ひろさちや氏の著書の中で紹介されているインドの民話です。 あるところに九十九頭の牛を持っている金持ちがいました。しかし彼は不満でした。あと一頭手に入れば一〇〇頭になる。彼は自分の所有する牛が一〇〇頭でないことを悲しんでいました。そこで彼はある日、わざとボロを身にまとい、遠くに住んでいる友人を訪ねました。 友人は裕福ではありませんでしたが一頭のの牛を持っていました。 金持ちは友人に言いました。 「おまえはいいなア....。わしは貧乏だ。食べるものにも困っている。女房・子どもを養っていけそうにない。それにひきかえおまえは牛を一頭持っている。おまえがうらやましいヨ」と。 それが真っ赤な嘘であるとは知らず、友人は顔を曇らせながら言った。 「そうか、知らなかったとは言え、悪いことをした。あなたがそんなに困っているのなら、わたしの牛を差し上げよう。わたしは牛がなくても生きていける。友情のしるしにこの牛を受け取ってくれ」 金持ちは、内心舌を出しながら、感謝の言葉を述べて、牛を貰って帰った。 かくて、金持ちは牛が念願の一〇〇頭になり、その日は幸福であった。 他方、友人の方も、友の窮状を救えた故に幸福であった。 さて、どちらの幸福が本物だろうか。一〇〇頭を得た金持ちはその日は幸福だったろう。しかし翌日には、きっと、こう考えるに違いない。 「わたしは一〇〇頭しか持っていない。是非とも二〇〇頭欲しい。あと一〇〇頭足りない」と。 『受けるよりは与える方が幸いである。』(使徒言行録20:35)
受ける喜びと与える喜び
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