないかい」 「ダメよ……まだダメ」 口に含んだままそう呟くと、やや硬さを失ったそれに再び細い指を絡める。 張りを無くした亀頭の粘膜を、唇で吸い上げる。 まるで失った血を再び集めるように、きつくきつく吸われる感触。 一度絶頂を超えたそこは、ひどく感覚が鋭くなる。 ともすれば悦楽を超え、痛みを感じるような強い刺激だが、荒々しい愛撫に再び獣欲が鎌首を持ち上げる。 「男の人のこれって、不思議ね」 再び自立するようになったそれに軽く手を添えて、リツコは唇で軽く撫で擦りながら囁いた。 「何をイマサラ……まるで知り尽くしてるみたいに見えたぜ?」 「どうすれば気持ち良くなるかは知ってる。でも、ただそれだけ」 「それ以外に何が有る?」 「私、時々思うのよ。男の人にコレが付いてるんじゃなくて、コレに男の人が付いてるんじゃないのかしらって」 「酷い言われようだな。まるで、男の人格は性欲の付属物みたいに聞こえる」 「似たようなものでしょ」 確かに、そうかもしれない。男にとって性欲とは、制御できない別の生き物だ。 性徴が表れると共に男の人格の一部に同居する衝動。 歳月を経て付き合い方に慣れる事はあっても、一生その部分を意識しなくなる時は来ない。 身体に寄生した性器に全身を操られているのが、オトコと言う名の哀れな生き物なのかも知れない。 「じゃあ、女はどうなんだい?」 「女の人格は元々脳の中になんて無いのよ」 「じゃあ、何処に?」 「子宮よ……女の身体に魂が宿ってるとすれば、それは子宮に有るわ」 やや厚く塗られた口紅が、唾液と精液を乗せて艶やかに光る。 密やかに囁く口元がエロティックに見えるが、それも当然だ。女陰の唇に似せて、女は口元に紅を引く。 豊満な胸の谷間の肌を見せつけるのは、ふくよかな下半身のメタファである。 「リッちゃんがそう言うとは思わなかったな。ある意味、一番脳が発達してる女性の一人じゃないのかい?」 「そうかも知れないけど、脳が生み出すのは単なるロジック。何処まで複雑化して、高度化していても、所詮はロジック。細かに解き明かせば条件付けと分岐を延々繰り返してるだけの器官。そんなモノに魂が宿るなんて思いたくないわ」 本能でセックスを愉しめる程、器用ではなかったと言ったリツコ。 「昔と今とで、何が変わったんだい?」 「主従が逆転しただけ。頭を中心に考えていたから、加持君と寝てた頃には愉しめなかった。今は逆……お胎の底に息づいてるのが本当の私……そう考える事にしたわ」 「司令との付き合いで?」 「ええそうよ。だって、あの人は私の顔も頭脳も、これっぽっちも見ていないもの。身体だけ、ただ抱くだけ……性欲を処理するのに便利だから抱いてる……それだけの事」 加持は自分の爪を顔に近づけ、仔細に眺めその匂いを嗅いだ。 溶剤がだいぶ揮発し、鼻を突く刺激臭が弱まった。 まだ触ったら剥れてしまいそうだが、流れるような事は無いだろう。 ゆっくりと、リツコの明るく染められた髪に触れる。 「じゃあ、どんな関係を望んでた?」 「ふふ……やっぱりダメな女ね、私って。そのイメージも湧かないのよ。家庭が持ちたいわけでも無いし、愛されたいわけでも無い。ただ、時々抱かれてる。それを望んだような気もするし、それじゃ飽き足らない気もして……結局、一番分からないのは自分自身ね」 見下ろす加持の目からは、リツコの目尻の泣きぼくろが良く見えた。 涙の通り道に有るそれのせいで、彼女は生涯、幸せな恋愛をしない運命なのだろうか。 |
