ひも人生

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 飼い犬に引き綱をつけて散歩している人がいる。これは問題無い。ところが引き綱の先にあるのが犬ではなくて人間の子どもだったらどうだろう。やっぱりびっくりしますか?しますよね。

 自分とは異なる文化を初めて目にしたとき、驚きと同時に一種の拒絶反応を示してしまう。ところが、郷に入っては郷に従え、勇気をもってその"異文化"の中に身を置くことで、初めてその本来の意味を知ることができるものだ。

 子どもは大きくなると親の意思と関係無く歩き回るようになる。這えば立て、立てば歩けと順調に成長しても、いつも楽しいことばかりではない。迷子にならないようにしようと思えば、常に我が子を視界の中に置いておかねばならず、買い物に行ってはバーゲン品にばかり気を取られてはいけないし、ご近所の方との重要な立ち話にも集中できない。

 あなた自身が子供のころ、迷子の危機を幾度となく乗り越えてきたのであれば、今一度、親の愛と自分の強運に感謝すべきであろう。

 イギリス人は日本人より少しばかり合理的な考え方をする。子どもを常に視界に置いておく努力をはらう代わりに、物理的に離れ離れにならないよう、子どもと自分の手首をつなぐ「ひも」を使う。長さはせいぜい1メートルぐらい。これがあれば、子どもも親もある程度の自由がきく。子どもが二人以上でも問題無い。「ひも」は何本あってもいい。

 子どもが誘拐されるという危険は、残念なことにどんな社会にもある。「ひも」はそれを未然に防ぐ自衛手段の一つでもある。


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