ISO規格

イギリス(PC)>エッセイ(携帯)制度・教育>ISO規格

 ここ数年で日本の製造業に浸透してきたISO規格、品質管理のISO9000シリーズ、環境のISO14000シリーズなどは、元々は当然のことながらイギリスを含むヨーロッパの規格であった。ヨーロッパでは文書化されたプロセジャー(手順)に従って仕事が進められる。採用した人がいつまでも同じ職場にいるのが普通の日本の会社と違って、今一緒に仕事をしている人が来月にはいないかもしれないような環境では仕事のやり方を「この件については、だれだれさんが詳しい」なんて人任せにはしていられない。極端な話、その担当者がいつ会社を辞めても、経験のない次の人が来たときに最も早くその仕事を引き継いでもらうためには、仕事の手順の文書化は避けて通れない。

 イギリスでの勤め先で、ちょうどこのISO規格を導入しようとしていたところに居合わせることになった。確かに大変は大変だった。文書化されているはずのルールが欠落していたり、ルール自体に矛盾があることもあった。ISO規格導入により、不明瞭だった部分が改善され、会社内の各職場の仕事のやり方が、一冊のマニュアルになることにより、他部署に何らかの働きかけが必要になったときにでもどういう手順を踏めばいいのかが明確になった。一番助かったのは新人を採用したときだった。それまでは先輩社員が数日間をかけて各職場をつれて回って、仕事の進め方を説明しなければならなかったが、ISO導入後はマニュアルを読んでもらうことにより、仕事を覚えてもらうまでの期間を短縮できるようになった。

 日本の会社の仕事のやり方は、結構、外国企業の研究対象になっていることがある。

 積極的に日本の良い所を取り入れようとしている会社も多く、実際に成功している例も多く見かけた。もう一つつけ加えると、日本式のやり方を取り入れて成功している会社は、必ずしも日本人を雇っているわけではない。日本人を、それも複数雇うと、日本人間だけで仕事をこなそうとするため、うまくいかないからだ。その代わり日本には足しげく通っていた。日本人は外国人に非常に寛大であるのも手伝ってか、彼らの研究成果は目をみはるものがあった。

 日本の会社のやり方は、必ずしも善意で研究されているとは限らない。弱点も研究されている。ISO規格導入。それから得られる素晴らしい改善はあるにせよ、今までの仕事のやり方をヨーロッパの型にはめ込む事に変わりはない。物事が決まっていく過程がそのつど「合意」という形で進められ、変化に臨機応変に対応できることを特徴とし、その分「文書化」と聞いただけで、こちこちになってしまう日本人の仕事の能率を下げるには、こんなにうまいやり方はない。

 ISOはイギリスでも早くから導入されてきた。今までやっていた仕事そのままだから、イギリス風の仕事さえやっていれば、導入なんて言うのも比較的簡単だった。関係会社で"うちもISO取りました"と言ってくる会社も多かった。品質は一向に上がったような気配はないが、仕事が遅くなることもなかった。

 "ISO取りました"と言ってくる企業の中には日系企業もあった。納期の話しになると「いやー、ISOのルールに添わなければならないのであと2カ月遅れます」

 技ありと言った所か。


イギリスウェールズ目次に戻る KeriMaedaWales