ステーキとからし

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 イギリスのからしは大きく分けて2種類ある。イングリッシュマスタードと、フレンチマスタード。見た目で言うと、日本でおなじみのあの黄色いからしはイングリッシュマスタード、それに対して色が濃い、茶色のからしはフレンチマスタードと呼んでいる。

 パブ、あるいはレストランに行くと、テーブルに塩、コショウと並んで各種からしが入った容器が置いてある。イングリッシュマスタード、フレンチマスタード、そしてなぜかケチャップ。もっとも、ケチャップは料理と一緒に出されるイモのフライ"チップス"にかけられることが多い。本来、チップスにかけるべきものは、酢と塩であるのだが、ケチャップでも良い。

 ここでは、からしについて一言述べてみたい。からしは何に付けるのかというとステーキにだ。日本のからしに比べるとそんなに辛くない。

 私がはじめて外国で食べたステーキは、新婚旅行で行ったオーストラリアのものだったが、何の味も無く、硬いし、おいしいとは思わなかった。きっとテーブルにはからしがあったのかもしれないが(英連邦だし)、その時はステーキにからしを付けるということは考えてもみなかった。

 テーブルにつき、ステーキを注文する。"How would you like your steak?"とか聞いてくるので好みの焼き方を告げる。ちなみに、この質問は、「あなたはご注文のお肉を、どのように料理してほしいですか?」という質問なので、「お肉はとっても好きです」なんていう答えをしてはいけない。

 ファストフードを除いて、レストランでは例外無く焼き方を聞きにくる。焼き方はレア、ミディアムレア、ミディアム、ウェルダンの順に火が通っている。聞きにこないレストランがあれば、次からそこには行かないことだ。

 グルメな国になるほど、食品の仕上がり温度は低くなる、という傾向があるらしい。ステーキで言えば焼き方が薄くなる。日本や他のヨーロッパ諸国に比べると、イギリスは焼き方が強い。たとえば、日本でいつもウェルダンで注文している人は、ミディアムぐらいで良い場合もある。

 世情によって焼き方の傾向も変わっている。ドイツでは、衛生的な理由で、仕上がり温度を高くするよう、政府の指導があったそうだ。イギリスでは反対に傾向として温度が低くなる方向にある。

 もっともイギリスの場合、たとえ同じレストランでも、ある時は炭のようになったウェルダンだったり、「え?ちゃんと焼いたの?」という仕上がりだったりで、いっこうに安定しない。焼き方が気に入らなかったら、やり直すように要求して構わない。

 出てきたステーキの皿にイングリッシュ、またはフレンチのからしを乗せる。両方乗せてもいい。ナイフで肉を切ってはからしをつけ、食べる。

 凝ったレストランに行くと、何十種類ものからしを置いているところもある。さすがにすべては覚えていないが、ごま入り、蜂蜜入り、ハーブ入りなど、口に合うかどうかは別にして各種取り揃えてある。イギリスを訪れることがあれば、ぜひ一度、からしリストを置いているレストランを探してみてください。

 卓越した日本のソース、"焼肉のたれ"の類は、残念ながらイギリスのレストランではお目にかかれない。大根おろしも無い。ステーキにつけるソースの種類は、からしを除いては、日本人からすると物足りないぐらいに少ない。

 ウェールズ人の友人、Aさんに言わせると、"血こそが最高のスパイスだ"、という事らしい。狂牛病なんてなんのその、彼は常に"レア"で注文する。さすがは狩猟民族だ。

 また、"霜ふり肉"はイギリスでは市民権を得ていない。

 肉が硬い、というのは、実はイギリス人自身もうすうす感づいているのであって、まれにステーキを注文する際に冗談で、"ミディアム・ハード・プリーズ"なんて言ったりする。


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