クリスタルボール

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 どういうわけか占いには小道具が必要だ。亀の甲羅、星座、血液型、カード、花びら、そして水晶玉。

 水晶玉をのぞき込んで、「あなたの未来が見えます」とか言われちゃうと、「本当かも?」と信じてしまいそうになる。

 英国には日本以上に鉱物をありがたがる風潮があるようだ。地底深く眠っていたクリスタルには、よほどの霊力が宿っているに違いないと考えたことだろう。

 科学の発展にともない、水晶も分子式であらわされるようになると、水晶玉のお告げを本気にする人も少なくなってきた。紫水晶(アメジスト)や黒水晶も、結晶化の過程で放射能の影響を受けたり、微量の金属原子が含まれると、ああいう色になるものらしい。

 信じる人が減った現在でも、会話にはよく水晶玉がでてくる。「ねえ、今日スティーブは約束通り来ると思う?」「ちょっと待って。う〜ん、僕の水晶玉に見えてきた。ああ、パブで飲んでるよ。今日は来ないね」。と、こんな感じ。"占う"人、聞いている人、話題に上っている人、それぞれがちょっとずついい加減なときに使える。

 あるいは、予測できない事態であることを、さらりと言いたいときにも便利だ。「いつまでこの状況が続くかだって?それを言いあてるにはクリスタルボールが必要だね」。実際に水晶玉があったとしても、占う気などはじめから無い。

 ロンドンのカムデンタウンというところで、珍しい水晶を買った。"チタンクリスタル"だと説明されたその水晶は、なるほど柱状の結晶の表面が金属の色をしている。「これは珍しい」と思ってつい買ってしまったのだが、ある日うっかり落としてしまった。

 割れたところを見ると、表面の薄いメッキ層の下から、どこにでもある白い結晶が見えていた。


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