「なあリッちゃん、飲み直さないかい?」 「酔っても泣かないわよ」 「別に、泣き顔が見たい訳じゃないさ」 リツコがそれを手放すと、加持は裸のまま立ち上がって冷蔵庫を開けた。 缶ビールとグラスとウィスキーの小壜を携えて、ベッドに座る。 リツコは氷とミネラルウォーターを用意して、枕に背を預けてシーツに並んで足を入れた。 「慣れないプレイに興奮したんでね、少々喉が渇いた」 缶ビールを煽る加持の隣で、リツコは水割りを飲み始めた。 氷に触れて冷えた手を温めるように、シーツの中の加持の股間に手を差し伸べる。 それはまだ温かく、息衝いている。 頭脳や身体の他の部分とは、全く無関係に。 「ベッドでお酒を飲むのは初めてかも」 「司令は寝酒は飲んだりしないのかな? 俺ならあんな仕事は、ストレスで不眠症になりそうだが」 「寝付きは良いわね、朝も早いし。物足りなくて寝そびれる私の隣でさっさと寝入って、朝になるともう居ない、なんてしょっちゅう」 「それは随分、冷めた関係に聞こえるな」 冷蔵庫に並べやすいようにか、良く冷えていた缶ビールはサイズが小さかった。 一本を飲み干して、もう一本開ける。 酔いが醒めてしまうのが、有る意味恐ろしい。朝まで酔い続けていたい夜だ。 「言ったでしょう。あの人、私の身体にしか興味が無い……それも、性欲を感じた時だけの事」 「長い付き合いだろう。身体の相性は?」 「さあ……比べる相手が、貴方しかいないもの」 「これって不倫になるのかね」 「あの人に独占欲が有るとは思えない」 薄く笑って、氷で冷やしただけのほとんどストレートのウィスキーを煽るリツコ。 グラスを持っていない方の手は、まだゆるゆると加持の股間に愛撫を続けている。 昂めるでもなく、宥めるでもなく。温かさと半端な硬さを楽しむように、手の中で弄ぶ。 「それ、楽しい?」 「ええ、わりと」 加持は自分の煙草に火を付け、リツコに渡してもう一本火を付ける。 手元に近付く爪に塗られたマニキュアを、再び嗅いでみる。 もう匂いはしない。 「どうやら、乾いたようだ」 「じゃあ剥がさない限り安全よ、保障するわ」 濃いマニキュアと透明なコートの間に、光を当てるとようやく分かる細さのリード線。 道具がなければ中のデータは分析出来ないが、加持が追い続けてきた謎を解き明かす最大のヒントが、既に手中にあった。 「おっと」 爪を眺めながら想いを巡らす加持の不意を突くように、リツコが突然加持の胸に口付けた。 丸くなった氷を口に含み、冷たい水の軌跡を残しつつ肌を辿る。 「悪くないね、それ」 「でしょ?」 冷たく滑らかな感触が肌の上を滑り落ちる。 かかる吐息は酔いに熱く、冷たさと温かさのコントラストが肌を粟立たせた。 胸から鳩尾を辿り、臍に水溜りを作ったそれは、リツコの口が加持の股間に達する頃に消えて無くなった。 「冷たい唇も珍しくて面白い」 「そう?」 氷に冷えたリツコの舌と唇が、腹の上に反り返った加持のモノの裏筋を辿る。 与えられる刺激に、張り詰め脈打つ熱い獣。 「なあ、お尻をこっちに向けないかい?」 「お返ししてくれるの?」 「もちろんさ。愉しませてもらったからね」 硬いスプリングの上にぴんと張られたシーツを滑って、二つの身体はベッドの上で互い違いに重なり合った。 加持の腹の上に身体を乗せたリツコの口は、直立したモノを深々と咥え込んだ。 右手で棹の根元を握り、左手でふぐりを包むように撫で擦る。 冷たかった口の中はじきに体温を取り戻し、溢れた唾液が股間を滴ってシーツまで濡らした。 「さすがに、上手いね」 加持が思わず嘆息する程の舌使いと共に、ゆっくりと首を上下させて根元から先端までくまなく唇で触れる。 溜息を吐く加持の胸の上には、リツコの下腹が乗っている。 真後ろから眺める太腿から尻にかけては、胎の中心に眠る子宮をぐるりと取り囲むように、柔らかく丸いラインを描く。 