▼Dead or Alive act.2

 薄い扉一枚隔てた寝室は、以前よりさらに殺風景だった。
 頑丈なロッカーも、シンプルな机と本棚も、既に無い。
 ベッドとエアコン、天井の照明、それで全てだ。

 そして、何も無いフローリングの床の中央に、赤毛の少女が後ろ手に縛られ、Mの字に足を拘束されて、倒れていた。
 目を瞑ったまま運ばれたシンジは、加持に床に下ろされるまで、それに気付かなかった。

「んんーっ! んーんーっ!」

 口枷を嵌められた少女の声は、唸り声か呻き声にしか聞こえない。

「なっ、何でアスカが、此処に!?」

 俺が呼んだ、と呟きながら、加持がアスカを抱き上げてベッドに下ろす。
 アスカの股間には深々と二本、張り型が埋ったまま蠢いていた。
 リビングで激しく喘いだシンジの声は、全てアスカの耳に届いていたのだ。
 滴り、濡れそぼったそれが、少女がどんな想いで此処に閉じ込められていたのかを物語る。

「待たせたな」

 そう言って、加持はアスカの口枷を解いた。

「何でアンタがココに居るのよ!」

 仰向けに倒れ、身動き出来ないままアスカが叫ぶ。
 逃げ出そうと後ずさったシンジの手を、加持が掴んだ。

「い、いやっ」

 暴れる細い身体を後ろ手に捩じ上げる等、加持には造作も無かった。
 両手を後ろに廻して手枷を嵌め、身動きを封じられたシンジを天井から下がったチェーンに繋ぐ。

「そこで見てろ。目を反らすな」

 低い声で命じて、ベッドへと戻る。
 腰を下ろし、アスカの身体を抱え上げて、張り型を固定したベルトを解いた。

「加持さん、こんなのイヤよっ」

 首を振るアスカの長い髪が、加持の頬を打つ。
 構わず太腿の裏を掴んで持ち上げ、手で触れる事もなく、後ろからアスカの中心へと突き立てた。

「あああっ!」

 焦らされ、昂められ、手も足も動かせないままシンジと加持の声だけ聞かされたアスカのそこは、とっくに溶けていた。
 熱く濡れた中に、加持のそれがズブズブと音を立てながら埋っていく。

 正面から、シンジがそれを凝視していた。
 アスカには、顔を覆う事すら許されない。

「目を瞑るなよ。せっかく見られてるのに」

 加持はアスカの長い髪を掻き揚げて、後ろからその耳朶を噛む。
 アスカの胸を、首筋を、耳を愛撫しながら、加持の目はシンジを見詰めていた。
 思いがけず厳しい視線に、シンジの身体が硬直する。
 顔を背ける事が出来ないで居るシンジと目を合わせた加持は、ゆっくりと視線を下に下げる。
 細い身体の中心が、再び鎌首をもたげようとしていた。

「アスカも、見てごらん」
「あっ…は?」

 耳に口を付けて囁く声に、抗う事など出来ない。
 アスカが目を見開くと、頬を上気させたシンジと目が合った。

「な……なんで見てるのよ」
「だって」

 目を瞑るのは、逆に恐ろしい。
 耳を塞ぐ事の出来ないこの体勢で目を瞑れば、アスカの喘ぎ声と二人の身体が擦れ合う水音だけを聞かされる事になる。
 どんな風に加持がアスカに触れるのか、想像したくも無かった。
 なのに、二人が絡み合う光景を脳裏から消す事など出来ない。
 だからシンジは目を見開いて、目の前の光景を凝視した。
 少女の薄い、赤い下生え。
 溢れた愛蜜に濡れそぼったそこへ、加持の赤黒い怒張が出入りする。
 長々と引き抜かれ、勢い良く突き立てられる。
 響く水音。漏れるアスカの吐息。
 アスカの身体に深々と突き立てられた加持のそれを見詰めているのか、それとも身動き出来ないまま加持に貪られているアスカの身体を見詰めているのか。
 シンジ自身にも、分かりはしない。

