今週のメッセージ 2000.5.28

倫理道徳の崩壊の根因と立て直しの道

『武士道』の著者で知られる新渡戸稲造が、その著作の動機となったことの一つに、ベルギーのある法学者から、宗教教育抜きでどうやって道徳教育を授けるのか、と問われたことがあるようです。新渡戸は自分のうちにある正邪善悪の観念の形成が何に因っているかを探り、それが“武士道”であることに気づいたと言います。

ところでその“武士道”ですが、“儒教”の影響を受けていると言われます。そしてその“儒教”は、元来、“支配者の学”だと言われます。わが国の戦前・戦中の道徳律の根幹であったいわゆる“教育勅語”なるものも、この“儒教”の影響を強く受けたものということです。

今、日本の倫理道徳が非常に危うい状態の中にあります。そうした背景の中で、この度の森首相の“日本は天皇を中心とした神の国”発言にも感じられる戦前・戦中の国家体制に戻ろうとするような動きもあるようです。しかし、言うまでもなく同じ過ちを犯す愚は断じて避けるべきでしょう。

戦後の新憲法において“国家押し付けの宗教”が否定され、加えて近年の統一原理が引き起こした悪徳商法や、最近のオーム問題、法の華三方行問題等で社会はすっかり宗教アレルギー体質となってしまっています。そして、それでいながら確かな倫理道徳の基盤を見出し得ないでいるというのが現状と言えます。

勿論、憲法が“信教の自由”を保証しているように、どの宗教を信じようとあるいは信じないことも個人の自由です。しかし聖書は、宗教を持つことは“人の人たる所以”と教えています。

「『神を畏れ、その戒めを守れ。』これこそ、人間のすべて。」

(旧約聖書・コヘレトの言葉1213節)

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