玉川温泉
ここは玉川温泉の駐車場、なにか異様な雰囲気が漂う。もう何日もこの場所に停まっている‥‥、そんな車がたくさんいる。ここで寝泊まりしながら、湯治しているのだろう。癌すら直す‥‥、そんな話を聞きつけ、人は集まってくるのだ。私のようなお気楽温泉族とは違う世界がある。
玉川温泉駐車場 玉川自然研究路を歩いてみる。草津温泉のような湯の華採取の湯畑が続く。もちろん強い硫黄臭はお決まりだ。pH1.2、1分間に9000リットルという圧倒的な湯量、文句無しに日本を代表する温泉である。
研究路を歩く人は、みな手にゴザを抱えている。岩盤をやりに行くのである。岩盤? それは先に進むと明らかになる。
湯畑
みな手にゴザを持っている
さらに先に進むと、至る所から噴気が上がる一帯に出る。そこにテントが3つ、岩盤浴用のものだ。この地熱が高いところに各々ゴザをひき、寝転がりながら体を温めるのだ。
「場所によって熱いとこもあっから‥‥」 試しにさわらせてもらうと、確かに温かい‥‥、というより熱い! 柱の根元は硫黄の結晶で黄色くなっている。しかし有毒ガスがたちこめるこの一帯、こんなに近くで寝ていてほんとに大丈夫なのだろうか? テントに入りきれない人は、他のいたるところで、ゴザをひき寝転がっている。
岩盤浴
硫黄の結晶
露天風呂はこのテントと小川を挟んで向いにある。すぐ脇には小道。あんまりオープンなのでちょっと躊躇われる。しかし石影にちょっとした脱衣場があるので、そそくさと裸になり湯舟に飛び込む。
「ここの湯は皮膚にいいんだよ!」先客のおじいさんが言った。白濁した湯で、思っていたよりまろやかだ。しかし周りには真剣に岩盤浴をする人たち、何故か楽しい気分になれない風呂なのである。
岩盤浴と露天風呂
露天風呂
岩盤浴のみならず、宿も人でごった返している。自炊部・旅館部合わせて700名も収容する大きな施設なのだが、とにかく人が多い。フロントでは中年女性が自炊部に入る交渉している。そうこうしている間にも、大型バスからは人が吐き出される‥‥。
宿の売店を覗いてみる。売店に置いてあるのは土産物ばかりではない。い草のゴザ1600円、カラービニールゴザ800円也(こいつはここでの湯治には必需品)。冷蔵庫にはたまごやトマト、ネギ、大根‥‥。自炊に必要な食料品などが揃えられている。他にも『玉川温泉 湯治の手引き』『玉川温泉で難病を直す法』などの本が積まれているところが玉川温泉ならでは。
カラーゴザとい草のゴザ
トマトにネギ‥‥
八幡平周辺の湯は確かに濃かった! 体にしみ込んだ匂い、抜け切るまでには何日かかかるだろう。濃い湯につかりながら思った。東北の湯治文化が、これほどまで認知され続けていたとは‥‥。あらためて温泉文化の奥深さを思い知った気がした。
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