設例7 繰越外国税額控除の税効果


  1. 前提条件

    (1).C社のX1年及びX2年の国内源泉所得は、それぞれ1,000及び2,000であった。
    (2).X1年に在外事業体(D社)から受取った配当金50(源泉徴収前)に係る国外源泉所得は、 90(つまり、受取配当金に係る外国法人税額は40)であった。また、当該国における配当送金に係る源泉徴収税額は5であり、源泉徴収後の受取配当金の額は、45であった。
    (3).X1年の在外支店(E支店)の税務上の欠損金は50であり、X2年の所得は200であった。
    (4).C社における法人税、住民税及び事業税の課税所得に対する税率は50%である。
    (5).在外支店における外国法人税率は、課税所得に対して40%である。
    (6).タックスプランニングの結果、X2年におけるE支店の所得の実現がX1年において確実視されていた。

    以上の前提条件に基づき、C社のX1年及びX2年における税金額を計算すると、次のとおりである。


  2. 税金額の計算


    X1年X2年
    国内源泉所得
    1,000
    2、000
    D社からの配当金に係る国外源泉所得
    90
    E支店の所得
    △50
    200
    所得合計
    1,040
    2,200
    法人税・住民税及び事業税率
    50%
    50%
    外国税額控除前の法人税・住民税及び事業税(ア)
    520
    1,100
    控除限度額(イ)
    20
    100
    納付外国法人税額(ウ)
    △45
    △60
    繰越外国税額(△)又は控除余裕額の発生
    △25
    40
    前期繰越外国税額の当期控除額(エ)
    △25
    翌期繰越外国税額(△)又は控除余裕額
    △25
    15
    C社の法人税・住民税及び事業税の納付額
    500
    1,015
    外国税額控除の繰越制度が存在しないと仮定した場合の納付税額
    500
    1,040
    繰越外国税額控除による税金軽減効果
    △25


  3. 仕訳

    (X1年)
    借方
    金額
    貸方
    金額
    法人税・住民税及び事業税
    500
    未払法人税等
    500
    繰延税金資産
    25
    法人税等調整額
    25
    なお、C社はD社からの配当金受取時に、次の仕訳が必要である。
    現金預金
    45
    受取配当金
    50
    法人税・住民税及び事業税
    5


    (X2年)
    借方
    金額
    貸方
    金額
    法人税・住民税及び事業税
    1,015
    未払法人税等
    1,015
    法人税等調整額
    25
    繰延税金資産
    25


  4. 解説
    @.控除限度額(イ)は以下の計算式により得られる。

    外国税額控除前の法人税、住民税及び事業税額× 国外源泉所得
    国内源泉所得+国外源泉所得
    この計算式を設例してX1年及びX2年の控除限度額を計算すると、次のとおりである。

    (X1年)

    520×90-50=20
    -----------
    1,040


    (X2年)

    1,100×
    200
    =100
    ------
    2,200


    A.納付外国法人税額(ウ)の計算は、以下のとおりである。

    (X1年)
    前提条件(2)より、外国法人税額40+源泉徴収税額5=45

    (X2年)

    (E支店の所得200−X1年の欠損金50)×税率40%=60

    B.各年度におけるC社の法人税及び住民税の納付額は、上記(ア)の額から(イ)又は(ウ)のいずれか小さい金額を差し引き、さらに(エ)の額を差し引いた純額である。

     (X1年) 520−20−0=500
     (X2年) 1,100−60−25=1,015

    以上の計算結果が示すように、X1年において翌期に繰り越された繰越外国税額25はX2年において発生した控除余裕額に充当され、X2年における法人税、住民税及び事業税額の計算上控除されることになる。このように、X2年に実現する税金軽減効果はX1年における繰越外国税額の発生に起因するため、繰越外国税額発生年度にそれに係る税効果を認識し、回収可能性の高い金額まで繰延税金資産を計上する。




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