「良いな……女の肌だ」 内太腿に頬を滑らせ、柔らかく厚みのある双丘を両手で包む。 包むと言っても全てが手の中に収まる訳では無い。広げた指よりさらに一回り余るボリューム。力を加えれば簡単にカタチを変える柔軟さ。 どちらも成熟したオンナのカラダを主張していた。 確かに、この身体を支配しているのは子宮だろう。 孕み、産む為の肉体だった。 「んんっ」 加持のそれを深く咥えたまま、リツコの喉の奥が鳴った。 既に、裡から滴る愛蜜に塗れた膨れた包皮を捲り、いきなり勃起した花芯を啄ばむように唇で吸い上げたのだ。 鼻を突く女の匂い。 それは発情した牝の匂いだった。 舌に触る愛蜜の感触も、濃い。 「ヤラシイ身体だねぇ」 思わずそう言いたくなるような女陰だった。 綾織の花弁の襞が深い。 充血して厚く腫れた陰唇に、大きく膨れた花芯。包皮の中に収まったそれは、男根の先端のミニチュアにも見える。 男を受け入れ、自らも快楽を貪る事に慣れた身体だ。 「んふぅっ」 既に開き始めている孔に、指先を滑りこませる。 たっぷり濡れたそこは、長い指も苦も無く呑み込む。 リツコの中は、良く発達した外側よりもさらに、妖しい。 「こんなんだったか? 覚えてるよりずっと具合が良さそうだ」 「八年も前と比べないで。同じ身体なはずが無いじゃない」 「そうか……」 細波のように畝の走る内壁を指で掻き混ぜながら、加持も肯いた。指に力を込めれば自在にカタチを変える熱い肉の壁。たっぷり濡れていても細かな凹凸を指の腹に感じた。 細い筋が幾重にも折り重なって筒状の筋肉を形作っているのが良く分かる。 それは、二本目の指もあっさりと受け入れる。 呑み込まれる指と入れ違いに、愛蜜が溢れて泡を立てながら花弁を滴り落ちて行った。 胎内で指先に力を込めて、左右に広げる。 そのまま奥深くまで差し入れれば、広げた指の間に丸い子宮の膨らみが感じられる。 「ああっ」 加持のモノを咥えていた口を離して、リツコが始めて声を出して喘いだ。 外側よりも、入り口よりも、一番奥底で感じ易いのは、開発され尽くした熟れた女体の証拠だ。 「そこっ…お願い、もっと」 丸く熱い塊を、指で圧す。 胎の中心にあって動かないそれの入り口を探る。 指先でも抉じ開ける事は出来ない、堅く閉じたそれ。 その中心が一番敏感な筈だ。 「あっ、ああっ」 加持の顔に飛沫が掛かる程に、濃厚な愛蜜が溢れた。 拡がろうとヒクつく入り口にもう一本指を添え、三本の指で侵食する。人差し指と薬指で奥底を押し広げ、中指の先端で探る、女の中心。 「もっとして……もっとキツクして。大丈夫だから」 リツコの尻が持ち上がる。 膝をベッドに立てて、上体を突っ伏して腰を反らせる。 大きく剥き出しになった股間が、後ろから上を向く。 加持は入り口をさらに押し広げて、空気が入り込む隙を作った。 ブシュッと湿った音が響き、指で押し広げた隙間が更に広がる。 伏せた上体に向かい、内臓が普段とは逆の方向に引っ張られる。横隔膜が持ち上がり腹圧が下がる。 そうすると、空気が入り込んだ膣が限界まで拡がるのだ。 「あ…ああ……もっと」 リツコはゆらゆらと前後に腰を揺らしはじめた。 下腹が持ち上がり、膨れる。圧力の下がった腹腔内に引っ張り込まれるように指が飲み込まれていく。 「こじ開けてっ! もっと奥まで」 狭い隙間に入り込みたいという衝動が男の本能なら、虚ろな胎に全てを呑み込みたい、飲み干したいと思うのが女の本能なのだろう。 加持はリツコの下から身体を引き抜いて、尻を持ち上げて伏せる股間に口をつけた。 「あああっ」 花芯を舐め上げ、更に入り込む指をもう一本増やす。 男の指を四本丸ごと呑み込む程の女陰の持ち主は、そうは居ない。