繰延税金資産の回収可能性
(回収可能性の判断要件)
21.
繰延税金資産の計上に当たっては、当該資産の回収可能性(将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうか)について十分に検討し、慎重に決定しなければならない。
将来減算一時差異に係る繰延税金資産の計上が認められるかどうかは、次の要件のいずれかを満たしているかどうかにより判断する。この判断要件は、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産についても適用する。
- 収益力に基づく課税所得の十分性
- 将来減算一時差異に係る税効果の認識
将来減算一時差異の解消年度及びその解消年度を基準として税務上認められる欠損金の繰戻及び繰越が可能な期間(以下「繰戻・繰越期間」という。)に、課税所得が発生する可能性が高いと見込まれること
- 税務上の繰越欠損金に係る税効果の認識
税務上の繰越欠損金の繰越期間に、課税所得が発生する可能性が高いと見込まれること
上記@の解消年度及び繰戻・繰越期間に、又は上記Aの繰越期間に、課税所得が発生する可能性が高いかどうかを判断するためには、過年度の納税状況及び将来の業績予測等を総合的に勘案し、課税所得の額を合理的に見積もる必要がある。
- タックスプランニングの存在
将来減算一時差異の解消年度及び繰戻・繰越期間又は繰越期間に含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等、課税所得を発生させるようなタックスプランニングが存在すること
- 将来加算一時差異の十分性
- 将来加算一時差異に係る税効果の認識
将来加算一時差異の解消年度及び繰戻・繰越期間に将来加算一時差異の解消が見込まれること
- 税務上の繰越欠損金に係る税効果の認識
繰越期間に税務上の繰越欠損金と相殺される将来加算一時差異の解消が見込まれること
将来の課税所得の見積りに関して、本項で述べる課税所得とは、当期末に存在する将来加算(減算)一時差異のうち、解消が見込まれる各年度の解消額を加算(減算)する前及び当期末に存在する税務上の繰越欠損金を控除する前の繰越期間の各年度の所得見積額である。
(繰延税金資産の計上限度額)
22.
将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産は、第21項(1)、(2)及び(3)の判断要件を考慮した結果、当該将来減算一時差異(複数の将来減算一時差異が存在する場合には、それらの合計)及び税務上の繰越欠損金が将来課税所得を減少させ、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとし、その範囲を超える額については控除しなければならない。(会計基準注解(注5))。
(繰延税金資産の回収可能性の見直し)
23.
繰延税金資産の計上額は会社の毎決算日現在で見直し、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の全部又は一部が第21項の判断要件を満たさなくなった場合には、計上されていた繰延税金資産のうち過大となった金額を取り崩す。
過年度に未計上であった繰延税金資産の回収見込額を見直した結果、第21項の判断要件を満たすことになった場合には、回収されると見込まれる金額までに新たに繰延税金資産を計上する。
なお、回収可能性を見直した結果生じた繰延税金資産の修正差額は、見直しを行った年度における損益計算書上の法人税等調整額に加減する。ただし、資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額が直接資本の部に計上されている場合における、当該評価差額に係る繰延税金資産の修正差額(合理的に配分された繰延税金資産の修正差額を含む。)は、評価差額に加減して処理する。