イギリスの救急医療(後編)

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ガラス越しでは、応急処置室に寝かされている娘が、息をしているのかどうかさえもわからない。

検査、応急処置を終えた医師は、駆けつけて来た次の医師たちに経過を報告している。イギリスでは口頭でなく、何でも書面で伝えるのが常識だが、ここでは口頭で引継ぎがされている。いつも見慣れているイギリスとはまるで違って見える。

それからは一晩中、呼吸器系、麻酔、小児科といった医師たちが入れ替わり立ち代わり処置してくれる。決まった主治医という人がいるわけではなく、チームの連係プレーで治療に当たっているようだ。入れ替わるたびに、私たちにどういった容体なのか、どういう処置をしているのか、という説明を簡単にしてくれる。最後に"娘さんの状態はだんだん良くなっていますよ"と、必ず付け加えてくれた。

朝になると、呼吸も普通になり、後は麻酔から覚めるのを待つばかりとなった。素人目にも峠は越したように見えたが、医師はまだ、麻酔や、呼吸困難によるダメージを心配しているようだった。

娘の目が覚めたときは、はさすがにほっとした。医師は"どうです、娘さんは?倒れる前と同じ反応を示していますか?"と聞いて来た。が、なんせ、一歳になってまだしばらくしか経っていない。言葉もまだ話せないのに、どうかと聞かれても返事に困るというものだ。見た目には、ぐったりはしているものの、目の動きなどはしっかりしていたので、そう伝える。

熱が下がるまでには少し時間が必要だった。娘は寝間着の前を開けて寝かされている。ベッドには小さな扇風機が回っている。これで熱を下げるという寸法らしい。心配そうな顔をしていると、看護婦さんが来て熱を測り、にっこりしながら"ほら、下がっているでしょう?"という。そりゃそうだけど・・・

しばらくすると、たまたま麻酔か何かの勉強で、その病院に来ていた日本人医師が、様子を見に来てくれた。同じ説明でも、こういう場合、日本語で聞くと安心するから不思議だ。熱の冷まし方がちょっと乱暴にもみえたのでそのことを話すと、「ドイツなど他の国では、氷を入れた冷水で冷やすこともあるんですよ」との返事。「え?じゃあイギリス式でいいです」

次の日には小児科のウォード(一般病室)に移って良いことになった。健康なときには考えもしないが、入院すると、世の中には病気の人がいかに多いかに気が付く。

一週間の後、晴れて退院となった。医者の診察のあと、薬を出してもらった。"では、お大事に"と看護婦が言う。きょとんとしていると、"どうかしましたか?"と聞くので、"どこでお金を払えばいいのか?"と尋ねると、"お金は要らない"との返事。

治療費、薬代、食費、入院費など、すべてがただ。公立の病院が少なく、治療の順番が回ってこない人もいるなどの問題は一方であるものの、これが高福祉国家の実力かと思い知らされた。


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