けれどリツコのそれは、加持の太く節立つ指を四本とも、容易く呑んだ。 「ああっ…イイッ!」 一杯に押し広げられる充溢感に、ようやくリツコの渇いた身体が満足げに戦慄いた。 けれど親指の付け根が邪魔をして、抉り込む深さは足らなくなった。腹圧に引かれて後ずさった子宮も遠くなる。 加持はギリギリ収まっている手を、やや強引に捻った。 ジュルリと湿った音を立て、親指を上に向けた掌。 こちらも押し広げられたいと脈打つ後ろ側へと突き立てる。 「ああっ…ああっ…あはぁっ」 うつ伏せで愛撫を続けた尻穴は、もちろん塗れてなどいない。 乾いた粘膜を無理やり太い親指で犯されるのだが、その痛みすらリツコにとっては快感のようだった。 「さすがだね……なかなか、こうはいかない」 まるで、丸い尻の中心から、手が生えているような光景だった。 親指を根元まで飲み込み、他の指も全て胎内に有る。 加持の右手はリツコに呑まれている。 そのまま力を込めて、手首まで差し込むほどの勢いで、押し付ける。 「あああっ…ああああっ」 その圧力から逃げるどころか、リツコは更に腰を反らせて尻を押し返してきた。 せめぎ合う力と力がぶつかり、ギリギリと更に深く押し広げられる。 胎内で、再び子宮に手が届いた。 堅く閉じていた入り口が、押し広げられる圧力に僅かに隙を見せていた。 そこに中指を押し当て、開く。 「ひぃあっ! んああああああっ」 シーツに押し付けられたリツコの口から獣のような声が上がる。 指先が堅い入り口をくぐり、中に入る。 そんな奥底に触れるのは、加持にとっても始めての経験だった。 「どうだい? 魂の座に触れられる感触は」 「まだ……まだよ。もっと突いて、深くまで」 リツコの女は、何処までも貪欲だった。けれど、指ではそれ以上届かない。 加持は締め付けられて痛むほどの手を引き抜いた。 「あああっ」 低く湿った音がして、入り込んでいた空気が抜ける。 支えを失ったように突っ伏すリツコ。 けれどすぐに腰骨を掴んで、再び膝を立たせる。 尻を上に向かせ、たっぷりと手に余る肉を掴んで両手で押し広げる。 大きく口を開いたその穴は、まるで底の見えない洞窟の入り口のようにも見えた。 そこに、威きり立った自身の肉欲をねじ込む。 「はぁあっ…ああっ!……もっと、もっと奥までちょうだい!」 十分に押し広げられ、愛蜜に塗れ濡った膣内を、奥底目掛けて突き進む。 普段なら、突き当ればそこからは引いて押しての繰り返しだが、リツコの身体がそれで満足するはずが無い事は分かった。 子宮の入り口に突き当る角度を慎重に見極めて、引く事無く、押し当て続ける。 一度指で拓かれたそこが、再び新たな獲物を呑み込もうと口を開けた。 加持のモノの先端が、余りに狭い入り口を押し分けて、半ば埋まる。 「いいっ…それよっ……もっと、もっと」 リツコは自ら太腿の裏を掴んで股間を押し広げながら、ぐいぐいと尻を加持の下腹に押し当ててくる。 加持はベッドに足を付いて腰を浮かせ、リツコの背中に手を着いて、真上から貫くように角度を加えて更に突き入れた。 「あっ…くぅっ……っ……あはぁっ」 詰めていた息をリツコが吐き出すと同時に、入り口が開いた。 ギリギリと先端の丸みが潜り抜ける。 「ああ……凄いな。こんなのは……始めてだ」 痺れるほどに熱い。 そこは愛蜜を煮溶かした坩堝だった。 「はぁ……はぁ……動かないで…まだ…ダメ」 リツコがゆっくりと上体を起こす。 加持がそれに合わせて体勢を入れ替えた。 少しでも隙間をあければ、圧力を緩めれば、堅く狭いそこは飲み込んだ加持の先を放してしまう。 加持が仰向けに、リツコがその腰にまたがる形を取るまでに、酷く時間が掛かった。 