2004年のシネマ日記(2)

218●デッドコースター -FINAL DESTINATION 2-(2003年/アメリカ)

2004.05.08(CS)

監督/デヴィッド・エリス
出演/A・J・クック アリ・ラーター マイケル・ランデス トニー・トッド  T・C・カーソン ジョナサン・チェリー

 死ぬはずだった運命を偶然回避した人々が、結局運命からは逃れられず次々と凄惨な死を遂げていく、という隠れた傑作ホラー「ファイナル・ディスティネーション」の続編。基本的に前作と展開は同様だが、割とサスペンス色が強く暗い雰囲気の前作と違い、今回は死の描き方がよりエスカレートしており、その唐突かつトリッキーさは、グロい割にはある意味爽やかささえ感じるものになっている。前作からは唯一アリ・ラーターが生き残りとして登場するが、彼女の辿る運命がまた意外でびっくり。今回追加された「死の予兆」というファクターには、いかにもミスリードさせようとしている演出に対して、あとから振り返って「そういう事か」と膝を打つ楽しみもある。前作の設定を絶妙に関連させ、「死の順番」や「死ぬ人物」を行動によって変える事ができる、という新たな真実が明らかになるが、結局つじつまを合わされてしまうという相変わらずシニカルな展開などは素晴らしく、この基本設定を生かせばもっともっと面白い作品が出来るような気がする(…と思ったら続編決定しているらしい。シリーズ化希望だ!)

 とまぁいろいろ書いたが、この作品の見所はやはり「マトリックス・リローデッド」のアクション監督であるD・エリスが手腕を振るった冒頭のハイウェイ事故シーンだろう。事故前の不安を煽る見事な演出といい、ホラー映画とは思えないほど無駄に力の入ったハイクオリティなクラッシュシーンといい、これだけ見ても満足してしまうくらいだ。

217●サンダーバード -THUNDERBIRDS-(2004年/アメリカ)

2004.08.26(THEATER)

監督/ジョナサン・フレイクス
出演/ビル・パクストン ソフィア・マイルズ ベン・キングスレー フィリップ・ウィンチェスター

 懐かしのイギリスの人気人形劇を、アメリカが実写版でリメイク。この映画、往年のファンにとってはサンダーバードメカやトレイシー兄弟があまり活躍しないとか、完全に子供向けのお気楽映画になってしまっているとかでかなり不評だったのだが、曲がりなりにも幼少時代に大ファンだったワタシとしてはスルーするわけにはいかず、覚悟して劇場に向かった。が、期待しなかったせいかこれが結構面白い!映画スタイル的にはよく言われている、まさに「スパイキッズ」的なアクションコメディ。とにかく恐ろしいほどテンポがいいのであっという間に終わります。それだけ軽いって事ですが。原色バリバリのおもちゃっぽい登場メカ(オリジナルの方がよっぽどリアル)も、言うほどオリジナルの雰囲気を壊しておらず、レトロフューチャー感覚が溢れていて個人的には文句無し。

 登場人物もオリジナルに出てきたトレーシー一家の他、おなじみブレインズやフッド、キラノやミンミン(映画ではティンティン)までちゃんと出てくる。出てこないのはおばあちゃんくらいか。特にパーカーがソックリで笑った。一番良かったのはソフィア・マイルズのペネロープ。かわいい。惚れた。個人的には敵の手下の森三中黒沢に似てる女がいい味出してて良かった。ただビル・パクストンはジェフをやるには若すぎるんじゃないだろうか。

 唯一評判のいい、オリジナルのテーマ曲(アレンジはしてある)に乗ってアニメのサンダーバードがコミカルに救助活動をするオープニングは、昔の外国アニメとか手塚アニメっぽいセンスがあってそれはそれで悪くはないんだけど、個人的には浮いてる感じがしたので、出来れば実写でやって欲しかった。

 いろいろ思うところはあるが、やはりこの設定でトレイシー兄弟がサンダーバードメカに乗って大活躍する、正攻法の物語が観てみたいのも正直なところ。続編は是非制作して頂きたい。と言うかシリーズ化大いに希望。

216●マッハ!!!!!!!! -ONG-BAK-(2003年/タイ)

2004.08.07(THEATER)

