当時,私の勤める会社内では,OS/2上でLANMANを動かした部門内のローカルエリアネットワークを他部門と接続し,UNIXベースの電子メール環境を構築したところでした.電子メールのやり取りは,すべてPCからもしくは,UNIX機に直接ログインして,mailx,mh, mh-eなどと言ったUNIXのキャラクタベースのツールでした.エディタもviやemacsを使っていました.かろうじてX端末上でGUI式のxmailなるものが有りましたが,これはあくまでもmhを通じてのものであり,一般ユーザーには,とても使い切れるものでは有りませんでした.
電子メールの普及の為に何かPC上で動くいいツールはないかと探していたら,当時スズキにお勤めの中村氏が作成したPC/M+の存在を知り,早速導入する事にしました.これで社内に電子メールを導入するきっかけをつかむ事が出来ました.
このころより,Windows(R) 3.1が部内のPCにも導入され始めました.ユーザーからは,Windowsベースの電子メールソフトが無いか,と言う要求が上がり始めました.このころWindows版のメールソフトは海外製ばかりで,日本語が扱えるものは有りませんでした.やがて社内のある人が自力で開発していると言う話を聞き,これを導入してみました.余談では有りますが,これは後に,私が勤めている会社の関係会社から発売される電子メールソフトの元になるものでした.(敢えて,名前は伏せさせていただきます)
さて,私自身は,この社内で開発されたメールソフトに満足していたかと言うと,そういう訳ではありませんでした.確かにPC-Mailの流れを汲み,PCM+と同じようにMh風のメール管理を行うソフトでしたが,外部エディタが必要である事,また,ユーザーに対して,電子メールソフトに対する選択肢が一つしか無いと言うのも,気に入りませんでした.そこで,海外のメールソフトに目をむけてみました.ただ,ここで問題となったのが,文字コードの問題と,表示できるフォントの問題でした.当時は電子メールは新JISと呼ばれる文字コードを使っていました.(現在は,ISO-2022を使うとなっている様ですが)しかしPCでは,SJISコードしか存在していなかったし,海外のソフトでは,日本語を表示できるのもがほとんど有りませんでした.さらに,海外のWindows版の電子メールソフトは,ほとんどがWinsock.dllが必要であり,当時社内で使っていたINETBIOSが使えるものがまったく有りませんでした.
そのころ,すでに市場にはオレンジソフトのWinBiffが出回っており,AL-Mailはちょっと出遅れた感じでした.しかし,プロダクション版が出るころには,多数の方々の指示を得られるまでに成長したのである.それからの事は,AL-Mailのユーザーの皆さんがご存知の通りである.
ところで,恥ずかしい話だが,当初私は中村さんがPCM+の作者である事を知らなかった.ある日,中村氏に「スズキの方で,PCM+を作った方がいらっしゃいますよね?」と失礼な質問をしてしまった事がある.今でも思い出すたびに,顔から火の出る思いである.