「いやっ…見ないでよっ」

 アスカの声が、高くなる。
 乱れる姿を見られている。
 出入りする所まで、こんなに近くでまざまざと。
 そう思う事で、身体が一層熱く燃えるのを止められなかった。

「やっ…加持さん、ちゃんと抱いて!」

 膝の上に後ろ向きに乗せられ、アスカ自身は加持に触れる事ができない。
 抱き合って目を瞑れば、シンジの視線など意識から追い出す事が出来たかもしれない。
 けれど、アスカの前には遮るものが何も無い。
 後ろから加持に貫かれる快感と、前からシンジに視姦されているという屈辱。

「ああっ…あはあっ…いやあっ、いやっ」

 言葉としては拒絶、声音としては悦楽。
 高まる声に、加持が動きを早めた。
 抱え上げた足を左手で支えながら、右手でアスカの茂みを撫で回す。濡れて貼り付く柔らかな赤い髪を掻き分け、痛々しく勃起した秘芯に触れる。

「いぁあっ…ひぎぃっ」

 声にならない声。喘ぐというより、悲鳴。
 人の手に触れられる事に慣れていない過敏なそれを、加持は無理やり剥き出して指で摘んだ。

「悪くないよ、良く締め付けてる」

 指の間で捻るように、摘んだ花芯を転がす。
 そのたびにアスカの身体がビクビクと震える。
 何時しか、シンジの視線が意識から外れた。
 後ろから掛かる加持の吐息の熱さと、前を刺激する手と、中心を貫く硬さ。
 それが全てになる。

「ああっ…あはぁっ」


 アスカは、シンジがマンションを抜け出す二時間も前に、既にここに来ていた。加持は二人を同時に誘ったのだった。
 当然、こうなる事は予定されていた事だ。

 シンジが招かれ、自分が知らない加持のセーフハウスへ呼び付けられた事で、アスカは胸を高鳴らせてドアを開いた。
 いつもはホテルで抱かれていた。
 だから、幾つか有るセーフハウスの一つとは言え、加持が普段を過ごしているプライベートな場所へ足を踏み入れる事に、大きな期待が有ったのだ。
 目にしたのはホテルよりも一層そっけの無い部屋。
 ベッドしかない部屋でキスをされ、アスカは当然そのまま抱かれるものと思い込んだ。

 しかし、目を瞑ったアスカの手を、加持は縛り上げる。
 鉄パイプとチェーンと革ベルトが組み合わされた足枷で、Mの字に足首を固定され、ろくな愛撫も無いままに二つのバイブを胎内へと捻じ込まれる。
 そんな苦痛にも耐えた。
 加持にとってはそれが前戯だと思い込む事で。

 けれど、裸で縛められたまま、玩具に犯されるアスカを部屋に残して、加持はリビングへ行ってしまった。
 程なくシンジの声が聞こえ、アスカはひたすらドアの向こうで何が起きているのか、聞いているだけの辛く長い時間を過ごした。
 その挙句に、シンジの視線を感じながら貫かれている。
 混乱した頭が、思考力を失いかけていた。

「ひああっ…あはあっ」

 手足を縛められたアスカの身体が戦慄く。
 首を曲げさせ、加持がその舌を吸う。
 閉じる事の許されない唇の端から、唾液が零れ落ちていく。

「いっ…ひぃっ」

 乳首と秘芯を同時に摘まれ、アスカが喘ぐ。
 絶頂が近い事を加持も悟った。

「いつもより感じてるじゃないか」

 耳を舐めながらそう囁いて、更に動きを早めていく。
 一歩の距離を置いてそんな光景を見せ付けられるシンジのそれが、反り返って震える。
 目の前で乱れるアスカの肌、喘ぐ声。
 汗と愛蜜が匂い立つ。
 大粒の汗を流しながら、抱えたアスカの身体を下から突き上げる加持。
 出入りする怒張。響く水音。

