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 日本の居酒屋で生ビールをジョッキで頼もうものならジョッキの軽く3分の1ぐらいは泡。一説には泡を多く注いでおいて、その泡が小さくなって細かい泡になってきた頃が飲み頃とか。だから泡は大事。

 ところがイギリスのパブでビールを注文すると、この大切なはずの泡が無い。ワンパイントのグラスには表面張力でもここまで行くかというほどなみなみとビールの液体が注がれている。

 試しにカウンターの中を覗くと、注ぎ手がにこにこしながら、既に一杯になっているグラスに、さらにこれでもかとビールを注いでいる。もちろんグラスに入りきれなくなったビールは溢れつづけている。「ああ、もったいない!」ビール好きなら誰でもそう思う。

 イギリスは最近でこそビールを小瓶で頼み、コップに注がずに直接ラッパ飲みするのが、若い人の間で流行してきているが、本来の姿はカウンターで注ぎ手が一杯ワンパイント(8分の1ガロン=0.568リットル)のコップに、手動式のポンプにのけぞるように体重をかけながら注ぐ、というもの。

 何でも不思議に思ったら確かめずにはいられない性格の私。早速イギリス人の友人に聞いてみた。

 彼の話によると、昔は日本のように泡を残して注ぐパブもあったそうだ。ところが何をやってもいい加減なイギリスのこと、ビールの量が多かったり少なかったりしたのでしょう、ある時ビールの量を巡って裁判になった。結局、パブ側が負けてしまい、その後、他のパブでも、裁判沙汰になるぐらいなら、と、上述の通り、なみなみと注ぐようになったらしい。

 もう一つ考えられる理由として、彼ら独特の価値観がある。

 イギリス人は本当はとってもけちなくせに(けち、というより質素と言ったほうがあってるかなあ)、周りからけちだ、と思われることを極端に嫌がる傾向がある。ビールだけではなく、コーヒー、紅茶をコップに注ぐのにも、なみなみと注ぐ。こんなのでもうっかりお湯の量が少なくて、けちだと思われたくないという心理が働くらしい。

 パブのビールについても、どっちかというとこちらの方が本当の理由のような気もする。

 さて、もしあなたが不幸にしてけちな注ぎ手に出会い、ビールの量が少なかった場合、どうしたら良いでしょう。

 こんな時は"トップアップ・プリーズ"と言おう。ビールのトップをアップする、と言うことです(どういう事?)。

 注ぎ手は伝家の宝刀、"ノー・プロブレム"を発しながら、また、にこにこしながら、あなたのコップにビールを溢れさせてくれることでしょう。


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