監督/プラッチャヤー・ピンゲーオ
出演/トニー・ジャー ペットターイ・ウォンカムラオ プマワーリー・ヨートガモン スチャオ・ポンウィライ

 これは意外な拾いモノ。今のCG+ワイヤー全盛のアクション映画の中で、体一つでとんでもないアクションを生み出すトニー・ジャーは凄いの一言。ストーリーは映画として本当にこれでいいのか?と思うぐらい超単純だが、これでいいのだ。観客はその分、頭を空っぽにしてトニー・ジャーの惚れ惚れするアクションに酔いしれる事ができる。また、ムエタイの格闘シーンオンリーかと思いきや、町中で追いかけっこするシーンや、3輪自動車によるカーチェイスシーンがあったりと、見せ場の連続で飽きさせない。ジャッキー・チェンの映画をハラハラしながら観ていた昔を思い出した。

 あと、どうでもいい事だが、敵の親玉がエリック・クラプトンに見えてしょうがなかった。嫁は主人公と行動を共にするオヤジ(いい味出してる)がキム兄やんに見えたらしい。ほんとにどうでもいいですね。

215●スパイダーマン2 -SPIDERMAN2-(2004年/アメリカ)

2004.08.07(THEATER)

監督/サム・ライミ
出演/トビー・マグワイア キルステン・ダンスト アルフレッド・モリナ ジェームズ・フランコ ローズマリー・ハリス ウィレム・デフォー

 期待し過ぎた。いやー、はっきり言って出来は悪くないと思います。というかむしろ良い。アクションシーンは確かに前作をはるかに凌ぐ出来だし、自らの肉体に知能を持った4本のアームを生やした敵の科学者ビジュアルも腹に響くような音響も相まってすごい迫力。ビルの壁面で繰り広げられる落下しながらのアクションや、電車を使った攻防戦など、ひとつひとつのアクションは手に汗握るものである。

 しかし、アクションシーン間にまったりするシーンがかなり多いので、なんとなくテンポが悪く感じられてしまう。あと、ほとんどの見所が予告やテレビなどで紹介され尽くされているシーンだったのも原因のひとつか。やはり観たいと思う映画の予告編は観ないに限る。また、途中のアクションシーンの出来がいいため、クライマックスシーンが若干弱い気がする。

 一番気に入ったのは敵の科学者が事故に遭った後病院で復活するところ。ここはいかにもサム・ライミといった感じのホラーテイストが感じられる名シーン。思わずニヤリとしてしまった。

214●スチームボーイ -STEAMBOY-(2004年/日本)

2004.07.30(THEATER)

監督/大友克洋
出演/鈴木杏 小西真奈美 津嘉山正種 中村嘉葎雄 沢村一樹 児玉清 斉藤暁 寺島進

 『AKIRA』から16年、大友克洋久々の新作劇場アニメーション映画。製作期間9年、総製作費24億円もかけた超大作だそうだが、個人的な感想としては微妙だ。前評判などからも正直期待はそれほどしてなかったのだが、それを差し引いても満足できなかった。  絵は確かにすごい。CGのクオリティや密度なんかは『イノセンス』とかに比べると正直低いのだが、手書き部分の作画はさすがに圧倒的で、全体のマッチング感なんかもこっちの方が上。どっちかというとCGは影の立役者的に使って手書き感覚を優先させているのも好感度が高い。しかし、絵がすごいだけではワタシ的には面白い映画とは言えないのです。『イノセンス』とか『キャシャーン』の時にも思いましたが、「絵がすごい」のは今はあたりまえ。逆に絵がすごくなくても『クレヨンしんちゃん』のような面白い映画は出来る。

 全体的には大友克洋が宮崎駿をやろうとして、結局足元にも及ばない作品が出来上がってしまった感じである。なんかお話がすっからかんなのだ。普通冒険活劇ものというとワクワク、ドキドキ、ハラハラのたたみかけが必要不可欠だが、断片的にそういうシーンがあるのみで肝心の部分がかなり弱い。冒頭のツカミからまったりしていて物語が走り始めるまでも暫く時間がかかる上に、なにしろクライマックスあたりですら退屈になってしまうのはいかがなものか。序盤の追っかけっこなどは結構ハラハラしたのに、あのテンションが最後まで続いていかない。設定自体は面白いだけにこれは残念すぎる。

