赤信号の渡り方

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 小学校のとき「青は進め、赤は止まれ」と教えられた。その時からずっと、このことは私の中で常識であった。ところがだ。この常識というものは国が変われば変わってしまうからややこしい。

 ニューヨークでは横断歩道以外での道路横断はジェイウォーク(Jaywalk)と呼ばれていて、やってはいけないことになっている。やってはいけない、というのはつまり、ついついやってしまう人が多い、ということだ。

 イタリアで横断歩道を渡るには、やってくる車の運転手の目をにらみつけると良い。「俺を轢くなよ、轢くんじゃないぞ」と。専門用語ではこれを「ガンを付ける」と言う。

 この記事を書いている中国では、交差点に歩行者用信号があることは少ない。はじめて上海に来たのは8年前だが、当時でも自転車よりタクシーが道路上ではばを利かせていた。その時教えられた道路の渡り方は、「隣にいる中国人が走ったら、貴方も走りなさい」だった。

 最近ではどうやって渡るかと言うと、赤信号だろうが何だろうが、車が走っていなければ渡ってしまう、という強引なやり方だ。(あれ?基本的に変わってないみたい?)。だから、渡れるところまで渡る、道路の真中まで進んだ時に車がくればそこで立ち止まる。車が通りすぎればまた渡る、という具合。

 一見無秩序のようでもあるが、慣れとは恐ろしいもので、中国式渡り方も信号待ちはいらないし、好きなときに好きなところに行けるというのは結構便利だと、ついつい思ってしまう。

 イギリスでは、交差点には歩行者信号が付いている。ところが車が来ていなければ赤信号だろうが何だろうが、自分の判断で渡ってよい事になっている。おまわりさんも注意したりしない。場所によっては、ご丁寧にも、横断歩道上に「右を見ろ」とか、「左を見ろ」とかの文字が塗られていたりする。

 イギリスで赤信号を渡るとき、本人の判断ミスで事故にあったら、その人の責任。日本では変な弱者救済的な考え方、つまり、自動車より二輪車、二輪車より自転車、自転車より歩行者が優遇されているような気がする。

 日本では誰がルールを破ったかと同じぐらい、どちらが公道上でより守られる立場の人だったかが重要であるようだ。イギリスでは、ルールを守らなかったほうが責任を負う。

 いろんな人種、別々の価値観を持った人達が一緒に生活しているイギリスでは、いろいろな場面でルールを守る、という事が基本になる。そう言う意味からすると、この赤信号でも渡って良いというのは矛盾しているようでもある。

 ルールの遵守と個人の責任による行動というものが絶妙にバランスしたところ、それが、この赤信号の渡り方にもあらわれているようだ。


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