「ああっ……もうっ……もうっ……だめっあああっ」

 ひときわ高く啼いて、身体を震わせたアスカの股間から、透明な飛沫が前に飛んだ。
 それは正面に立ったまま、後ろ手に縛り上げられたシンジの胸にまで飛ぶ。

「いっ…やぁっ…いやあああっ」

 漏れ出すそれを止めようと力を込めた瞬間、絶頂がやって来た。
 二度、三度、まるで射精のように、糸を引いて噴き出す飛沫。
 長く待たされ、激しく犯され、言う事を聞かない身体が失禁する。

「あはぁあっ…いやっ! 見ないで…見ないでぇっ」

 シンジがその声に目を背けようと、身体に掛かる飛沫の濃厚な熱さまで無視出来るはずも無い。
 とどめとばかりに、加持が腰を付き上げた。
 中で弾ける感覚にアスカの胎が応え、更に熱い飛沫を前に飛ばす。

「ああっ……あああっ……あぁ……」

 力を失った身体が、だらだらとそれを零し続けた。
 その下で、加持のそれも脈打ちながら、アスカの中へと欲望の迸りを放ち続ける。

「かっ……加持さん……」

 身体を震わせたアスカが、薄く目を開ける。

「まだ、終わらないさ……夜はこれからだ」


 加持はゆっくりと引き抜き、手足の力を失ったアスカの縛めを解かないまま、ベッドに仰向けに倒した。
 床に出来た水溜りを避けもせず、シンジの後ろ手を繋いだ鎖を解く。

「せっかくだ、三人で楽しもう」

 楽しんでいるのは、加持一人。
 アスカとシンジはただ、翻弄されるばかり。
 そんな事は分かっていながら、加持は更なる高みへと、乱暴に二人を追い立てていく。

「いやっ…やめてよっ」

 シンジの身体がアスカの上に投げ出される。
 その肌の熱さに、アスカがたじろぐ。
 燃えるように、熱かった。
 目の前で嬲られるアスカの肌に、シンジに巣食う獣が目を覚ましていた。
 それでも加持は、シンジの縛めを解く事はしない。
 後ろ手に縛られ身体を支える事ができないシンジを、加持が持ち上げて更にアスカと密着させる。

「なっ…加持さん」
「遠慮するな。初めてじゃないんだろう?」

 確かに、アスカとシンジは既に身体を重ねている。
 けれどそれは、睦み合いなどではなかった。
 むしろ喧嘩に近い。
 傷付け合い、汚し合い、相手を貶める為のそれだった。

「考えるな」

 戸惑うシンジの硬く尖ったそれに手を沿えて、アスカの中へと送り込む。

「あっはぁっ」
「うっ…あっ」

 たった今絶頂を過ぎたばかりのアスカの肌が、熱い猛りを受け入れて震える。
 熱く濡れ、締め付けてくる感触に、シンジも震えた。

「か、加持さん」

 身体が順応しても、頭は付いて来ない。
 加持に抱かれる為に訪れたこの場所で、アスカと重なる。
 それをさせているのが加持だという状況に、シンジは混乱した。

「だから考えるなって。感じて居れば良い」

 二人が深く結合したのを確かめると、加持はアスカの足を解いた。
 鉄パイプと鎖がジャラリと鳴りながら床に放り出される。
 そしてアスカの細く長い足をシンジの腰へと回し、腰の後ろで再び枷に結び付けた。
 後ろ手に捻り上げられたシンジの手首も解き、アスカの首の後ろで縛める。
 アスカの手も解いて、シンジの背中を抱かせる。
 一分の隙も無く重なり合う、二人の肌。
 もはや、誰かの手を借りなければ身体を引き離す事も出来ない。

「どうだい、悪くないだろ?」

 二人は互いの顔を見る事が出来ない。それほど密着していた。
 シンジの頭越しに、アスカが加持の顔を見た。

「お楽しみは、これからだ」

 その顔は、楽しんでいる笑顔などではなかった。
 むしろ、苦痛に歪んでいるような。
 加持は後ろから二人に近付き、シンジの膝を深く曲げさせる。
 丸く突き出た尻に掌を這わせ、冷たく滑るローションを垂らした。
 濡らして滑らせるためのそれを、一本丸ごと空ける。
 シンジの股間を伝ったそれが、アスカの身体にまで垂れていく。

