皮膚用保湿保護剤(SPM液)

 近年、住宅や職場などにおいて空調設備などが整備されたり、また清潔好きのためシャンプーや石鹸で過度に洗うことによって皮膚より脂肪や保湿成分が除去されて、冬季の乾燥期に皮膚がカサカサになって痒くなる乾皮症、皮膚角化症や乾燥しやすいアトピー性皮膚炎等が増加している。

 このような皮膚の乾燥化による疾患は、角質層の水分保持機能の低下に起因すると考えられており、その水分保持機能は、角質層に含有される保湿成分の含有割合に依存している。すなわち健康な人体皮膚の角質層には、ピロリドンカルボン酸、乳酸塩、尿素等の水溶性保湿物質が30〜40%含まれていることが知られており、前記皮膚疾患は皮膚の角質層に存在する保湿成分のバランスの崩れからきている。

 私たちの生活環境にはダニやカビ、空気中の埃や花粉、バクテリア等皮膚炎を起こすアレルゲン(抗原)がたくさんあり、顔、首回り、、手足の関節の内側等角質層の薄い肌、乾燥した皮膚にこれらのアレルゲンが侵入し、体質により過剰な反応を起こすことがある。アトピー性皮膚炎もその一つと言われている。また、皮膚の乾燥は肌荒れや痒みの原因となる。これらの乾燥性皮膚疾患の治療として皮膚の水分保持機能を高め、アレルギーの元になるアレルゲンを皮膚から断つことが最も適切であることが最近明らかになってきた。そのために皮膚の水分を保湿するローション、軟膏、クリームなどが考案され一般に広く使用されるようになってきている。

 しかし、ローション、軟膏、クリーム等のゾル状のものでは肌に塗った後がベタベタし感触が悪い。外見から塗っているのがわかる。衣服に擦れて取れてしまう、その結果保湿機能が無くなってしまう。そのため日に何度も塗る必要があった。また、衣服に付着し衣服を汚す等の不具合があった。

 また、ローション、軟膏、クリームの基材としてワセリンや油類を使用したものは入浴時に石鹸で洗い落とさなければならず、この時に皮膚の保湿成分を洗い流すことになり、皮膚から脂肪や保湿成分が除去されてさらに皮膚が乾燥するなど悪循環となり、皮膚の症状が改善されない等の不具合もあった。

 近年、皮膚の疾患を訴えている人が多く、その主なものは、発生原因が掴めていないアトピー性皮膚炎であり、それは喘息や花粉症とともに遺伝的に同根のものとあり、一般的にアトピー性アレルギー疾患と総称されている。そのアトピー性アレルギー疾患は、医師等の医療専門の間で、近年食・住を含む環境の悪化と共に増加の傾向を辿ることが指摘され、特に若年層はもとより、従来見られることが無かった成人にも難治性のアトピー性皮膚炎の増加が顕著に現れている。また、アトピー性皮膚炎ではないものの、先天的に皮膚が角質化しやすく、保湿成分が不足して、ササクレている乾燥肌の人も増加している。よく見られる皮膚病には、表皮(皮膚の一番外側)の乾燥によって起こる病気がたくさんあり、表皮の病的な乾燥を「角化病変」と言う。アトピー性皮膚炎、主婦湿疹、乾皮症(皮膚がカサカサになる老人に多い皮膚病)、魚鱗癬(鮫肌)などがある。

 そのようなアトピー性皮膚炎や乾燥肌には、ザラザラ、カサカサの荒れた状態の皮膚や苔癬化した状態の皮膚を示すものがある。このような症状は、生命維持に欠かせない皮膚表面の角層のバリア(保護)機能や保湿機能に異常をきたし、生体内の水分、電解質、タンパク質等が皮膚の外部へ滲出して起こるものや、刺激物質、アレルギーの原因物質(アレルゲン)または病原微生物、細菌等が体内へ進入して起こるものである。また、ザラザラやカサカサの荒れた皮膚となる要因は、皮膚を覆っている表皮脂質が本来の持つべき含有量より減少してしまうことにある。

 前記脂質は、脂線で生成されて表皮に排泄された皮脂と表皮細胞が角化過程で生成する表皮脂質の2種類があり、その皮脂の脂質は、主に12%のスクワレンと25%のワックスエステルとからなるアシルグリセリンを含むものであり、表皮脂質はリン脂質やステロール等であることが一般的に知られている。従ってこのような成分を含有している皮脂及び表皮脂質等の脂質は、本来皮膚が有するところの外界からの異物の進入を防ぐバリア機能と同時に体内から水分及び電解質の損失を防ぐ保湿機能を持ち合わせている。