 あと、登場人物の誰一人として感情移入できない。鈴木杏ちゃんが声をやっている主人公にしても、発明少年であるという以外は主人公である事を忘れてしまうほど没個性的で存在感が薄い。それから主に俳優を配した声優陣。実写では実力のある人たちなのだろうが、声優としてはひどすぎる。特におじいちゃん役の中村嘉葎雄。滑舌が悪すぎて聴いてるだけでもどかしくなってイライラするのに、結構セリフが多いのでお話そっちのけで気になってしまう。それほどではないとはいえ、沢村一樹や児玉清もしかり。残念ながら杏ちゃんですら、ファンの贔屓目で見ても正直上手いとは思えなかった。いくら芝居が上手いとはいえ、やはり声優というのは俳優とは全く違う技術がいるのだとひしひしと実感。みんな頑張ってはいるんだろうけど…。ここでプロの声優を使うだけでもオモシロさはかなり違ってきたんじゃないだろうか。津嘉山正種が喋るときは本当にホッとした。しかしそんな中で小西真奈美は意外にもかなり上手かった。声を作っていたからかも知れないが、キャラクターとの違和感がない。この人は声優でも食べていけるのではないだろうか。

 とりあえず今年のアニメ大作はあと宮崎駿の『ハウルの動く城』があるが、果たしてどうなるか。キムタクだしなー。予告を見た限りはかなり凄そうだったが(ちょっとだけ『スチームボーイ』にかぶってた・笑)。

213●老人Z (1991年/日本)

2004.07.12(CS)

監督/北久保弘之
出演/松村彦次郎 高沢喜十郎 横山智佐 三橋晴子 小川真司 寺田卓 近石真介 長谷川良彦

 原作・脚本を大友克洋、キャラクターデザインを江口寿史が手がけた事で話題となった近未来SFコメディアニメ。厚生省が導入した最新型全自動介護ベッドが暴走を始めるという話で、ストーリー的にはあまり深くはないが、当時の水準以上の高レベルの作画と、後半のテンポの良いアクションシーンの出来が特筆もので、マイナーではあるが好きな作品である。

 アニメーションにCGが使われる以前の作品だが、そこまでやるかという程のその徹底した書き込みは今見ても新鮮。今ならCGで簡単に出来てしまうであろう、アングルが変わる複雑な動きのアクションなども、全て背景動画等を駆使して作画されており、見るからに作り手の意気込みとか執念みたいなものが伝わってくる。手描きで描いているのに、よっぽどCGよりリアリティが感じられるのだ。

 江口寿史のキャラクターは、同テーマをそのまま大友克洋の絵でやるよりは効果が出ている。とはいえ、大友テイストももちろん健在で、全自動介護ベッドが街に出ていろんなものを取り込みながらうにょうにょ進化していく様子の演出はまさに大友克洋の本領発揮といった感じである。ただ、やはり難はストーリーやギャグ自体がそれほど面白いものではないという事か。それでも面白いというのは、このアニメが「見せる」という要素でずば抜けているからだろうが。

 しかし、つくづくこの頃までのアニメは見ごたえがあったよなぁ。CGが全盛になった今、こういったこだわりの手描き作画作品ってどんどん減っていくだろう。非常に残念である。

212●回路 (2001年/日本)

2004.05.30(CS)

監督/黒沢清
出演/加藤晴彦 麻生久美子 小雪 役所広司 武田真治 有坂来瞳 哀川翔

 黒沢清流の一般観客を突き放した難解ホラー。かつてこの監督の『CURE』という映画を観て、全くその面白さを理解できなかったのだが、今回もまたまたよくわからない映画になっていた。日本の幽霊映画として、暗く陰湿な雰囲気を出すことには成功しているとは思うが、同系列の『女優霊』『リング』『呪怨』などに比べると、致命的に怖さが足りない。

 この映画でよく見所として語られるのが「開かずの間の歩く時よろける幽霊」「落下から地上激突までワンカットで見せる投身自殺」「飛行機の墜落」の3つのシーンで、確かにここは見所ではあるのだが、ピンポイントで一瞬すごいだけで、それ以外のホラー描写が全くもってぱっとしない。パソコンディスプレイに現れる気味の悪い画面は『リング』のビデオ画面風で斬新さはないし、幽霊がつかめてしまう(実体を持っている)のもなんだか妙だ。しかも幽霊が喋って自分の状況を説明してしまう。これはイカン。ドッチラケである。人がいなくなっていくシーンの黒いシミはなかなか不気味でいいが、そのいなくなり方にも統制がとれていない。あとは他のホラー映画でも言えることなのだが、登場人物がなぜそういう行動に出るのか、イマイチ理路整然としない。いちいち説明しろとか単純明快にしろと言っているわけではなく、不可解でも別にいいんだけど、基本的な部分にツッコミどころが多すぎるのだ。出演者の演技も(狙ったのかもしれないが)なんか素人臭い。あと、登場するインターネットがダイアルアップ(ピージーコロコロ…という懐かしい接続音がする)なのも、ADSL常時接続の今のご時世に見るとちょいと隔世の感があって厳しい。最終的には世界の終焉といったホラーそっちのけのSFになってしまい、その雰囲気は先日観た『ドーン・オブ・ザ・デッド』にも通ずるところもあって意外によく出ているとは思うが、やっぱりなんとなく中途半端である。そういう映画なのだ、と言われるとそれまでなのだが。