「かっ…加持さん…やめてっ」
「止めないさ。前から後ろから、だよ」

 既に一度穿たれていたシンジのそこは、持ち上げられて自然と口を開いた。
 溢れるぬめりを掬い取り、撫で付ける。
 肌を滑る感触に、ひりひりと震える虚ろな穴。
 両手を尻に添え、押し広げながら入り込む。

「あっ…あああっ」

 荒く喘ぐシンジの口元は、アスカの耳に密着する。
 そしてアスカの中に入り込んだシンジのモノも、後ろから与えられた刺激に震えて膨れ上がる。
 加持は激しく打ち付けるように、シンジに突き立てたモノを前後させる。
 当然、アスカとシンジの繋がった場所も、その勢いに押されて揺れ動く。

「二人とも、良い眺めだ」

 手足を絡ませ合ったまま縛り付けられたシンジとアスカ。
 どちらの身体も細く、見下ろせば痛々しい。
 その二人をまとめて加持が貫く。
 シンジの中で前後し、十分に威きり立ったモノを抜き出して、今度はアスカの後ろを伺う。

「いやっ、やめてっ!」
「嘘吐くな。後ろでも感じるようにちゃんと教えてやったろ?」

 アスカの中に、既にシンジが入り込んでいる隣に、加持のモノが入り込んで行く。
 薄い肉壁一枚を隔て、二つのモノが擦れ合う感触をシンジは味わった。
 無論、アスカも胎の中でそれを感じる。
 どちらのモノを感じているのか、区別する事などできない。
 いつもであれば一方は冷たいツクリモノだ。今日は違う。
 どちらも熱い血潮の通う、脈打ち息衝くそれだった。

「ああっ…あひぁっ」

 動き始めた加持の与える刺激に、アスカが喉を反らせた。
 その首元にシンジの唇が触れる。

「ちゃんとしてやれ。アスカは顎の下が感じる、耳朶も敏感だ」

 髪を掴まれたシンジの唇が、アスカの首に押し付けられる。
 動いている加持の腹に後ろから押される格好で、シンジの身体もアスカの上で前後した。
 二つのモノを受け入れたアスカの肌は、何処に触れられても鋭く反応する。

「あ…アスカ」

 耳元で喘ぐアスカの声に、シンジが我慢出来なくなった。
 白い喉下に、噛み付くような口付けを与える。
 吸い上げれば、それに応じて震える背筋の戦慄きが、アスカの中まで響いてくる。

「そうだ、それで良いんだ」

 アスカに愛撫を与えた褒美とばかりに、加持はシンジのうなじを噛んだ。
 シンジは後ろの生え際がひどく敏感だった。
 熱い舌に舐められ、硬い歯に齧られて、痺れるような震えが走る。

「んっあっ……あはっ」

 アスカの喉元に、溜まらず漏れたシンジの熱い吐息がかかる。
 ただ加持に抱かれた時よりも、より強い快感に、戸惑う。

「ああっ…なっ…なんでっ」

 心でそれを拒もうとしても、身体はもっと欲しがっていた。
 より強い刺激を求める、熱い衝動。
 それを見て取ったのか、加持はアスカの後ろから猛り狂うモノを抜き出し、再びシンジに与えた。

「ぃはあっ…ああっ」

 手でしごかれながら後ろを貫かれるよりも一層、強い快感。
 熱く脈打つアスカの胎内に根元まで入り込みつつ、後ろを乱暴に蹂躙する暴力的な動き。
 シンジは二人の間で、熱い波濤に翻弄される小船だった。
 だから最初に絶頂を迎えたのは、シンジだった。

