棚卸資産販売の計上時期


コンビニエンスストアーが消費者に対して商品を販売する場合など、ごく日常的に誰もが目にする販売形態のほか、委託による販売など一口に棚卸資産の販売といってもいろいろな形態があります。そして、販売形態によって収益を計上する時期が異なってきます。それぞれ、具体的な計上時期を紹介します。


引渡し基準

法人税法では、棚卸資産の販売は「その引渡しの日の属する事業年度に帰属する収益の額に算入する」こととなっています。では、どの時点で引渡したは、どのように判断するのでしょう。税務上、おおむね次のような基準を継続適用している場合、認められています。

  1. 相手方の注文に応じて店頭または倉庫等から出荷されたとき
  2. 注文商品の船積または貨車積をしたとき
  3. 商品を相手方に引渡し、相手方が検収のうえ引取の意思を表明したとき


上記のほかにも、自分の販売形態に合った基準を継続適用しているときは、認められます。例えば、棚卸資産ではありませんが、住宅を引渡した時期を「建築主に家の鍵を渡したとき」としている建築会社が多く見受けられます。


委託販売

委託販売の収益計上時期は、商品を積送したときでなく、「その委託品を受託者が販売した日の属する事業年度の益金の額に算入する」こととなっています。したがって、受託者から売上計算書が届いた日が収益計上日とはなりません。


計算例

設問
当社(自平成15年2月1日 至平成16年1月31日)の事業年度において行われた次の取引に基づき、法人税法上の所得金額を計算しましょう。なお、一般商品は出荷基準により収益計上している。ただし、精密機械で移送中に破損し易く、設置作業後に動作点検、調整の必要なA商品は、検収基準を採用している

(1)期末において、検収未了のA商品が1,000,000円(原価800,000円)がある。
(2)委託してあったB商品(原価410,000円、積送費用10,000円)の売上計算書が3月10日届いた。内容は次の通りです。
1月30日売上400,000円
2月10日売上300,000円
販売手数料70,000円


経理処理(3月10日)「消費税が抜けておりました。訂正しました。(於2004年3月30日筆者)」
積送品未収金735,000売上700,000


仮受消費税35,000
販売手数料70,000未払金73,500
仕入420,000積送品441,000
仮払消費税24,500



解答
税務調整(申告調整)の有無と調整金額は、次の通りです。
(1)は、必要ありません。
(2)は、下記の通りです。なお、消費税の追加支払額は、6,000円です。

別表四
区分総額留保
加算販売済積送品売上400,000400,000

仮受消費税20,00020,000

仮払消費税14,000
減算販売済積送品原価認容240,000240,000

販売手数料当期分認容40,00040,000

仮受消費税20,000

仮払消費税14,00014,000

未払消費税6,0006,000


別表五(一)
区分期首利益処分期末
売掛金
254,000420,000
166,000
未払金

-40,000
-40,000
未払消費税

-6,000
-6,000


当期の売上に対応する原価 = (原価合計 + 積送費用) × (当期分の売上高 ÷ 売上高合計)
240,000 = (410,000 + 10,000) ×(400,000 ÷ 700,000)
当期の売上に対応する販売手数料 = 販売手数料合計 × (当期分の売上高 ÷ 売上高合計)
40,000 = 70,000 ×(400,000 ÷ 700,000)

上記の計算は、消費税額を含まない本体価額です。


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