v 働くイギリス人

働くイギリス人

イギリス(PC)>エッセイ(携帯)職場>働くイギリス人

 イギリス病という、あまりよくない言葉がある。今ではそんな事はないのだが、過去、福祉が行き届き過ぎて、最低賃金よりも、失業手当の方が高いうような時代があり、働くよりも失業している方が収入があるものだから、働かないといった風潮があったようだ。

 日本では比較的均質な教育がなされているせいか、大抵の日本人は向上意欲を持って仕事をしていて、放っておいても一所懸命働く。まあ、文句をいいながらも働いている人を勘定に入れての話だが。よく日本人が、勤勉だといわれるのはこの辺にあると思う。

 これに対しイギリス人は日本風の教育をされていないため、日本人の勤勉さを求めても不幸な結果に終わるだけだ。特に結婚している男性は、日本人の男性のように仕事だけの人生を送れない事情がある。もちろん大抵のイギリス人は、会社人生なんて送りたいとも思わないと思うけれど。これが「イギリス病」なる言葉を生み出したのかも知れない。

 ただ、皆が皆働かないかといえばそんな事はない。幹線列車インターシティーの中で、パソコンを開いて急がしそうにしているビジネスマンもいれば、仕事中毒が過ぎて会社に損害を与えたと、裁判ざたになるケースだってある。肝心なのは、向上意識が強い人と、現状で満足している人のふた通りの生き方があるということだ。これは良い、悪いの話ではない。

 さて、あなたが「不幸にして」イギリス人と一緒に働くことになったらどうすべきか。「やっぱりイギリス人は働かないよ」と相手のせいにするのも簡単で良いのかもしれない。

 イギリス人と一緒に仕事をしてみて大抵の人がまず感じるのは、言い訳の多さだろう。とにかくトラブルがあったらまずは"自分のせいではない"というための言い訳が長々と続く。「もういい、俺が自分でやるよ」と言いたくもなるだろう。

 こういうときにはどうするか?言い訳が出来ないようにすれば良いのである。ジャンケンではないが、グーよりもパーが強い。イギリスでは言い訳(口頭)、はレター等の文書に弱い。「書いたもの」には日本人が感じるよりも強い力がある。これを使わない手はない。

 イギリス人と仕事をするときのコツは、一にも二にも文書でやり取りすることだ。イギリスで働き始めた時は、仕事で頼むことをいちいちメモにして渡していた。ところが、しばらくすると"そのメモを無くしちゃった"という言い訳が出てくるようになった。それで面倒でも毎回コピーを取ることにした。メモには必ず日付を入れなければならない。何日に頼んだか。何日までにやってほしいのか。これがないと仕事を頼んだことにならない。そうしているうちに「電子メール」という便利なものが出てきた。これも元々は西洋人が考えついたものだから使わない手はない。メモは電子メールに変わり、"メモ無くしちゃった"の言い訳が永遠に使えなくなった。たとえ机が隣でも、メールで仕事の依頼をした。これは(仕事をお願いする側の人にとっては特に)便利なツールだ。相手や自分が忙しくて仕事中は話が出来ないことだってある。

 レターを出すときも日付を入れることはもちろん、文末に"以上のことでご質問があれば折り返し連絡ください。"、または、"以上の件でご都合が悪ければ何月何日までに連絡ください。"という言葉を必ずつけ加える。連絡がなかったら、"内容に関しては、誤解の余地がなく理解された"、または、"内容に関して約束が実行されるのに何の不都合もない"という証拠であり、あとで約束が実施されなかった場合言い訳が使えず、こちらはとても有利な立場になることが出来る。

 それでも、言い訳をしてくる人がいる。徹底した教育と訓練のたまものであることには疑う余地はないであろう。言い訳も単に人のせいにするものから、「う〜ん、これは素晴らしい言い訳だ」と感心させられるものまである。あまりにも素晴らしい言い訳には"今のは5点"とか言って、ノートに書き残すようにしていた。

 因みに仕事の関係先に謝らなければならないような事態が発生したときは、いつもイギリス人の同僚に下書きを頼んでいた。"すみません。私のミスです"なんて言葉を一切使わずに、それでも一応は謝っていると言う素晴らしい内容だった。最近よく使われる、日本語の「遺憾です」と、謝っているのかどうなのかはっきりしない言葉のすごいヤツといった感じだ。

 良い先生が大勢いたため、イギリスを離れるころには、イギリス人に頼まなくても上手な言い訳のレターが書けるようになっていた。


イギリスウェールズ目次に戻る KeriMaedaWales