紳士は扉を開けて待つ

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 イギリスのドアはやたらと重い。イギリスの扉は、必ずと言っていいほど、ばねで自動的に閉まるようになっていて、その分、扉を開けるには力が必要になるからだ。

 イギリスでは他の人の為に、扉を開けて待っておくのがマナーになっている。自分の後ろに、そこを通ろうとしている人がいれば、自分は扉を開けて待っていて、他の人を先に通してから、自分が通る、という具合だ。

 たとえばあなたが男性で、女性があなたの後から来て、そのドアを通ろうとしていたとする。間違っても自分が先に通り、次の女性が来る前に扉を閉めてしまったりしたら、あなたは、常識が無い人と思われるだろう。

 簡単そうだが、慣れるまでは結構難しい。かく言う私も最初は失敗ばかりだった。さぞ、常識を疑われたことだろう。どんなに急いでいても、扉を開ける瞬間、後ろを振りかえって誰か来ていないか確認しなければならない。

 さらに後から来た人を先に通すため、"After you"=「私はあなたの後(に通ります)」と声をかけることになっている。相手は素直に"Thank you"と言って通ることもあるが、たまに"No. After you"と、こちらに先に通れと言うこともある。こうなると、「どうぞお先に」「いやいや、あなたから」と言った具合に、延々と続いてしまう。

 公共の建物の玄関など、まれに、扉が二つ連続して設置されている場合がある。一枚目のドアを開けて、通してあげた相手が、お返しとばかり、次の扉を開けて待ってくれたりする。こういう場面では、にっこり笑って通ってしまおう。

 極めて非効率的に思えるかもしれないが、扉を開けて待っていることが、良識ある人間であることの表現になっているのだから、しかたが無い。

 男性が女性の為に重い扉を開けて待っている。今時のイギリス女性で、扉を開けるのに不自由なほどかよわい人はまずいない。にもかかわらず、淑女の為に扉を開けて待つのは紳士のたしなみであり、女性は自分が先に通ることで、間接的に相手を紳士として認めることになる。

 相手を認め、正当に扱うことが、基本だ。


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