デザートこそすべて

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スコーン
スコーン

 イギリスの食事では、デザートが確固たる地位を保っている。デザートなんて、食事のおまけ、と軽視しがちな日本人からすれば、驚嘆すべき扱いだ。

 普通のイギリス英語会話では、"dessert"より"sweet"(名詞)と呼ぶことの方が多い。お菓子なんかも"sweet"に入る。"sweet tooth"は大の甘党のこと。

 イギリスの、とある日系企業に勤めていた私には、歳が若い、というだけの理由で、歓迎会、送別会の幹事役が良くまわってきた。ある時、カーディフ北東の外れ、セントメロンズのホテルでの送別会をアレンジすることになった。ホテルの大ホールを借り切っての送別会だ。

 予約を入れ、メニューの調整も、ほぼ終えた。最後にホテルの担当者が、

 "それではミスター・マエダ、デザートメニューはどれになさいますか?"

 私の計算では、もう既に予定していた金額に近づいていたので、"デザートは要りません"と答えた。

 "え?"担当者は、明らかに当惑している。"予算がもう無いので"、と私は正直に理由を告げると、受話器を置き、仕事に戻った。

 ところが5分と経たないうちに、さっきの電話の主からまた電話が入り、"デザートは要らないとおっしゃったのですね?"と確認があり、さらに5分後に、今度は彼の上司らしい人から電話があった。

 "ミスター・マエダ、デザートは要らないとおっしゃっているようですが、本当ですか?"

 さすがの私も、いいかげんにして欲しいと思い始めた。たかがデザートじゃないか!。年配らしい彼はさらに話しつづける。

 "当ホテルは、永年、お客様に満足していただけるよう、勤めてまいりました。"

 おいおい、ホテルの歴史を話し始める気か?

 彼のイギリス人らしい、遠まわしな話を簡単にすると、イギリスの食事ではデザートが重要な要素であり、食事に来てもらったお客にデザートも出さなかったとなれば、ホテルの沽券にかかわる、という事らしい。

 だけど予算が無い。チップの分も残しておかなくちゃいけない。5人、10人ならまだしも、大人数になると、デザートとはいえ、合計では結構な金額になる。

 すると彼はしばらく考えたあと、

 "タダなら召し上がっていただけますか?"

 もう、一歩も退かないぞ!という構えである。

 こうして、送別会は始まった。聞いてわかるはずも無い日本語でのスピーチを、壁際でじっと聞いて待機しているスタッフの態度といい、料理や飲み物を出す絶妙なタイミングといい、例の「タダの」デザートにいたっては、何種類ものアイスクリームから、気に入ったものを選べるなど、最後の最後まで、彼が言っていた"お客様の満足"を十分感じるようなサービスであった。

 送別会の後、支払いのときには、デザート代を十分上回るチップを置いておくことにした。

 すっかり忘れてたけど、"デザートを無料にしたことは、くれぐれも他言なされませぬよう"と念をおされてたっけ。私っておしゃべり?


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