1998年10月26日(国税調査官)
業種
決算月
指摘事項
対象
製造業
6月
役員賞与
法人税


使用人兼務役員の判定



有限会社法の改正により、現在では、その取締役の最低人数は1名でよくなりました。



有志者の出資により設立された有限会社ですが、当時の有限会社法の規定により、取締役を最低2名就任させなければなりません。
このような場合でも、一般的に代表者とその妻が就任するのが多く見受けられます。

今回の場合もそうした有限会社です。なお、取締役に就任した妻の従事している職務内容は、工場内での作業補佐と経理帳簿の記帳であり、給与・賞与の決定権、機械設備等の購入決定権、金融機関との借入折衝などは、一切ありません。



定期の給与ではない取締役の賞与は、法人の所得の計算上損金不算入です。

設立第1期目から取締役である代表者の妻には、従業員と同じ時期に同じ基準で賞与が支給されていました。登記上は取締役であっても職務の内容から、使用人兼務役員ではないかと考え賞与を支給していたようです。この場合、取締役である代表者の妻は、使用人兼務役員でしょうか。

違います。法人税法の使用人兼務役員の意義により、使用人兼務役員には該当しません。ただし、職制上の取締役の場合には、同族会社の判定の基礎となる株主であっても、経営に従事していない者は使用人兼務役員に該当します。

勘違いしやすいので、注意が必要です。



取締役の賞与は、法人の所得の計算上、損金不算入です。その理由は、「定期の給与でない」。取締役の賞与に限らず賞与とは、本当に臨時的なものでしょうか。現状の賞与の支給状況を判断すると、もはや定期の給与と言わざるを得ないと思われる。住宅ローン、自動車ローンなど「ボーナス払い」というシステムがすでに用意されている。会社業績や税収に関係なく決まった時期にあらかじめ決められた率で支給されます。

本来の賞与とは、有益な提案、発明、開発を行った者などその所属する組織に貢献した者が手にできるもののはずである。

我が国の場合、公務員がお手本になることが多い。賞与を本来の賞与支給へと移行された場合、一人も支給されないことにならなければよいのだが。



役員報酬について、調査員やその上司である統括官はなにかと「高い」といいます。本当に高いのでしょうか。彼らは、いったい何を基準に判断するのでしょう。本当に同業他社の報酬実績に基づいての発言でしょうか。

私は、どちらかと言えば全般的に低いと思います。もっと沢山報酬を受け取ってよいと考えます。従業員や公務員とは違い、自己の責任に於いて自分とその家族の生命(生活)維持だけでなく、従業員とその家族の生命(生活)にも責任を持っているのである。そのことを勘案し、報酬額を見直してみてもよいと思われます。なお、税法では、その会社の収益状況も判定基準になります。税収不足でも定期昇給や賞与が支給される公務員が本当に公正妥当な判断がきるのだろうか。



先にも触れましたが、この会社の場合、設立第1期目から取締役である代表者の妻に従業員と同様に賞与を支給していました。調査対象事業年度は、第7期目です。法人税申告書の別表(二)及び勘定科目内訳書14の「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」を毎申告時に注視していれば、もっと速い段階での指摘ができたと思われます。

まさか申告書提出時に申告書を全く検査していないか、高額な延滞税を徴収して税収増加をはかりたいわけではあるまい。考えたくはないが、「電子帳簿保存法」に関連して、札幌国税庁に苦情を申し立てたのが同年10月9日、旭川東税務署の統括官が事務所に来たのが同年10月14日。調査の連絡は、その直後にありました。相変わらず「何も問題はありません。行ってから探します。」とのこと。取締役の賞与の指摘は、調査後半になってからです。

最後に、調査員及びその統括官は口を揃えて「登記上の取締役であれば、使用人兼務役員には、どんな場合もなれない。」との見解でした。これは間違いです。



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