法人税法では、法人の自己資本を法定資本と資本積立金、利益積立金とに区分してます。このうち法定資本と資本積立金の合計額を資本等の金額としています。
法人の資本等の金額が増減する取引及び法人が行う利益なたは剰余金分配取引を資本等取引といます。すなわち、法人税法における資本等取引とは、会計理論の資本取引と利益分配取引を併せたものと考えられます。しかし、どちらにしても益金および損金の計算に関係させないことは同じです。
法人税法では、「資本等取引は、益金または損金から除外される」。そこで、税法の資本取り引きをまとめると、次ぎのようになります。
1 | 法人の資本等を増加させる取引 |
2 | 法人の資本金を減少させる取引 |
3 | 法人が行う利益または剰余金の分配 |
資本積立金とは、次に掲げる金額のうち法人が留保している金額の合計額です。これらの増減取引が「資本等取引」と呼ばれています。これらは、いずれも法定資本の払い込み金額ではないが、実質的には資本主として拠出した資本であり、その増減取引は、所得計算に影響させないものです。なお、法人税法の資本取引の範囲は、法人と資本主の間に生じるものに限定されています。たとえば、追出資を意味する受贈益、建設助成金収入等は、資本取引に含められません。
1 | 額面株式の発行価額のうちその額面を超える部分の金額。ただし、抱合増資の歳の端数または失権株についき株主を募集した場合の超過分は、法人が資本準備金として積み立てなかったときは、資本積立金に含めない。 |
2 | 無額面株式の発行価額のうち資本に組み入れなかった金額(払込剰余金)。 |
3 | 協同組合等、企業組合、協同組合等に該当しない農事組合法人、漁業生産組合および森林組合ならびに証券取引所および商品取引所が新たにその出資者となる者から徴収した加入金額。 |
4 | 減資により減少した資本金または出資金に相当する金額のうち、株式の消却もしくは払い戻しまたは持分の払戻しとして交付した金銭おいび金銭以外の資産の価額の合計額を超える部分の金額(減資差益金)。 |
5 | 資産再評価法または旧企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法の規定により再評価積立金または商法288条ノ2第1項(有限会社法第46条において準用する場合を含む)の資本準備金として積立て、またはこれに組み入れられた金額。 |
6 | 合併差益金のうち被合併法人の資本積立金および合併減資差益金からなる部分の金額。 |
7 | 財団である医療法人または社団である医療法人の持分の定めがないものがその設立について贈与または遺贈を受けた金銭の額または金銭以外の資産の価額(相続税法の規定によりこれらの資産につき納付する贈与税または相続税相当額を控除した金額)。 |
合併差益金は、次の算式によって計算されます。
純資産の受入価額 − (合併増加資本金 + 合併交付金)
法人税法では、合併差益金の課税をそれぞれ次のように区分しています。このたね、合併差益金の構成内容を区分して計算する必要があります。
区分 | 課税/非課税 | |
1 | 合併減資益金 | 非課税 |
2 | 被合併法人が有していた資本積立金 | 非課税 |
3 | 被合併法人が有していた利益積立金 | 非課税 |
区分 | 課税/非課税 | |
1 | 合併減資益金 | 非課税 |
2 | 被合併法人が有していた資本積立金 | 非課税 |
3 | 被合併法人が有していた利益積立金 | 非課税 |
4 | 上記以外のもの | 課税 |
合併減資益金は、次に掲げる1の金額が、2の金額に満たないときの差額です。
算式: 被合併法人の合併時の資本金額 − (合併により増加した資本金額 + 合併交付金)
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利益積立金額は、次に掲げる1の金額が、2の金額を超えるとき、その超える部分をさします。これは、社内に留保した課税済み所得金額の累積額です。
区分 | 資本積立金額 | 利益積立金額 | 参考となる法令 |
性質 |
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法人税法2(17) 法人税法2(18) |
利益の配当とみなす金額の計算 | 資本積立金額からなる部分の払戻しは、法定資本の払戻しと同じように扱われれ、みなし配当金額の計算から除外される | 利益積立金額からなる部分の払戻しは、利益の配当とみなされる | 法人税法67 |
同族会社の留保金課税の計算 | − | 課税留保金額の計算の基礎 | 法人税法67 |
寄付金の損金算入額の計算 | 損金算入限度額の基礎に含まれる | 含まれない | 法人税法施行令73 |
未納法人税等 | 控除しない | 控除する | 法人税法2(18) |
資本への組入れ | 無償交付となる | 配当等の額とみなされ、課税される | 法人税法2(18) |
繰越欠損金 | 控除しない | 控除する | 法人税法2(18) |