そこから更に慎重に上体を捻って、向き合う。 リツコの額には大粒の汗が光っていた。 もちろん、加持の身体も汗まみれだ。 「凄いな、リッちゃん。何時もこんな風にしてるのかい?」 「まさか……出来るようになったのは、最近」 「なるほど、今でも研究熱心なんだな」 加持のモノは太く、長い。 下手をすれば膣の奥で突き当ってしまい、根元まで刺激を受けない半端な状態での交接を強いられる事も多い。 ただそれは身体の相性だから仕方が無いとこれまでは諦めていた。 しかしリツコが編み出したこの方法なら、奥底まで十二分に受け入れられる上、入り口に締め付けられる根元と、亀頭のすぐ下で二段の締め付けが味わえる。 「正直、心配したんだよ」 「何?」 「いやさ、緩いんじゃないかってね」 「まぁ、酷いヒト」 リツコは意地悪く笑い、加持の恥骨に乗せた股間に力を込めてみせた。 「うっ…おっ……これはこれは、失礼しました」 思わずニヤリと笑う。緩いどころでは無かった。 リツコの胎の中の筋肉は、まるで舌と口で受け入れた時のように、時に堅く、時に早く、波打つ事が可能なのだ。 「なるほど、司令がリッちゃんのカラダしか見てないってのも、無理は無いな」 「どうして?」 「こんな芸当が出来るのはプロでも珍しいぜ?」 腰の上に乗ったリツコの下肢は、やはり柔らかだった。 熱く溶けた胎の中心に、先端がこれ以上なく深く食い込んでいる。 身体を起こして下向きに戻った腹圧によって、子宮の奥底にまで直立した加持のモノが届いていた。 「それは普通の人に探究心と訓練が足らないだけ。同じ楽しむなら徹底して楽しまなければ損。でしょ?」 性技に関しても、やはりリツコは科学者なのだ。 より深く、完全に結合し、より強い快感の高みを目指す為には、労を惜しまない。 これに比べれば大人しい『単なるセックス』など物足らないと言われても仕方が無いだろう。 「覚えてる?……試験管を入れた時の事」 「ああ覚えてるさ。力を入れたらダメだって言いながら二本も三本も……結局何本入ったかな?」 「前に六本、後ろに三本よ」 「クリにローター当て続けて、イク時にリッちゃんの中で後ろのが一本割れた」 加持の脳裏にその日の事がまざまざと甦る。 二人で性欲を貪った若い日々。女体の探求に余念が無い加持と、絶えざる事無く高みを見極めようとするリツコ。二人にとってセックスは実験であり、自らの人体も単なる材料だった。 大学構内に忍び込み、高価な実験装置を性欲の赴くままに弄んだ。白衣を着たまま、真夜中の備品室で絡み合う若い肢体。 床に水溜りが出来るほどに溢れる愛蜜と、若い汗とが織り成す濃厚な匂い。 「それをきっかけに、貴方と寝るのは止めたわ」 「そう言えば謝ってなかったなぁ。あれは俺が悪かったよ」 女の身体は何処まで貪欲なのだろうかと、空恐ろしくなった加持。いくら本能がより強い刺激を求めても、限界を超えれば身体が壊れてしまう。 誘いを断るようになったリツコに、ある意味安心した。 そしてNERVに採用された後は、互いに忙しくそんな暇は無くなった。 「悪かったとすれば、そんな事じゃないのよ。おかげで、普通に抱かれても満足できないカラダになった」 「八年前からずっと、セックスの極意を探しつづけてた?」 「もちろん。司令の愛人の座を独り占め出来たのも、そのおかげかしら」 仰向けに身体を伸ばした加持の胸に、リツコが濃い口紅の跡を残すように口付ける。 「じゃあ謝る必要は無いか」 「いいえ。まだ責任を取ってもらってないもの」 「こんな淫らなカラダになりました、って?」 「そう」 ゲンドウが、貪欲なリツコの求めに何処まで応じているのか。 