評価益計上の原則的禁止


商法において資産の評価は原価主義を原則としています(商法34)。法人税法でも商法と同じ立場をとり、評価益を益金の額に含めないとしています(法人税法25(2))。


例外規定


次に掲げる評価換えは、資産の評価益の益金不算入の規定は適用されません(法人税法25(1))。

  1. 会社更生法または金融機関等の更生手続きの特例に関する法律の規定による更生手続き開始の決定に伴いこれらの法律の規定に従って行う評価がえ
  2. 内国法人がその組織の変更に伴って行う資産の評価換え
  3. 保険会社が保険業法第112条の規定に基づて行う株式の評価換え



時価を超える評価益の益金不算入


上記「例外」に掲げる評価換えを行った場合でも、その評価換え後の資産の帳簿価額が評価換えをしたときの時価を超えるときは、その超える金額に相当する金額は益金の額に算入しないため、その資産の帳簿価額は,その超える部分の金額の増額がされなかったことになります(法人税法基本通達4-1-1)。


取得価額の修正等と評価益の計上の関係


次に掲げる事実により生じた益金は、評価益ではないため益金の額に算入されます(法人税法基本通達4-1-2)。

  1. 減価償却資産として計上すべき費用の額を修繕費等として損金経理をした法人が減価償却資産として受け入れるに当たり、その費用の額をもって減価償却資産の帳簿価額として計上したため、既往の償却費に相当する金額だけその増額が行われたこと。
  2. 圧縮記帳による圧縮額を引当金または目的積立金として経理している法人が、その引当金または目的積立金を取り崩したこと。



財産の評価換えによる益金


会社更生法第269条第3項または金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律第149条第3項もしくは第160条の139条第3項(債務免除益の課税の特例)に規定する財産の評価換えによる益金とは、会社更生法第178条および第181条または更生特例法代90条もしくは第160条の71(財産の価額の評価等)の規定により更生手続き開始時ならびに更生計画認可のときおよび裁判所の定める時期において作成される貸借対照表に記載された会社更生法代177条(財産の評価の認定)または更生特例法90条もしくは第160条の71に規定する資産の評価額を基礎として計算される評価益をいいます(法人税法基本通達14-3-2)。




資産の評価損の損金不算入


法人が有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、損金の額に算入しません(法人税法33(1))。


特定の事情が生じた場合の資産の評価損の損金算入


法人が有する資産(預金、貯金、貸付金、売掛金とその他の債権を除く)で次の掲げる資産の区分に応じたそれそれの事実が生じたことにより、資産の価額を損金経理により減額したときは、その減額部分の金額のうち、その評価換え直前のその資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了時におけるその資産の価額との差額に達するまでの金額は、その事業年度の損金の額に算入します(法人税法33(2))。

区分事実
棚卸資産
  1. その棚卸資産が災害により著しく損傷したこと
  2. その棚卸資産が著しく陳腐化したこと
  3. 内国法人について会社構成法もしくは金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の規定による更生手続き開始の決定または商法の規定による整理開始命令があったことによりその棚卸資産の評価換えする必要が生じたこと
  4. 上記に順ずる特別の事実
有価証券
  1. 売買目的有価証券の時価評価金額に掲げる有価証券(取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、その他の価格公表有価証券)の価額が著しく低下したこと
  2. 1に掲げる有価証券以外の有価証券について、その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと
  3. 内国法人が会社更生法もしくは金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の規定による更生手続き開始決定または商法の規定による整理開始命令があったことにより、その有価証券の評価換えをする必要が生じたとき
  4. 2または3に準ずる特別の事実
固定資産
  1. その固定資産が災害により著しく損傷したこと
  2. その固定資産が1年以上にわたり遊休状態にあること
  3. その固定資産がその本来の用途に使用することができないため他の用途に使用されたこと
  4. その固定資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
  5. 内国法人が会社更生法もしくは金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の規定による更生手続き開始決定または商法の規定による整理開始命令があったことにより、その固定資産の評価換えをする必要が生じたこと
  6. 上記までに準ずる特別の事実
繰延資産
  1. 次に掲げる繰延資産で他の者の有する固定資産を利用するために支出されたもので次のaからcまでに掲げる事実

    • 自己が便益を受ける公共施設または共同施設の設置または改良のために支出する費用
    • 資産を賃貸しまたは使用するために支出する権利金、立退料その他の費用
    • 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
    • 製品等の広告宣伝用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
    • 上記に掲げる費用のほか、自己が便益うを受けるために支出する費用

      1. その繰延資産となる費用の支出の対象となった固定資産につき上記「固定資産」の1から4までに掲げる事実が生じたこと
      2. 内国法人が会社更生法もしくは金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律の規定による更生手続き開始決定または商法の規定による整理開始命令があったことにより、その繰延資産の評価換えをする必要が生じたこと
      3. 上記a、bに準ずる特別の事実

  2. 上記1に該当しない繰延資産ついては、上記aに掲げる事実およびこれに準ずる特別の事実



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