「だめっ…だめっ!」

 膨れ上がるシンジのモノを感じたアスカが、激しく首を振る。
 けれどシンジには、どうする事も出来ない。
 つい先ほど、加持の手であれほど絞り尽くされたと言うのに、身体の内から湧き起る予感は、絶頂と解放感の前兆。
 迸るそれが、シンジを突き動かす。
 加持の動きに合わせて、シンジは自ら腰を動かしてアスカを突いていた。
 一層激しく、奧深くへ、熱い熱い中心で弾けようとする衝動に、抗う事など出来ない。

「待って! 止めて!! いやっいやああっ」

 逃れようとするアスカが太腿でシンジの腰を押し返す。
 シンジ一人なら、必死なアスカのその力に身体が離れてしまったかもしれない。
 けれど、二人の間に隙間が出来ると、加持は一層強くシンジを押し戻す。
 揺れながらせめぎ合う力のぶつかり合いは、むしろ振幅を激しくさせ、三人を貫いたリズムを高める結果となった。

「ああっ…でっ…出るっ…ううっ」

 シンジが予兆に身体を硬くすれば、それは後ろに繋がった加持にも伝わる。
 だから一層荒々しく、シンジを突き上げる。

「あっ…あうっ……あはあっ」

 シンジの身体が弾かれたように震えた。
 もはや幾らも残っていない精を振り絞ろうと、身体は勝手に折り曲がり、大きく何度も跳ねた。

「あっ…ああっ……ああぁ……」

 溜息のような吐息を漏らして、アスカの中へ流れ込んでいく感触を味わうシンジ。
 出てはいけないと堪えに堪えて、訪れた絶頂感は、格別だった。
 深く息を吐いて、目を閉じてアスカの上に崩れ落ちる。

「もうっ、バカッ!」

 悪態を付いたところで、二人の身体は離れない。
 硬さを失ったそれが抜け落ちる事すらない。
 加持は反応を無くしたシンジから抜き出し、再びアスカにそれを与える。

「あっあっあんっ……いぁっ」

 前に入ったまま力を無くしたシンジのそれを、なんとか押し出そうと力を込めていたアスカの後ろ側を、加持が無理やり押し開いていく。
 奧深くまで穿つ為には、間に挟まったシンジの身体が邪魔になる。
 加持はアスカの太腿を掴んで大きく持ち上げる。
 シンジを上に乗せたまま、アスカの身体が深く曲がる。

「楽しめ、遠慮するな」

 加持の肌に触れようにも、やはりシンジが邪魔だった。
 どうせなら加持の腕に抱かれて果てたいのに、アスカの腕の中にはシンジがすっぽりと収まっている。

「加持さん、普通にして」
「何故だ? 俺は楽しんでるよ」

 そう言って加持が腰を突き上げる。
 あと少しでシンジと共に果てるタイミングだったのだが、終わってしまったから仕切り直しとなった。
 アスカの内はシンジのそれより狭く感じる。
 前に入ったまま抜けていないシンジのそれが、ただでさえ狭い後ろ側をなお一層狭くしているのだ。

「いやっ…ああっ」

 邪魔なシンジを挟んだまま交わる事に抵抗があっても、刺激を与えられた身体は反応してしまう。
 声を押さえようと思うほど、声が上がる。
 異物を締め出そうと力を込めるほど、よりハッキリとその存在を感じる。

「素直になれよ、アスカも」
「だって…あっ…ああっ」

 頭では拒絶していても、身体は異常な興奮状態にあった。
 重く圧し掛かるシンジの肌は、相変わらず熱い。
 それどころか、目を覚ましていないのに、隣で激しく動く加持のモノに刺激されて、再び硬く張り詰め始めてさえいる。
 二つのモノが膨れ上がると、アスカの胎は限界だった。
 前後を同時に刺激される快感が強まると同時に、逃げ場を失った胎内の水分が、再び出口から漏れ出そうとしていた。

「いやっ…ああ…またっ…あああっ」

 今度は、そちらの出口はシンジの身体によってぴたりと塞がれていた。
 二人の肌の間に零れたそれは、肌を伝ってアスカの腹の上から胸に向かって逆流してくる。
 そして、胸の間を濡らす熱い感触に、シンジが目を覚ました。

