あこがれの卵ご飯

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 あつあつのご飯に、卵を割り入れて、おしょうゆを少々加えてかき混ぜて食べる。簡単に作れて、栄養があって、その上おいしい。

 ところが、イギリスではこうは行かない。一般に生卵をそのままでは食べないからだ。

 なぜ食べないかと言うと、サルモネラ菌に汚染されている可能性があるからである。

 たまに狂牛病で騒がれるイギリスではあるが、実際に住んでいるものにとっては、狂牛病より、この卵のほうが問題が大きい。"狂牛病がこわくて肉が食えるか"と、ほとんどの人が全然平気なのに対して"生卵が平気で食べられます"というイギリス人は皆無だ。

 70度以上で数分加熱されると死んでしまうこの菌は、卵の殻の表面に付着しているらしい。生卵が危険だとされるのは、卵を割るときに、殻についていた菌が、卵の黄身や白身に入ってしまうことを危惧しているからである。日本の卵にもサルモネラ菌が付着しているものが、ごくわずかだが存在するという情報もある。イギリスの卵が、日本のものに比べて、極端に危険なのかどうか、実際の所は分からないのだが、"卵は生で食べるようなものではない"という"常識"はイギリスでは広く信じられているようだ。

 国によって、"衛生的"というものについてのものさしはずいぶん違う。たとえば、ゆで玉子をわざわざスプーンの柄の所で苦心して割っている同僚に"何で?"って聞くと、"hygiene(衛生)だから"という返事だった。日本人の私には、そのスプーンを洗うときに、洗剤で洗ったまま、すすぎもせずに乾燥させるものだから、白く洗剤の跡が残っていたりするほうが、衛生的でないような気がするのだが。

 試しに、出張で日本に来ていたイギリス人と居酒屋で飲んでいたとき、"日本のものは何でも食べられる"というようなことをいうものだから、店の主人に特注で(と言ってもまったく普通の)卵ご飯を作ってもらったが、さすがにこれだけは勘弁してくれと言っていた。

 これはアメリカ人の話だが、すき焼きを食べさせた所、取り皿に入れておいた生卵をどうするかと見ていたら、しばし考えた後、卵をすき焼きなべの中に入れて、「具」にしてしまった。

 ウェールズ人の友人によれば、生卵を食べても必ず食中毒になるわけではなく、体調が悪かったり、老人や子供が食べたりすると危ない程度だ、という話なのだが、わが家でも、卵を生で食べることはしなかった。

 よく「日本に帰ったら一番先に食べたいのは何ですか」という質問を受けたものだが、答えはお寿司やすき焼きではなく、「卵ご飯」だった。


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