今週のメッセージ 2000.1.23

再び「人生の目的」

 

 前回、目下よく売れているといわれる五木寛之の『人生の目的』をご紹介しました。その中で著者は、「万人に共通の人生の目的などというものはない、と私は思う」、と述べています。さらに著者は筆を進める中で、「つまりそれは、すべての人間に上から押しつけられるような、一定の目的などないということである」、と説明しています。

 確かに人は、「これがあなたの人生の目的ですよ」といわれても、「はい、わかりました」と受け入れられるものではありません。少し飛躍するかもしれませんが、宗教というものに対して敬遠する向きがあるのも、上からの押しつけを嫌うことがひとつの理由のように思われます。

 しかし他方、人間には限界があることも認めねばなりません。自分という存在のこの地上への出現も、また地上からの隠退も、自分の意志、選択の外で何者かによって決定されるのも事実だからです。

 キリスト教会で用いられている教理問答書のひとつの中に、「人のおもな目的は、何ですか」の問いに対して、「人のおもな目的は、神の栄光をあらわし、永遠に神を喜ぶことです」と答えているものがあります。創造主なる神を信じ、聖書に聞き、また祈りによる神との交わりを通じて、自分固有の神の栄光をあらわす生き方とはいかなる生き方かを、神に問いかけながら生きていくのです。そうした歩みの中で、次第に自分独自の人生の道筋が見えてきて、またその道を歩む中に神への感謝と喜びが生まれてくるのです。このことは、先の著者が、「人生の目的は、『自分の人生の目的』を探すことである。自分ひとりの目的、世界中の誰ともちがう自分だけの『生きる意味』を見出すことである」と主張していることと相通ずるものだと思います。

 

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