同族会社


「同族会社」と聞くと、一族だけで経営している会社というイメージがありますが、決して一族だけで経営している会社だけが「同族会社」とは限りません。でも実際には、そのほとんどが一族だけで経営している会社のようです。

法人税法では同族会社に対して、さまざまな制限を設けています。何故でしょう。それは、課税の公平さを維持するためです。では、同族会社では課税の公平さが保たれないのでしょうか。たとえば、配当可能利益が充分あるにも係らず配当しないで会社の内部に利益を留保してばかりいると、同族関係(後述)でない株主や出資者は投資に対して適正な利益を受けることができません。

では、どのような制限を設けているのでしょう。

同族会社に対する課税上の制限同族会社の行為または計算の否認同族会社が、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為・計算を否認する。
同族会社の留保金課税同族会社が、事業年度の所得のうち、不当に留保した部分の金額に対し、特別な法人税を課す。
役員の認定、使用人兼務役員の制限同族会社の役員の認定、使用人兼務役員に対して、課税の公平性を維持するため一定の制限を規定する。



同族会社とは


上記に記したように「同族会社」と聞くと「一族が支配している会社」というイメージがありますが、法人税法では、どのような会社を同族会社として規定しているでしょうか。

法人税法上の同族会社


  1. 株主等3人以下
  2. 1に加えて1の株主の同族関係者が所有する株式の総数または出資の金額の合計額
  3. その会社の発行済み株式の総数または出資金額の50%以上に相当する


上記の3項目の条件を満たす会社を「同族会社」といいます。

同族関係者


法人税法で「同族会社」である判定となる同族関係者とは、次の表の通りです。

同族関係者特殊な関係にある個人1.株主等の親族(六親等内の血族、三親等内の姻族および配偶者)
2.株主等の内縁の配偶者
3.個人である株主等の使用人
4.上記以外で株主等から受ける金銭等で生計を維持している者(愛人、お妾さん)
5.1〜4の者と生計を一にする親族
特殊な関係のある会社6.株主等の1人で50%以上の株式を有している会社
7.株主等の1人と1の会社で50%以上の株式を有している会社
8.株主等の1人と1と2の会社で50%以上の株式を有している会社


それでは、法人税法からちょっと離れて、民法のお話。
上記の表で「六親等内の血族、三親等内の姻族および配偶者」といわれてもピンとこないと言われるかもしれませんので、「1.株主等の親族」を図で示しましょう。
(図の表現に至らないところがあると思われますが、ご了承ください。)

血族直系姻族尊属
傍系6.六世の租


6.高祖父母の兄弟
5.五世の租

5.曽祖父母の兄弟
4.高祖父母
6.曽祖父母の兄弟の子4.従曽祖父母
3.曽祖父母3.曽祖父母

5.従曽祖伯叔父母3.配偶者=3.伯叔父母
2.祖父母2.祖父母
6.再従兄弟
4.従兄弟2.配偶者=2.兄弟1.父母1.母3.伯叔父母

5.従兄弟の子3.配偶者=3.甥姪自己配偶者
2.兄妹
6.従兄弟の孫
4.兄妹の孫1.子1.配偶者3.甥姪卑属

5.兄妹の曽孫2.孫2.配偶者
6.兄妹の玄孫3.曽孫3.配偶者

4.玄孫
5.五世の孫
6.六世の孫



同族会社の判定例


同族関係となる法人


判定会社←40%株主Aとその同族関係個人

↓70%
←15%B会社
←45%その他の株主等

判定会社の株主等の1人が有する他の会社の発行済み株式または出資金額の50%以上を有しているときは、B会社もAの同族関係者となります。


判定会社←30%株主Aとその同族関個人70%→B会社

↓40%
←25%C会社←20%
←45%その他の株主等



判定会社の株主等の1人及び同族関係であるB会社とが、他の会社の発行済み株式または出資金の50%以上を有しているときは、C会社もAの同族関係者となります。


判定会社←35%株主Aとその同族関係個人60%→B会社

↓5%
←20%D会社←10%


↓80%

←40%C会社
←45%その他の株主等



判定会社の株主等の1人及び同族関係者であるB会社とC会社とが、他の会社の発行済み株式または出資金の50%以上を有しているときは、D会社もAの同族関係者となります。


判定会社←40%B会社←80%A
←15%C会社←70%
←45%その他の株主等



同一の個人または法人(A)の同族関係者である2以上の会社が、判定会社の株主であるときは、B会社とC会社とは相互に同族関係者となり一つのグループとみなされる。


具体例


株主持株
株主A140
株主Aの妻40
株主Aの子60
株主Aの友人50
株主B40
株主C50
株主Cの使用人35
株主D80
株主Dの内縁の妻30
株主Aの妻の妹5
株主E(非同族会社)130
株主F80
株主G(株主C個人の使用者が70%を出資)50
株主H(個人甲が50%を出資)20
株主I(個人甲が50%を出資)15
その他(それぞれ10株ずつ所有)175
合計1000


グループに分けてみましょう。

グループ株主持株合計割合
a株主A14024524.5%
株主Aの妻40
株主Aの子60
株主Aの妻の妹5
b株主Aの友人50505.0%
c株主B40404%
d株主C5013513.5%
株主Cの使用人35
株主G50
e株主D8011011.0%
株主Dの内縁の妻30
f株主E13013013.0%
g株主F80808.0%
h株主H20353.5%
株主I15


上位3グループの出資割合を調べてみましょう。

aグループ・・・24.5%
dグループ・・・13.5%
fグループ・・・13.0%

合計51%となります。したがって、判定会社は同族会社となります。


非同族の同族会社


非同族の同族会社とは、同族会社の判定の基礎になる株主等から非同族法人を除外して判定すると、同族会社と判定されない会社をいいます。

上記の例で非同族会社である株主Eを除いて上位3グループの出資割合を調べてみましょう。
aグループ・・・24.5%
dグループ・・・13.5%
eグループ・・・11.0%

合計49%で50%に達せす、同族会社になえりません。したがって、判定会社は非同族の同族会社となります。

参考までに、次ぎの場合も非同族の同族会社として扱われます。

非同族会社の子会社を同族判定株主等に含めたため同族会社となる会社(非同族の孫会社)

判定会社←35%株主Aとその同族関係個人B非同族会社

↓60%
←25%C会社
←45%その他の株主



非同族の孫会社を同族判定株主等に含めたため同族会社となる会社

判定会社←35%株主Aとその同族関係個人
B非同族会社

↓35%
↓70%
←25%D会社←25%C会社
←45%その他の株主




非同族の直接または間接の同族会社

判定会社←35%A非同族会社
B非同族会社

↓35%
↓60%
←25%D会社←25%C会社
←45%その他の株主等




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