1995年6月7日(国税調査官)
業種
所得
指摘事項
対象
個人
譲渡
収入金額
所得税


俺達は、犯罪者ではない



この前年、事務所関与先の飲食店が、借りている店舗が売りに出ているので店子でもある所関与先が購入することにしました。

翌年(1995年)の確定申告時期にその関与先から、前の大家さんが今回の不動産の譲渡に係る確定申告をして欲しいとの依頼がありました。購入者である関与先からの依頼なので、引き受けました。

購入金額は、通常取引価額の半分程度でした。これが後の税務調査の選定対象になった原因かもしれません。




調査当日、調査員は売買契約書等には一切目を通さず、まるでTVの刑事ドラマの取り調べの場面のように威圧的に言葉を発しました。「俺達は、あんたを裸にするまで調べるんだ。あんたも商売をやっているのならわかるだろ。」

『友人知人に税務調査としていろりろ聞いて回るのだから、それがいやならさっさと白状しろ』と言っているのと同じである。可哀相にその方は、今にも泣き出しそうに喉を詰まらせました。俺達は犯罪者ではない。

後日、調査員から電話で呼び出しがあった。「いくら抜けていた。」とニコニコしながら聞いてくる。「俺達は、お前らの下請けではない。」また、「お前の見込違いだ。」と伝えました。さらに「税法は、常に納税者有利の立場をとっている。」この最後の発言が、後に思いのよらない結果になりました。

結果的に、購入者からの依頼なので購入金額やその資金の源泉がすべて解っていたので、調査員の勇み足であるのは明らかでした。




税務署内で、通称「厚紙(*)」と言われる統括官が今回の調査員でした。

本来、申告納税方式には複数の計算方法が用意されています。どの計算方式を採用するかは、申告者に委ねられています。例えその採用した方法が納税者にとって有利であろうが不利であろうが納税者の選択した方法です。課税当局は、積極的に有利に働くように更正はしてくれません。

例えば、配当に係る所得税の控除に関して、法人税申告書別表六(一)において、「個別法による場合」と「銘柄別簡便法による場合」の2通りが用意されています。どちらの方法を選択するかは、申告者の自由です。

数ヶ月後、税金が還付されました。事務所で採用した納税額の計算方法は、最も有利な方法ではなかったようです。まだまだ勉強が足りません。


(*)厚紙
辞令の紙の厚さが違うこのからそう呼ばれている。今回の場合、統括官で一番発言力があることを指している。



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