「……あ、アスカ」

 言い訳のしようも無い。自分を濡らしたそれはシンジの肌も同じように濡らしているのだから。

「バカッ、寝てれば良いのよ、アンタなんか」
「だって」

 身体を離そうにも、シンジの背中は加持が押さえつけている。
 目を覚ました事に気付いた加持は、シンジの後ろに指を差し入れた。

「あ…あつっ」
「いっ、いやよっ」

 後ろを押されて、またシンジのそれが硬さを増す。
 一体何度果てれば萎えるのだろうか?

「加持さん、もう許して」

 涙声のアスカ。
 声にならないシンジ。

「何故だい? 今度は三人で終わろう」

 底無しの体力と言えば、加持こそがそうだ。
 二人まとめて貫いて、ずっと動き続けている。

「どっちで終わりにするか、決められないな」

 加持はアスカから抜き去ると、すばやくシンジへと移った。
 そして数度、腰を振ると、またアスカへと戻る。
 それを繰り返した。
 そのたびに、アスカとシンジは代わる代わる声を上げる。
 初めのうちは代わる毎に強張ったように感じられていたそれが、慣れて来たのか柔らかになる。

 意識して居なければ、もうどちらに入れているのかの区別すら付かない。
 ただ機械的に動き、定期的に交代する。
 加持が果てるまで付き合わされた二人が、何度果てたのか、加持はもう意識しなくなっていた。


 目に映る光景も、耳を打つ二人の悲鳴に近い喘ぎ声も、色々入り混じった濃い匂いも、どれもがリアリティを失っていく。
 それぐらいに、没頭した。
 そして、加持が待っていた瞬間が、近付いていた。

 何も考えなくても良くなる瞬間。
 もっと感じようとか、もっと感じさせてやろうとか、そんな事を意識しているうちはまだ、入り口だ。

 頂点では、真っ白になる。
 思考が、意識が、全てが純化されていく。
 出口を求めて走る流れが、そのまま自分自身の全て。
 そんな境地の果てに終わるのが、理想だった。

「フィニッシュだ」

 そう叫んで激しく動いていたとき、どちらに挿入れていたのか、覚えていない。
 ただ二人の声が遠くに聞こえた。
 否、自分自身の声すらも。
 快感かと言われれば、それもあやしい。
 快感を快感として感じている時は、まだ冷めているのだから。

「終わりにしよう」

 加持は既に、一本の灼熱の槍だった、
 火花を散らし触れるもの全てを燃え上がらせる、赤熱した鉄槐。
 水に漬ければジュウと鳴って水蒸気を吹き上げるような、鍛えられた鋼だ。
 自身も燃え上がり、火花となって果てる時。
 初めて全てが忘れられる。
 初めて全てが許される。

 けれどそれは、一瞬だけの幻想。
 弾けた刹那、余韻も残さず消えてしまう幻。
 そしてまた、その一瞬を求めて新たな罪を重ねる。

 それが、加持リョウジという男だった。





 アスカが目を覚ました時、シンジと二人で狭いベッドに寝かされていた。
 汚れたはずのシーツは取り替えられ、二人の肌も拭き清められている。
 窓に下がったブラインドの隙間から、朝を迎えようとする空の色が透けて見える。
 今が何時なのか、そもそも加持は何処へ行ったのか。
 考えようにも頭の芯に真っ白な疲労が詰まっていて、まともに思考が働かない。

