青森八甲田編

青森温泉めぐりの旅、まずは八甲田周辺の名湯をめぐります


ランプの宿 青荷温泉

いろいろ観てまわって、宿に着いたのは夕方ぐらいだっただろうか‥‥。玄関を入ると何か薄暗く、油の匂いがかすかにする。ここはランプの宿として知られる青荷(あおに)温泉。部屋はやや狭く、ランプがひとつ吊り下げられているだけだ。しかし、薄暗いランプの灯りも、しばらくすると目が慣れてくる。壁には貼紙が‥‥ 『まんず茶ッコでも飲んでけェ!「ね?」ねばデンドコさ取りに来いへェ‥‥』 おそらく分かりやすく言えば『さあさ、お茶でも飲んでくださいな。「ない?」それなら台所へ取りに来てくださいな‥‥』といったところだろうか。

明りはランプだけ

お茶を飲んでひと息ついたところで、さて風呂だ。何はともあれ、露天風呂をcheck! 渓流沿いの露天岩風呂は、茅屋根がかかった造りでなかなかいい! 川に向かって開けた一方は、まるで絵を見ているようだ。また、すぐ裏にある、あずま屋風の龍神の湯も渋い! どちらも混浴だが、女性専用の時間もちゃんとあ る。夕暮れになると灯されるランプの明りは、柔らかいぼんや りとした光で、趣きある風呂を幻想的に演出する。

湯気の向こうには仙人、ならぬ温泉通の姿が

この宿、夕食もいい。「いい」というのは決して「豪華」というわけではない。ランプの灯りが暗くて、何を食べているかよく分からないのだが、地のものをうまく調理している。箸先にひとつまみすれば、酒もすすむ。この日は夕食で気のあったメンバーと、さらに飲み直した。友人への土産の酒もこの晩、消えてなくなった‥‥。

この宿のいいところは、何が売りかをしっかり分かっていることだ。人は贅沢を求めてこんな山の中に来る訳ではない。電気のない不便さも、また味わいのひとつでなのある。的をしぼったサービス、そしてその割に高くはない宿泊費。いい宿だ。あとはこれ以上俗化しないことを祈るのみ。

栓を開けてしまった土産の酒


木立の中の露天風呂、そして奥入瀬 (おいらせ)渓流へ

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