 従来からのアトピー性皮膚炎等のスキンケアの方法としては、低刺激性石鹸等を用いて直接皮膚に悪影響を及ぼすダニ、埃等のアレルゲンを洗い流すことを基本としている。そして、前記石鹸等によって洗浄された皮膚は、カサカサやザラザラの荒れた乾燥状態となり、その状態を改善する方法として、まず水分の補給を目的としたグリセリン、ソルビトール、尿素、ヒアルロン酸等の保湿成分を配合した化粧水を用いた後に、各種の動物、植物由来の脂質等を含むクリーム類や軟膏を用いて、皮膚から失われる水分や皮脂等の脂質の補給を行っていた。

 しかるに、皮膚に対して従来のスキンケアの方法ではアトピー性皮膚炎は石鹸等による洗浄によって刺激物の除去を行わなければならないが、石鹸等で洗浄することにより余分な皮脂や本来皮膚に必要な「うるおい成分」としての皮脂や表皮脂質中のステロール、セラミドまで洗い落としてしまうので、バリア機能が失われたザラザラやカサカサの荒れた乾燥状態の皮膚となる。このようなバリア機能が失われた皮膚は、僅かな刺激に対しても鋭敏に反応するようになり痒みや炎症等を生じる結果、掻爬による組織破壊が加わって症状をさらに悪化させていた。

 加えて、これらのスキンケアにおける対症療法では、基本的には脂質の補給が目的であり、洗浄後の乾燥した皮膚に先ず水分を補給して、その水分の蒸発を抑えるために、脂質を補給する方法が行われていた。しかし、この方法ではステロール等の表皮脂質は一度皮膚から失われると補給しにくい点があり、十分な効果は得られなかった。さらに、前述のようなスキンケアでは、外界のアレルゲンや埃などから皮膚を守り、かつ皮膚の水分を保湿する機能を併せ持つものでないために、アトピー性皮膚炎や乾燥肌等の荒れている皮膚を改善するには到らなかった。

 今までの皮膚用保湿保護剤は以上のように構成されているので、ローション、軟膏、クリーム等のゾル状のものでは肌に塗った後がベタベタし感触が悪い。ベタベタしているので外見から塗っているのがわかる。衣服に擦れて取れてしまう、その結果保湿機能が無くなってしまう。そのため日に何度も塗る必要があった。また、衣服に付着し衣服を汚してしまうこともあった。

 また、ローション、軟膏、クリームの基剤としてワセリンや油類を使用したものは入浴時に石鹸で洗い落とさなければならず、この時に皮膚の保湿成分を洗い流すことになり、皮膚から脂肪や保湿成分が除去されてさらに皮膚が乾燥するなど悪循環となり、皮膚の症状が改善されないジレンマがあった。

 このような問題点に対して、外界のアレルゲンや埃などから皮膚を守り、かつ皮膚の中から水分を引き出し、皮膚の表面の水分を保湿する機能を有し、塗った直後及びその後の感触が良く、皮膚へのなじみが良く、塗っていることが目立たない、衣服に擦れても取れない、また塗布後に乾燥した後の保護膜は強固に皮膚に付着し、肌荒れを起こすこともなく、長時間皮膚を保護するものであって、アトピー性皮膚炎や乾燥肌等の荒れている皮膚や表皮性のしわを改善するのに効果的な皮膚用保湿保護剤を得ることを目的とする。
また、長期間保存しても変質することがなく、衣服等に着いても汚すことはなく洗濯により容易に洗い流すことが出来る皮膚用保湿保護剤を得ることを目的とする。

 この皮膚用保湿保護剤は無色透明で、塗布後の外見が殆どわからないので客応対仕事や外出に使用することが出来る。この皮膚用保湿保護剤は塗布した後の感触はしっとりとしてサラサラしており、ワセリンやクリーム、軟膏のようなベタベタした感触は無い。保護膜によるバリア機能によりアレルゲン等から肌を保護し、アトピー性皮膚炎や乾燥肌等の症状を軽減する効果がある。また、材料は全て安価で無害のもので構成している。

