一時差異の類型
(一時差異の種類)
6.
一時差異には「将来減算一時差異」と「将来加算一時差異」とがある(会計基準第二の一の3)
(将来減算一時差異)
7.
将来減算一時差異とは、差異が生じたときに課税所得の計算上加算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上減算されるものである。
(将来減算一時差異の例示)
8.
将来減算一時差異は、将来の課税所得の計算上で減算効果のある一時差異である。例えば、税務上では損金として認められない棚卸資産の評価損を会計上で計上した場合、会計上の棚卸資産の額は税務上の資産額よりも低くなり差額が生ずる。これは、会計上の費用計上時期と税務上の損金算入時期が異なることから生ずるものである。会計上は棚卸資産上は棚卸資産を処分したときに損金とされる。この場合、評価損計上後の会計上の資産額と税務上の資産額との差額が一時差異であり、将来の課税所得の計算上で減算効果があるため、将来減算一時差異となる。さらに、将来減算一時差異としては、退職給与引当金、貸倒引当金などの損金算入限度超過額や資産または負債の評価替えにより生じた評価差損などをあげることができる。
また、税務上の資産または負債であるが、会計上の特定の資産または負債との関連を識別できない差異がある。例えば、少額の減価償却資産を会計上は費用処理し、申告調整によって税務上の資産とする場合に生じる将来減算一時差異である。
(将来加算一時差異)
9.
将来加算一時差異は、差異が生じたときに課税所得の計算上で減算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上加算されるものである。
(将来加算一時差異の例示)
10.
将来加算一時差異は、将来の課税所得の計算上で加算効果のある一時差異である。例えば、減価償却資産について利益処分方式により圧縮記帳を実施した場合は、会計上の簿価は固定資産の取得価格で計上され、その後の減価償却計算等の基礎となるが、税務上の簿価は固定資産の取得価格から圧縮積立金を控除した後の額となり、当該資産の会計上の簿価と税務上の簿価との間に差額が生ずる。この差額は、将来の減価償却の実施により、会計上の減価償却費が税務上の減価償却費の損金算入限度額を超過することになり、当該償却超過額に相当する額について圧縮積立金を取崩し、将来の課税所得の計算上当該圧縮積立金取崩高が加算されることになるため、将来加算一時差異となる。そのほか、将来加算一時差異の例としては、税務上の特別償却額や資産または負債の評価替えにより生じた評価差益を挙げることができる。
また、税務上の資産または負債であるが、会計上の特定の資産または負債との関連を識別できない差異がある。例えば、会計上利益処分方式によって計上する租税特別措置法上の特別償却準備金等は、会計上は負債として認識されないが、税務上の負債として取り扱われ、将来加算一時差異である。