中国に死す_7こんなに違う遺体の扱い

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 日中では習慣や考え方が大きく異なる。トラブルを避けるためには、文化の違いを理解することが大切。とはいえ、その違いを理解する時間的余裕がない場合だって多い。Yさんの家族の精神的ショックを少しでも和らげるため、細心の注意を払わねばならない。

 遺体安置所は、病院とは別経営になっている。あとでちょともめたのが、遺体の引き取り。遺体の保管と運搬とで業者を変えたものだからややこしくなった。遺体安置所は遺体の保管と火葬場までの運搬を業務にしている。今回、北京まで遺体を運搬することにしたが、遺体安置所からすれば、割に合う仕事。ところが、現地で荼毘に付さずに日本へ持ち帰るには、遺体の「輸出」で実績のある北京の業者をつかって運搬したほうが都合よい(現地で荼毘に付すより、10倍以上高額の費用になる)。といっても、保険会社が自分のところと提携している業者を使いたいがためなのだが。はじめから遺体引取りを保険会社指定の業者に任せればよかったのだが、保険会社が病院に着いたのは、亡くなった日の夕方だったからどうしようもない。

 遺体安置所では3つ大きな問題に直面した。まず遺体を安置する部屋、次に遺体周囲の装飾、最後にお線香の問題。中国と日本とでは遺体に対する扱いがずいぶん違う。遺体は、遺族関係者にとって、悲しみの対象ではあるのだが、中国では、本人の死亡を確認するための"物証"のような扱い。ちょうど同じ遺体安置所の別の部屋で、中国人が身内の遺体を確認にきていたが、その場で泣き崩れるような様子は無く、本人の死亡を確認するだけ、という感じだった。中国人にとっては、死亡と同時に霊が体から抜け出すので、遺体はもう、その抜け殻でしかないようだ。

 遺体を安置する部屋も、料金によってさまざま。一番良い部屋を頼んだのだが、それでもがらんとした殺風景な部屋に、遺体を安置するガラスのケースと、垂れ幕があるだけだった。「他に無いのか?」と聞いたら、巨大なタンス式の遺体安置棚を置いている部屋しかないという。「引き出し」の中に遺体を入れておくという。いくらなんでもそれはあんまりだ。

 次に遺体周囲の装飾。ガラスケースに安置する際に、遺体の頭を乗せる枕だとか、掛け布を選ばないといけない。たとえば枕ひとつでもピンキリで細かく値段が違う。びっくりしたのは掛け布。布の中央に大きく「寿」と書いてある。遺体に「寿」はないだろう!遺族が見たらなんと思うことか。聞けば、中国では「寿布」といい、「天寿を全うした」という意味で着けるものらしい。これは「日本人の風習に合わない」から、と説明して断った。

 最後はお線香。これは夕方になって会社の中国事務所から責任者が来てから気づいたのだが、遺体安置所には線香が無い。通訳に頼んで遺体安置所の職員に線香を準備してはもらったのだが、線香は場違いに太く、線香をたてておく場所も無い。あとで知ったのだが、中国人にとって線香は霊を呼び寄せるためのもの。お墓参りなどで自分たちの先祖を呼ぶために、目立つように、霊を呼びやすいように、あんなに太い線香を使う。ところが遺体安置所は、自分の身内以外の霊もたくさんいる。そんななかで線香を焚くなんてとんでもない、という感じらしい。

 夕方になって業者が到着し、未明から翌日にかけて遺族も到着した。私の長かった一日半の対応も、ようやく役割を終えようとしていた。

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