 その時、玄関の扉を開ける音が聞こえた気がして、考えるより早くアスカは飛び起きた。
 走ってリビングを抜け、今まさに閉まろうとしている玄関の扉を掴む。

「加持さん!?」
「起こさず抜けようと思ったんだがな、気付かれたか」

 裸のままのアスカに対して、加持はとっくに姿を整えて何処かへと立ち去る所だった。

「このフラットの鍵だ、お前にやる。好きな時に使えば良い」

 腰に下げた鍵束から二本、同じ形のキーを抜いて、加持は少しすけたドア越しにアスカに手渡した。

「え!? 加持さんはどうするの」
「見ての通り此処にはもう仕事用の道具は無い。余所へ越した」

 そのまま出掛けようとした加持の腕に、アスカが縋り付く。

「待って、私も行く」
「無茶を言うなよ」

 同じ扉が幾つも並ぶマンションの通路。
 全裸のアスカがドアから半分身を乗り出して、加持の腕に縋り付いている姿は、誰が見ても尋常ではない。

「帰って来ないつもりなら、引っ越した先を教えて」
「それはアスカの頼みでも言えないなぁ。俺みたいな稼業にとって、セーフハウスは命の次に大事なモノだよ」
「なら、どうしてそれを『やる』なんて簡単に言うの!?」

 やはり、アスカは頭の回転が速すぎる。子供だからと言って、嘘を吐いて誤魔化せる相手では無いのだ。

「合い鍵が有る、もう一つはシンジ君に渡してくれ。辛い事から逃げ出したくなったら、何時でも此処に逃げて来い。出来れば、二人でな」
「……加持さんは、もう私達を……」
「強くなりたければ、俺なんかに頼ってちゃダメだ。シンジ君と二人なら、きっと大丈夫」
「そんな……そんなの無理よ。加持さんでなきゃっ」

 声を張り上げるアスカに、加持は周りを見回した。
 同じマンションの住人が出て来たら、警察に通報されても不思議ではない光景。
 一歩ドアに詰め寄り、アスカの姿を隠すように塞いだ。

「相手は誰でも良いのさ。人生ってのは、一人で背負って歩くには重すぎる。だから誰かの肩を借りる。方法はもう教えた……ちょっと間違ったやり方かも知れんが」
「もう帰って来ないの?」
「さあな、運が良ければまた出会うさ。その時は、きっと今よりずっと、良い女になってる。そうだろ?」
「加持さん……」

 アスカの手が、手渡された合鍵を握り締めた。
 その手に涙が零れて弾ける。

「捨てられたみたいに泣くなよ。俺はアスカの人生を背負い込んだ覚えは無いぜ。相手はこれから見つけろ」
「じゃあなんで、加持さんじゃダメなのよ!?」
「ミサトによろしく言っておいてくれ。仕事が有るんで、もう時間切れだ」
「待って!」
「裸で廊下に飛び出す気かい?」
「っ!! でも……」

 手を振ってドアの前を立ち去る加持に対して、アスカが迷ったのはほんの一瞬だった。
 全裸で、裸足で、赤毛の少女は加持の腕に追い縋る。

「やっぱりダメ、行かないで」
「おいおい、アスカ……誰かに見られたらどうする」
「じゃあドアのこっちに来て、閉めればいいじゃない」
「やれやれ、無茶をする」

 しょうがないと首を振りながら、加持はマンションのドアを開けて、中へと戻った。
 そのスーツの袖を、アスカはしっかりと握って離さない。

「今加持さんの手を捕まえなかったら、私きっと一生後悔する。そんなのイヤ」
「しょうがないな……服は寝室だろ」
「取ってくる、待ってて」
「待てないんだよ」

 加持はアスカをひょいと持ち上げた。
 靴も脱がないまま寝室まで運ぶ。
 ベッドの上ではまだ、シンジが寝ていた。
 加持は服を拾おうとするアスカの後ろから口枷を噛ませた。

「んんっ!」

 叫ぼうとするアスカの言葉は、もちろん声にならない。
 そのまま後ろ手に手錠を掛け、天井から下がる鎖を繋ぐ。
 そして、ベッドの上に、口枷と手錠の鍵を放り出す。

「シンジ君が目を覚ましたら、外してもらえ。風邪引くなよ」

 アスカの身体に毛布を一枚巻き付けて、加持は部屋を出て行く。
 手枷を外そうと暴れ続けるアスカの声にならない声にも、加持は決して振り返らなかった。

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制作・著作 「よごれに」けんけんZ

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