法人税の課税所得の計算方法は、とても簡単です。次ぎの算式により計算された金額が所得金額です。
算式
益金の額 − 損金の額 = 各事業年度の所得の金額
商法や企業会計原則では「収益 − 費用 = 利益」ですが、税法では「益金 − 損金 = 所得」です。両方とも同じように見えますが、微妙に違います。利益と所得は、ほとんど同じ金額にはなりません。どうしてでしょう。それは、収益と益金、費用と損金が必ずしも同じでないからです。法人税は、正規の簿記の原則に基づいて求められた企業利益から、誘導的に算出された課税所得により計算します。では、上記の算式をもう少し分解してみましょう。
算式
企業利益 +(益金算入 + 損金不算入) − (益金不算入 + 損金算入) = 各事業年度の所得の金額
なんか面倒な感じになってきましたね。要するに企業利益に税法で求められる様々な調整事項(申告調整といいます)を加減して、課税所得金額を求めます。
各事業年度の所得の金額の計算上、その事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、下の表に掲げる金額です。
1 | 資産の販売 |
2 | 有償・無償による資産の譲渡 |
3 | 有償・無償による役務の提供 |
4 | 無償による資産の譲受け |
5 | その他の取引で、資本等取引以外のもの |
各事業年度の所得の金額の計算上、その事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き下の表に掲げる金額です。
1 | その事業年度の収益にかかる売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 |
2 | 上記1のほかにその事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額 |
3 | その事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引にかかるもの |
各事業年度の収益の額または損金の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されますが、税法で別段の定めがあるものについては、それとは別に収益や費用に含められたり除外されたりします。
益金に関する一例
1 | 受取配当等の益金不算入 |
2 | 評価益の益金不算入 |
3 | 還付法人税等の益金不算入 |
4 | 割賦基準 |
5 | 延払基準 |
6 | 工事進行基準 |
1 | 資産の評価および償却費の計算 |
2 | 評価損の損金不算入 |
3 | 役員賞与の損金不算入 |
4 | 寄付金の損金不算入 |
5 | 法人税法の損金不算入 |
6 | 圧縮記帳の損金算入 |
7 | 引当金の損金算入 |
8 | 繰越欠損金の損金算入 |
9 | 準備金の損金算入 |
10 | 特別控除の損金算入 |
11 | 交際費等の損金不算入 |
各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される販売費および一般管理費その他の費用は、償却費を除いて期末までに債務が確定したものに限られます。それには、下の表に掲げる要件をすべて満たしていなければなりません。
1 | 期末までにその費用にかかる債務が成立していること |
2 | 期末までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること |
3 | 期末までにその金額が合理的に算定することができること |
「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは、税法上の見地からでなく、企業の財務会計における会計処理の基準として客観的に公正、かつ、妥当と認められるという意味です。みなさんの中には、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」と聞くと企業会計原則を思い浮かべる方もいると思います。しかし、企業会計原則が、直ちに「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」として規範性を持っているわけではありません。日々新たに変化していく社会の中で、客観的に見て公正妥当とされる会計慣行である。
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