一時差異と繰延税金資産又は繰延税金負債及び税金費用との関係


36.
将来減算一時差異に対しては貸借対照表上では繰延税金資産が、将来加算一時差異に対しては繰延税金負債が計上され、損益計算書上では法人税等調整額が計上される。

一時差異と繰延税金資産又は繰延税金負債及び税金費用との関係を例示すると、次のようになる。


将来減算一時差異
  1. 前提条件

    1. X1年において会計上、棚卸資産について100の評価額を計上したが、この棚卸資産評価損については税務上損金算入が認められないため、課税所得の計算上自己否認(加算)した。
    2. 当該棚卸資産はX2年に処分され、X1年に計上した会計上の評価損が税務上損金算入された。
    3. X1年及びX2年における税効果会計適用前の損益計算書(該当部分)は、以下のとおりである。


      X1年
      X2年
      棚卸資産評価損
      100

      税引前当期純利益
      1,000
      1,000
      法人税、住民税及び事業税
      506
      414
      当期純利益
      494
      586



    4. 上記法人税、住民税及び事業税の計算は、以下のとおりである。

      税引前当期純利益
      1,000
      1,000
      棚卸資産評価損 損金不算入
      (加算) 100
      損金算入(減算)△100
      課税所得
      1,100
      900
      法人税、住民税及び事業税
      506
      414

      (なお、単純化のため、税率は事業税の損金算入の影響を考慮した税率46%を使用しているが、事業税に係る一時差異は単純化のため考慮していない。)


  2. 税効果会計の適用

    以上の前提条件に基づき、税効果会計を適用して棚卸資産評価損に係る繰延税金資産を計算すると、以下のとおりである。

    将来減算一時差異:棚卸資産評価損 …100
    繰延税金資産(100×46%) ……………… 46

    (税効果会計に係る仕訳)

    借方
    金額
    貸方
    金額
    X1年繰延税金資産
    46
    法人税等調整額
    46
    X2年法人税等調整額
    43
    繰延税金資産
    46



  3. 税効果会計を適用した場合の損益計算書

    税効果会計を適用した場合の損益計算書(該当部分)は、以下のとおりである。


    X1年
    X2年
    税引前当期純利益
    1,000
    1,000
    法人税、住民税及び事業税
    506
    414
    法人税等調整額
    △46
    46
    差引(又は計)
    460
    460
    当期純利益
    540
    540



    X1年の法人税、住民税及び事業税(申告税額)は506(1,100×46%)であり、税引前当期純利益に対応する税額460(1,000×46%)より46だけ大きくなっている。これは、会計上で計上した棚卸資産評価損100が損金不算入(課税所得の計算上加算)扱いされたことによる税金への影響額であるが、X2年において損金算入されるため将来(X2年)の税金を減額する効果をもっている。この税金の減額効果は、X1年における損益計算書上、法人税等調整額として税金費用の控除項目となり、貸借対照表上は「繰延税金資産」として計上することになる。

    X2年の法人税、住民税及び事業税は414(900×46%)であり、税引前当期純利益に対応する税額460(1,000×46%)より46少なくなっている。これはX1年に損金不算入とした棚卸資産評価損100が、X2年に損金算入されたことにより実現した税効果である。つまり、当該税効果はX1年に貸借対照表に計上した繰延税金資産46をX2年に取り崩し、X2年の損益計算書上に法人税等調整額として計上したことによるものである。その結果、X1年、X2年とも税効果会計を適用した後の税金費用合計(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額との合計)は、割引前当期純利益に対応する金額となる。



将来加算一時差異





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