 この監督の映画は賛否両論いつも真っ二つだが、個人的にはダメ。もっと分かりやすくて怖くないと自分はダメです。

211●ドーン・オブ・ザ・デッド -DAWN OF THE DEAD-(2004年/アメリカ)

2004.05.27(THEATER)

監督/ザック・スナイダー
出演/サラ・ポーリー ヴィング・レイムス ジェイク・ウェバー メキー・ファイファー

 ホラー映画の金字塔、ジョージ・A・ロメロの大傑作『ゾンビ』のリメイク。オリジナルが名作すぎて、これを超えるリメイクなど作れるはずはないと思っていたが、意外や意外、これがかなり面白かった。前作『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』が特殊メイクのトム・サビーニによってリメイクされた時、主人公が女性に変更されていたが、この映画も女性が主人公に変わっているほか、「いきなり世界がゾンビだらけになってしまい、生き残った者がショッピングモールに立てこもる」という基本プロットのみをそのままに、かなり大胆な新解釈でリメイクされている。敢えて忠実にしようとしなかった点が却っていい結果となったようだ。オープニングからつべこべ言わずにすぐにゾンビが現れるのでツカミもOK。全体的に間延びする部分もないし、特にオリジナルにもあった、「世界の終末を描いているのになんとなくほのぼの」な雰囲気もよく出ている。今時CGに頼らない特殊メイク主体のSFXも好感度が高い。登場人物は大幅に増えているが、敵であったり味方であったりしながらも基本的に殺されてセイセイするような極悪人は出てこないので誰がやられそうになっても心配でハラハラしてしまう。また、やられ方もゾンビに襲われるだけではなく、いろいろなパターンを用意しているのが面白いところ。ただ、人数多い分一人一人の描き方がやや薄いが(主人公すら薄い)。

 そんな中でもこの映画の最大の特徴は「ゾンビが走る」という事である。今までのゾンビの既成概念として「のろのろ歩いている」というのが定説だったが、今回は獲物を把握するや否や全力疾走で追いかけてくるという、問答無用の恐ろしさが加味されている。以前も『ナイトメア・シティ』などで走るゾンビはいるにはいたが所詮キワモノ扱い、ゾンビが走るなど言語道断、そんなゾンビはゾンビじゃないと言う人も多く、事実自分もそう思っていた。しかし、『ナイトメア・シティ』はゾンビの圧倒的強さに対する「どうすんだこれ!どうにもならん!」的な終末感が秀逸だったわけで、ゾンビリメイクのスパイスとして非常に効果的になっている。倒しても倒しても次から次へと猛烈な勢いで襲いかかってくるゾンビ、そしてまたゾンビ。人間あまりに怖いと笑ってしまうと言うが、そのイキっぷりを見てるうちに思わず薄ら笑いを浮かべてしまっていたよ。イカンイカン。

 ラストシーンはオリジナルよろしく、ハッピーなのかアンハッピーなのか、それは観客に委ねますよー的な雰囲気で終わるのかと思いきや…。この映画はそこでエンドクレジットが始まるのだが、絶対に最後まで席を立ってはいけない。ていうか、むしろそこからがこの映画の大クライマックスなのだ。いやー、このエンディング、ゾンビファンにはたまらないです。サイコー。あと、旧『ゾンビ』出演者(ピーターとロジャー)やトム・サビーニがカメオ出演しているのもファンには嬉しいところ。でも自分はピーターしか気付かなかったよ〜ん。それにしてもヴィング・レイムスはボブ・サップに似ている。

210●ホーンテッド・マンション -THE HAUNTED MANSION-(2003年/アメリカ)

2004.05.22(THEATER)