話に聞く限りでは、二人の関係は既に冷めているようにも思えるし、ベッドの中で貪り合う時だけは熱いようにも思える。 けれど、相手がどれほどであろうと、リツコの身体を満足させるのは並のプレイでは無いはずだ。 毎回それに付き合うには、底無しの体力が必要だろう。 リツコの求める高みは、余人の想像を超えた所に有る。 「若いだけじゃない……ただ上手いだけでもダメね。私にとことん付き合って、一緒に堕ちてくれる……そんなパートナーには、結局出会わなかった」 「それ、俺のせい?」 「そうよ。どうしても、貴方を基準に選んでしまうもの」 であるならば、ゲンドウもそれなりに性欲に対して激しい探究心の持ち主なのだろう。 そんなゲンドウに満足出来なくなったのは、年を追う毎に深まる女の貪欲さゆえだと、リツコは自らを嘲った。 「身体の奥底が疼いて、熱くて、眠れない夜も有る。仕事で頭を酷使した後に多いけれど」 「そんな時はどうしてる?」 「一人で遊ぶわ……でも疲れるのよ、終わった後は寂しくなるし。自分で自分を満足させるのも大変」 「リッちゃんじゃあ、そうだろうな」 「でも、貴方に抱かれるのは、怖かった」 「何故?」 「私がそうだったように、貴方もあれから、もっと先に進んでいたなら……」 「俺達二人は何処まで堕ちて行くか……って?」 「そう」 リツコは身体を起こして、不精髭の残る加持の顎や頬を掌で撫で擦る。 上に乗られて下から見上げると、リツコの胸は更に大きく見える。前のめりに身体を傾けているから、余計に目の前に迫るそのボリュームが迫力を増す。 加持はリツコの両胸を鷲掴む。 「長い指……良いわ…もっと、握り締めて」 跡が付く程に手に力を込める。 柔らかな皮下脂肪が柔軟にカタチを変え、その中に発達した乳腺の手応えを感じる。 「んふぅ」 リツコが顎を反らせ、首を仰け反らせて天井に向かって溜息を吐く。 重く揺れる上体を加持が支え、リツコが繋がった下半身を前後に揺らし始めた。 「だから今夜だけ……貴方とは」 「ああ、とことん付き合うよ」 |
前後に動くリツコのリズムに合わせ、加持は下から腰を付き上げる。 今でもトレーニングは欠かさない。 裸になった加持の身体は無駄なく引き締まり、アスリートのそれに近かった。 身体を持ち上げてしまうと、せっかく一番奥底まで繋がったそれが外れてしまう。 だからゆっくりと、リツコの体重を乗せたまま腰を持ち上げ、離れないように静かに引く。一人分の体重を上に乗せたまま、腹筋を鍛えているような動きだ。 「さすが……ね」 「そうかい?」 リツコの胎の中心が支点となっていた。 普通は、身体を前後に動かせば、恥骨に支えられた入り口と、棹の付け根が支点になって、先端が中で揺れる。 子宮の中まで長いソレを呑み込んだこのカタチで同じ動きをすれば、無理な力が掛かってせっかく達した奥底から抜け落ちてしまう。 だから、先端を支点に腰の方を廻す。こうした細かな動きの一つ一つを見極めるセンスが、リツコが高みを目指すのに欠く事ができないパートナーの資質なのだ。 「ああ……どんどん良くなってくるの。分かる?」 「ああ分かるさ。最高だよ」 世辞でも麗句でも無く、加持はリツコの身体に驚嘆していた。 刺激が強まると、中が強張る。 横隔膜が緊張し、腹圧が下がる。 加持のモノをカリの下で咥えたリツコの子宮は、上に向かって行く。 胎の中心へ、更に深くへと、引きずり込まれるような感触。 「病み付きになりそうな感触だ」 「ああっ、いいっ…私もよ」 十分に太く長いソレでなくては味わえない感触に、リツコも酔っていた。 子宮にオンナの魂が宿るなら、それに直接触れられたいと願うのは当然だ。 