割賦基準


割賦販売であっても、本来は,商品等を引渡した日をもって収益実現の日とします。しかし、割賦販売は通常の販売とは異なり、その代金回収期間が長期にわたり、かつ、分割であることろから代金回収に危険が伴います。また、回収費用やアフター・サービス費用などもかさみます。その費用の算定は、複雑で不確実です。したがって、収益の認識を慎重に行うために、会計慣行としても、通常の販売基準に代えて、割賦基準による収益計上が行われます。税法でもこのような会計慣行を基礎に、一定要件のもと、割賦基準の適用が認められています。

法人税法では、棚卸資産または役務の割賦販売等をする場合、各事業年度において割賦販売したすべての棚卸資産または役務にかかる収益および費用の額について、継続的に適用することを前提に引渡日基準によらないで、割賦基準により経理することができます(法人税法62(1))。これは、割賦販売等にかかる利益または損失のいずれを問わず、そのすべてに適用されます(法人税法施行令119)。

税法で言う割賦販売とは、月賦、年賦その他の賦払の方法により対価の支払いを受けることを定形的に定めた約款に基づく販売または提供をいいます。

なお、割賦販売の適用を受けた事業年度以後の事業年度において割賦販売をした棚卸資産または役務の全部またが一部にかかる収益および費用の額につき、割賦基準の方法によらなかった場合は、それ以後の事業年度においては、割賦基準によることができない(法人税法62(1)ただし書き)。


割賦損益の計算


割賦基準は、次の算式により計算した金額にかかる収益および費用の額を、当該事業年度の収益おいび費用の額とします(法人税法施行令119)。

X : 当該事業年度の割賦損益
A : 割賦販売等にかかる利益または損失の額
B : 割賦販売等の対価の賦払金のうち、当該事業年度に支払い期日が到来するものの合計額
C : 割賦販売等の対価の額

X = A - (B ÷ C)
A = 割賦販売対価の額 − (売上原価 + 販売費の合計額)

B = 賦払金のうち期末までに支払期日の到来する部分の金額 − 賦払金のうち翌期以後に支払期日の到来するもので当期に支払を受けた金額
なお、履行期の到来しない賦払金について手形を受領しても、その受領は、支払を受けた金額に含めない(法人税法基本通達2-2-11)。また、下取品を時価を超えて高く下取りした場合は、その下取りした金額は、割賦販売対価の値引き額として計算する(法人税法基本通達2-2-10)。


取戻商品の評価


割賦販売後に代金支払遅延等の理由により中途解約をして取戻した商品等は、その取戻したときの未回収割賦金額からそのうちに含まれる割賦損益を除外した金額をもって資産に計上する。ただし、その未回収割賦金額または取戻のときの処分見込価額をもって資産に計上することができます(法人税法基本通達2-2-13)。


割賦基準によらなかった場合等の処理


割賦基準は、割賦販売等をした棚卸資産または役務の全部について継続的に適用されます。したがって、従来割賦基準によっている法人が当期に割賦販売等をした棚卸資産または役務の全部または一部について割賦基準の経理をしなかった場合には、当期に販売または提供したものについて割賦基準の適用はないことはもちろん、前期までに割賦販売等をした棚卸資産の全部にかかる収益および費用の額は、当期の収益および費用の額に算入する(法人税法62(1)、法人税法施行令120)


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