工事進行基準


工事進行基準を適用できる長期請負工事


長期工事の請負契約を締結したときには、その請負(損害が生ずると見込まれるものを除く)をした長期工事にかかる収益および費用の額は、その長期工事の着手事業年度からその長期工事の目的物を引渡す事業年度の前事業年度までの各事業年度の確定した決算において、工事進行基準により経理することができます。これは、引渡基準(実現基準)による例外です。

ここで言う長期工事とは、他の者の求めに応じて行う工事(製造含む)で、その着手の日から当該地の者と締結した契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上であるものを言います(法人税法64(2))。

なお、次に掲げるいずれかに該当することとなったときは、それぞれに掲げる事業年度以後が、工事進行基準を適用できません(法人税法64(1))。


その長期工事にかかる収益および費用の額につき、着手事業年度以後のいずれかの事業年度の確定した決算において工事進行基準により経理しなかった場合その経理しなかった事業年度の翌事業年度
その長期工事請負につき損失が生ずると見込まれるに至った場合その事由が生じた事業年度
長期工事につき着手事業年度後のいずれかの事業年度における見積利益の額が、当該事業年度前の各事業年度において工事進行基準により経理した収益の額から費用の額を控除した金額の合計額に満たないこととなる(すなわち、当期の計上益がマイナスとなる)場合その事由が生じた事業年度



つまり、1年以上の工事につき、全体見積益があり、かつ、当期も利益が計上される場合に、当該工事につき毎期継続経理をすることを条件として、工事進行規準による利益の見積計上が認められます。


工事進行基準の計算


工事進行基準は、長期工事の請負についての見積利益の額(工事請負の対価の額が工事原価見積額を超える場合のその超過額)のうち、次の算式により計算した金額に対応する収益および費用の額とする方法があります(法人税法施行令129)。すなわち、当期の見積利益は、技術的、物理的な進行程度によるものではなく、税法上はすべて発生原価の比率に基づいて計上することとされます。なお、次の方式によれば、請負対価、工事原価の変動等に基づく既計上の損益に対応する修正も、当期の計算にすべて吸収される。

X : 当期に計上すべき部分の額
A : 計算年度末の現況における長期工事の見積利益の額(全体見積益)
B : その長期工事につき計算年度末までに支出する原材料費、労務費その他の経費の額の合計額(工事開始時かた計算年度末までの発生累積原価)
C : 計算年度末の現況におけるその長期工事の工事原価の見積額(全体見積原価)
D : その長期工事につき、前期までに収益の額として経理した金額から費用の額として経理した金額を控除した金額の合計額(前期までに既計上利益累積額)

X = A × (B ÷ C) - D

なお、工事目的物を引渡した事業年度の収益および費用の額として計上する金額は、次の金額にかかる収益および費用の額とする。

計上すべき利益の額 = その長期工事の利益 - 引渡事業年度前の各事業年度に計上したその工事の工事利益の合計額


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