そして、放たれる精が男の欲望であるならば、それを余す事無く呑み乾したいと願うのが、女の欲望。 「あああっ…良いわ…凄いの」 加持のそれを奥底へ引きずり込もうという動きが、更に力強さを増す。 まるで胎の底にもう一つ別の生き物が巣食っていて、餓えた食欲を満たすために貪り食っているかのようだった。 そして、リツコの中に深く深く入り込んだ加持のそれもまた、別の生き物だ。 何処までも、先へ先へと分け入りたい、入り込みたい、流し込みたいという本能を備えた、一本の生き物。 二つの身体に備わるそれぞれの寄生生物が、宿主の脳に向かって更なる深い結合をと、信号を送り続けている。 「千切れそうだぜ」 亀頭がはち切れそうに充血し、リツコの子宮の中で膨れ上がっているのが分かる。 カリの付け根をぐるりと押さえ付けられて、先端に流れ込んだ熱い血潮は返ってこない。一方的にどんどん膨れ上がっていく。 そして虚ろな空隙を埋めようとする穿ち込まれたそれを、喰らい尽くし喰い千切ろうと蠢くリツコの奥底。 「ああ、溢れさせて…一杯にして」 「良いのかい?」 「大丈夫よ……決まってるでしょ」 放たれる精の奔流こそが、リツコの本能を満足させる最も深い悦楽。 そして勢い良く放ち、最後の一滴まで注ぎ込む瞬間がやってくる。 「ああ、きた、きたよ」 「ちょうだい…たっぷり、たっぷり注いで」 深い襞を供えた陰唇が、溢れる愛蜜に塗れて加持の股間の茂みに押し当てられる。 互いの恥骨に挟まれた花芯が、包皮を押し退けて剥き出しになりながら擦りつけられる。 入り口が、咥え込んだモノを逃すまいと収縮し始める。 そして、奥底が獣の本能を剥き出しにする。 一滴も残すことなく受け入れ呑み干す準備が始まる。 子宮の奥が、更に拡がり吸い上げる。 溢れる精を、迸る快感を、一滴も無駄にしない。 「ああっ…ああっ…イッて、放って」 究極のプレイの最後の瞬間。 絞り尽くされ吸い上げられる感触に、加持は震えた。 震えが背筋から腰へと駆け上がり、先端へ向かって走っていく。 濃厚な射精の一瞬が、更に引き伸ばされる。 「ううっ……ああっ」 「あはああっ…あああっ…もっと、もっとよ」 まるで子宮の底にも感覚が有るかのように、脈打つ加持のモノにリツコが全身を奮わせた。 流れ込んでいく、白い奔流。 「ああああああっ…くはっ…あはぁあっ」 ビクンビクンと、リツコの中で震える。 そのたびに一滴、また一滴と絞り尽くされていく。 リツコにもそれが分かっている。 出て行くたびに、リツコが震え、喘ぎ、のたうつ。 「あ……ああ……あはぁ……」 全て呑みこんで、リツコの息が絶えた。 加持の腕の中へと、倒れ込む。 かつて無い快楽に、加持の息も荒い。 二つの胸が、たっぷりと汗に塗れて密着する。 「すげえ…最高だよ、リッちゃん」 目を瞑ったリツコは返事をしない。 けれど、胎の底はまだ眠った訳では無かった。 張りを失った加持の先端を、まだ離さない。 強すぎる快感が痛みに変わり、加持は失神したリツコの身体を、ゆっくりと引き剥がした。 引き抜く時にも、強い抵抗を感じる。 恐らく、放って緩くなって居なければ抜けないであろうと思うほどに、締め付けたままのその部分。 ゆっくり腰を引きようやく身体を離して、リツコの身体を仰向けに横たえた。 「大丈夫かい?」 まだ返事の無いリツコの額を撫でる。 今引き抜いた股間へと目を移しても、自らが放ったモノは全く見えなかった。 普通は抜いてしばらくすれば流れ出てくる白いものが、無い。 本当に子宮の中に吸い上げてしまうのだと知り、改めて女の欲の深さに驚嘆した。 |
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