 この皮膚用保湿保護剤を塗った皮膚の部分は薄い保護膜に覆われているが、入浴、及び入浴時石鹸で洗っても一回の入浴程度ならばこの保護膜は完全には無くならない事が特徴で、何度も洗浄すれば徐々に無くなる。従ってこの特徴により入浴、洗浄で皮膚の保湿成分が洗い流されることはなく入浴後後再度この皮膚用保湿保護剤を塗ることにより皮膚を長期間保護できる。衣服などに着いた場合、この溶液は無色であり、衣服を汚すことはない。洗濯機及びそれに使用する洗剤は強力であるから、洗濯することにより容易に洗い流すことが出来る。

 この皮膚用保湿保護剤を皮膚に塗布すると皮膚の表面に薄い皮膜を作り、アレルゲンが皮膚の表面や毛穴に接触するのを妨げる防壁性(バリア機能)を持ち、皮膚の角質層と融合し比較的溶けにくい保護膜を形成する。皮膚内部より水分を引き出し、皮膚表面の水分量を高め、保湿効果により長時間にわたり高い水分量を維持できる。肌へのなじみと拡がりが良く、爽快感があり、殺菌作用もある。

 以上のように、この皮膚用保湿保護剤は構成材料それぞれの効果に加え、保湿効果と保護膜としての効果を一段と高め、アトピー性皮膚炎や乾燥肌等の荒れている皮膚を改善し、また、角質の水分を高く保つので表皮性のしわ、すなわち乾燥じわが出来るのを防ぐのに効果的であり、無色透明で、長期保存が可能である。

適用例 患者 ○○歳○性 アトピー性皮膚炎
 首回り、脇の下を中心とした上半身に、ひどい所は黒色に変色した皮膚、毛穴から先に赤くなり、部分的に赤く痒みがひどい状態。ステロイド剤で症状を抑えていたが、何年も再発の繰り返しで徐々に悪化してきていた。この皮膚用保湿保護剤を風呂上がり、朝起床時に主として2回刷毛等で塗布。日中は適宜痒みが出る毎に塗った。この間風呂へ一度入ったぐらいではこの皮膚用保湿保護剤の皮膜は溶けて無くならず残っていることを確認している。

 その結果3ヶ月程度で黒色になっていた皮膚の症状が殆ど消え、6ヶ月程度で赤く腫れることはなく、痒みも殆ど無くなり、通常の肌の状態になった。その間微量のステロイド剤を使用したが以前に比べるとはるかに使用量は少なくて済んだ。ステロイド剤を使用すると症状が飛躍的に改善されるが、これをやめると通常は逆にリバウンドと言って逆に肌はひどい状態になる。しかしこの改善された状態でこの皮膚用保湿保護剤を塗ると皮膚はそのままの状態を維持し悪化しにくくなるのでステロイドの使用量を少なくでき、やがては使用しなくても皮膚の良い状態を保つことが出来るようになり、特にひどいリバウンドなしに治癒することが出来た。

 この状態でさらに1年ほど続けた結果肌のピリピリする感触も無くなりほぼ完全に治癒したことを確認した。さらに半年の間再発することも無かった。この間皮膚用保湿保護剤の副作用に関するものは全く無かった。また、1年ほど前に混合した皮膚用保湿保護剤を使用してみたが全く変質していなかった。

 ステロイド剤を使用して治療していると塗っている間は症状は軽減されるが次第に効かなくなり強いステロイド剤を使用せざるを得なくなる。やがてステロイド剤の副作用により症状は改善することなくどんどん悪化する。これはステロイド剤が副腎皮質のホルモンであり長期の乱用により副腎皮質の機能が低下することに原因がある。この皮膚用保湿保護剤を塗ることでステロイド剤を塗る間隔を伸ばすことが出来るので使用量ははるかに少なくなり、また、ステロイドを塗っていない期間が増えるので副腎皮質の機能を低下させることはなくなる。そして、その状態で皮膚の良い状態を維持しながらアレルゲンや乾燥等から皮膚を保護し、自己治癒力による回復を待つ穏やかな治療方法である。従って副作用も無く、ステロイド剤の副作用を避けながらリバウンド無く安全に自己治癒力で回復させることができるこの皮膚用保湿保護剤はアトピー性皮膚炎等の角化病変に対し大変有効な皮膚剤である。

要約
 この皮膚用保湿保護剤は、外界のアレルゲンや埃などから皮膚を守り、かつ皮膚の中から水分を引き出し、皮膚表面の水分を保湿し、塗布後の感触、皮膚へのなじみが良く、塗っていることが目立たない、長時間皮膚を保護し、皮膚を改善する。また、長期間保存が出来る皮膚用保湿保護剤である。

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