監督/ロブ・ミンコフ
出演/エディ・マーフィ マーシャ・トマソン テレンス・スタンプ

 ディズニーランドのアトラクション「ホーンテッド・マンション」の世界を映画化。今年のGW映画ではかなりのヒットをしたようで、映画評でもそこそこいい評判を得ていたので、つまらなくはないだろうという事で観に行った。

 なるほど、喋る水晶玉とか、幽霊の舞踏会とか、歌う石像とか、あのアトラクションで見たようなシーンがそこかしこに出てくるし、お化け屋敷を探検するあの雰囲気はよく出ている。しかし、ストーリーもその尺の短さが逆に仇となってあっさりし過ぎだし、映像に関しても今時の映画にしてはインパクトがなさ過ぎる。さらにコメディとホラーがお互いに足を引っ張り合って、笑えばいいのか怖がればいいのかなんとも中途半端で、結果映画としての満足度はあまり高くなってしまっている。ファミリーでそこそこ楽しむ映画としてはいいけど、大人が本気で楽しむ映画としてはイマイチだったかな。そこがディズニー映画らしさと言ってしまえばそれまでなんだけど。言うほどラストに感動もしなかったし、個人的にはちょっと期待はずれ感が大きい映画だった。

209●キャシャーン -CASSHERN-(2004年/日本)

2004.05.22(THEATER)

監督/紀里谷和明
出演/伊勢谷友介 唐沢寿明 麻生久美子 寺尾聰 樋口可奈子 小日向文世 及川光博 要潤 宮迫博之 佐田真由美

 70年代のヒーローアニメ「新造人間キャシャーン」は、主人公がなんとなく弱々しいのと、ストーリー的に非常に暗かったので、子供心にあまり好きになれないヒーローだった。その後「キャシャーン」は10年ほど前に一度OVAでリメイクされたのだが、こちらは原作を忠実に踏襲しつつブラッシュアップされたストーリーと、梅津泰臣のクールなキャラクターデザインと相まって非常にイカす作品に仕上がっており、大のお気に入りの作品である。

 そんな「キャシャーン」をあの宇多田ヒカルの旦那で映像作家としても有名な紀里谷和明が実写映画化。出演者のメンツや予告だけ見ても、もの凄い内容になっていそうだったので結構期待して観たのだが、別の意味でもの凄い内容になっていた。映像だけに着眼すればこの映画、確かに今までの日本映画ではなかったような異常なまでのクオリティの高さである。しかし、ストーリーを楽しむのならかなり厳しいと言わざるを得ない。紀里谷和明の完全なる自己満足の世界としか思えず、ただ「キリキリヲタクだなぁ」という感想しか生まれてこないような、もの凄く特殊な映画だからだ。ストーリーや設定・人物関係は、原作を元につつも微妙に変えてあるが、なんでそうなるの?というような唐突な展開が多く、しかもその説明がされないので非常に分かり辛い。一番変わっていたのは、最後にどんでん返しをするための新造人間の秘密の部分だが、それもなんだかなぁ、という感じである。話題性だけで観に来た一般層の観客は、ヒーローものにあるまじきバッドエンドっぷりに、見た後に何がなんだか?という気にされてしまうのではないか。個人的には「エヴァンゲリオン」を観たときのような、あのなんとも言えない虚無感のようなものを感じた。一般人の代表のような嫁は、唐沢ファンというだけの理由でこの映画を観たが、やっぱり受け付けられなかったようだ。それから、小さい子供連れで来てた人いたけど、子供にゃこれトラウマになっちゃったりしないかなぁとか心配になったり。

 逆にヲタク層の観客は、その一筋縄ではいかない展開や世界観がツボにハマれば結構楽しかったりするのだが(自分がそう)。特に一番良かったのは2回目の戦闘シーン。アニメそのまんまに一糸乱れず行進するアンドロ軍団のロボットをヒュンヒュン飛び回って一掃する爽快感は観ていてゾクゾクした。あのテンションとテンポを全編に貫いてたら、娯楽大作としていいものになってたろうになぁ。難を言えば主役の伊勢谷友介と、ミッチー、キャナメの演技が同じようにぎこちなかった事。お陰で唐沢寿明の舞台的に力が入った演技が浮く浮く。あとフレンダーが活躍しない。一応出てくるけど…。それからキャシャーンのコスチュームの一番特徴的な三日月のついたヘルメット。一応画面には出てくるけど初回の戦闘で壊されて一回もかぶる事がなかったのが残念。あれがあってこそのキャシャーンなのに、マスクだけだと花粉症用の立体マスクしてる人のようでみっともない。

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