彼女が会社を辞めたわけ

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 "私、会社やめます。"こういう話は(少なくとも直属上司には)突然やってくる。

 欧米の人の中には会社を転々とする人もいる。と言っても、こういう話の常だが、転々と職を替える人もいれば、まったく変わらない人もいる。アメリカ人の知人に言わせれば、特にアメリカ人の会社に対するロイヤリティーは低いという。

 会社を辞める、転職するというのは、日本ではまだまだリスクと言うか、負担が大きいし、拒絶反応を示す人も多い。「辞める」というのは、その職場に不満があるからという取られ方をすることが多い。

 イギリス人でも理由もなく辞めていく人はまずいない。大抵の理由は、会社の経営に不安がある、将来自分がなりたいポジションがない、昇給が望めない等だ。

 会社を辞めるときの手続きはざっとこんな感じだ。まず会社を辞めたい人は次の就職先を探す。求人がある所に面接にいく。まれだが、先方から話があることもある。ヘッドハンティングだ。とにかく、次の就職先を確保した所で、自分の上司、人事それぞれに提出するレターを書く。"何月何日に辞めます"といった簡単なものだ。"Please be informed that I am resigning this company on ....."というように。くどくどと理由を付けたりはしない。理由は会社側が聞いてくるので口頭で答えればよい。レターには辞める日を書くのだが、イギリスの場合、不文律で一カ月の事前通知をすることになっている。どうせ辞める会社だからといって、一カ月未満で言ってくるケースもあるが、辞めていく人に与える罰則も何もないので、会社から本人が受ける打撃はないが、職場に残った人からは、辞めた後で冷たい仕打ちにあうことがある。イギリス人はルールを破ることにはとても敏感だ。

 一方会社側は、一カ月の間に求人活動を始める。と言ってもよっぽど恵まれている場合を除けば、そう簡単には次の人が見つかりはしない。従って、辞める人の仕事の引き継ぎは、いつ次の人が来てもいいように文書のかたちでなされる。辞めていく人の最後の仕事だ。仕事の流れ自体はすでに文書化されている場合がほとんどなので、その人のノウハウだとか、やりかけの仕事の状況だとかといった事が内容になる。職場に残った人が一旦業務を引き継ぐ形をとる。次の人が採用されると、文書化されたものを持って、引き継ぐ。

 日系企業の場合、日本式のやり方で仕事を進めようとしたために部下が辞めていくこともある。女子社員だからって(ところで女子という言葉自体に「守るべきもの」裏返せば「たいした仕事は任せられない」という意味が含まれてはしないだろうか)本人の希望にあった仕事、ポストの提供が出来なかったり、やるべき教育が不十分だったりすると辞めていく。男性社員でも「まずは下積みから」なんていって、「OJT」と称する(日本だけで通じる)放任教育だけでは、教育程度が高い人ほど不満を大きくさせるだけであろう。

 辞めるのは何もネガティブな場合だけでもない。本人の将来指向と、会社のそれが合わない場合もある。こういうときは残念だが、早く本人の希望にあった職に替わった方が、本人、職場双方がハッピーになれることだってある。

 本人はもちろんハッピーだし、職場の方も、同じグレードでもっとやる気や経験がある人を探すことが出来る。うまくいけば前任者に払っていた給料と同じで、数段上の生産性のある人を採用するチャンスだってある。取られたら取り返すというわけではないが、職場を変わる人が多い(定着率が低い)というのは、反対に良い人材を容易に集めることが出来るということでもある。

 人材が移動しながら、個人と職場双方の能力、生産性が上がっていく仕組み。それがイギリス式なのかも知れない。

 そういう境地になるまでに、私の職場からも10人近くが辞めていった。


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